上が『THE ANSWER』の最終に近いデザイン、下が花王クリエイティブ部門の作成デザイン。下は使われなかったが野原は比較でき有難かったと回顧する。
小暮の大活躍を引き出した野原・君島のマネジメント術
「今までこうしてきた」は組織を縛り、強い引力で無難な結論へ導こうとする。小暮はこれに抗った。
〝花王100年のヘアケア研究〟を推したコピーは、花王メンバーに「ドヤ顔しすぎ?」と印象を与えた。しかし、小暮は知っていた。
「外野の私からは、あの歴史はもっと誇っていい、むしろなぜ言わない? と感じていたんです」
デザインも同様だった。小暮ら博報堂メンバーは技術陣が作成した機能性を示す五角形のグラフを見て「開発の背景を象徴するものだ、デザインに反映したい」と考えた。一方、花王のクリエイティブチームは念のため、シャンプーらしい可愛さを感じさせるデザインも考えたが、調査や投票を重ねた結果、博報堂案がより良好な反応を獲得し、商品の骨格が定まっていった。
その後、クリエイティブの現場では、ベテラン研究員の奮闘劇が彼らの伝説になった。前ページ下図には「この線は曲線でなければ正しくない」、髪を塗り洗いするビジュアルにも「もっと根元から!」とアートディレクターのような指示を飛ばした。君島が話す。
「その姿の嬉しそうなこと(笑)。でも、今までも言いたいことがあったのかもしれませんね」
発売後の売り上げは、先行発売して成功を収めた「melt」の実績を加味した予想の2倍を記録。理由のひとつに、インフルエンサーによるオーガニック発信が爆発的に伸びたことがあった。「ストーリーが一貫していて伝えやすい」という声が多く、ここにもスクラム式の良い面が出たようだ。
野原がまとめる。
「進化が一定の方向に進み続けているうちは、プロがそれぞれプロの仕事をすればいい。でも、どの方向に進化させるか、といった根本的な話は、こんな鍋の中から生まれるものなのでしょう」
最近、彼らはSNSにとある書き込みを見つけた。開発時、「答えって言っていいの!?」と議論をした彼らにとって最高の報酬だったに違いない。こんな文章だった。
「──ガチでサロン帰りみたいになる。確かにこれ、答えだわ」
左からTHE ANSWER スーパーラメラシャンプー、THE ANSWER EXモイストヘアトリートメント、THE ANSWER EXグロスヘアトリートメント、THE ANSWER EXリペアヘアトリートメント(すべて1760円・編集部調べ)。
ウエルシアなど様々な薬局で、商品に惚れ込んだスタッフの独自POPが作られた。