数百回の試作の結果が後ろ姿を変えた
理解を深めるため花王のメンバーは、小暮ら博報堂のメンバーを研究所や、花王のミュージアムに案内した。野原が笑って振り返る。
「すると小暮さん達のテンションが、みるみる上がっていくんです」
見たこともない研究器具、きっと意味を持つ数字を表示する機械。今まではできあがった製品を渡され、コミュニケーションを考えるところから仕事が始まっていたのに……。小暮は圧倒された。
「私、思わず『いい髪の本質って何ですか?』と研究員の方が困るような質問までしちゃいました」
彼女は考えた。
「結局、摩擦や食い違いって同じ情報を持っていないことから生まれるのかな、と。私はまだ君島さんの『完全栄養食』という思いをくみ取れていなかったんです」
一方で君島も「情報をお渡しできていなかった」と言う。そしてこの、コミュニケーションを綿密にし、通常より高いレベルで相互理解をすることが、スクラム式の肝でもあるのだ。
一方、幸は試行錯誤を繰り返していた。下手に美髪成分を入れると泡立たない、調整しても、洗っている時に髪が絡まる……。数百回の試作を繰り返し、ようやくできた試作品を、彼は小暮にも送った。するとスパークが起きた。
「安いウィッグを買って給湯室で試しただけで歴然の違いを感じました。後ろから声をかけられ『髪が綺麗な人だなぁと思ったら〇×さんだった』と言われたチームメンバーもいたり」(小暮)
これが花王に伝わり、幸は思わずガッツポーズ。君島が話す。
「この時期から集まるといい議論ができるチームになってました」
そんな中、ネーミングやデザインが決まっていった。ここで八面六臂の活躍をしたのが小暮だった。
『THE ANSWER』は塗り洗いすることで、ケア成分が髪全体に行き渡る。右がラメラ構造の概念図。髪のビジュアルや図中の表現には、花王ベテラン研究員がアートディレクターのように奮闘したこだわりが詰まっている。