裁判
Xさんは「とりあえず早く給与を支払ってほしい」という仮処分の申し立てをしました。
裁判所のジャッジ
Xさんの勝訴です!
裁判所は「乗務拒否に正当な理由はナイね。給料の一部である月額18万円を払い続けなさい。1審判決までず~っと」と命じました。以下、順に解説します。
▼ 乗務拒否に「正当な理由」はあるのか?
裁判所は「乗務拒否に正当な理由ナシ(=会社に帰責事由あり)」と判断しました。
■ 苦情について
裁判所は「真実かどうかを調査した痕跡がない」などとして、苦情のために就労を拒否することに正当な理由はないと判断。
■ Xさんの化粧について
―― 会社さんは、どうお考えで?
会社
「Xさんが極めて濃い化粧をして乗務しており、乗客に違和感や不快感を与えています。なので乗務を拒否する正当な理由があります。以下の身だしなみ規定があるんです」
身だしなみ規定
身だしなみについては、常に清潔に保つことを 基本とし、接客業の従業員として旅客その他の人に不快感や違和感を与えるものとしないこと
―― 裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「身だしなみ規定の目的自体はOK」
「しかーし!身だしなみの無制限の制約はダメ。業務上の必要性に基づく合理的な限度でのみOKです」
そして裁判所は、本件について以下の通り判断しました。
・女性乗務員の化粧はOKである以上、男性であることを理由に異なる扱いするにはその必要性や合理性を慎重に検討する必要がある
・上司たちは化粧の濃さを問題にしていたのではく【化粧していること自体】を問題視している
・一般論としては、サービス業 において、客に不快感を与えないとの観点から、男性だけに対して業務中に化粧を禁止すること自体が直ちに必要性や合理性が否定されるものではない。
・しかーし!Xさんは医師から【性同一性障害】との診断を受けていた。
・外見を可能な限り女性に近づけ女性として社会生活を送ることは自然かつ当然の欲求
・Xさんが自分の個性や価値観を過度に押し通そうとしたと評価すべきものではない
・現在、乗客の多くが性同一性障害を抱える者に対して不寛容であるとは限らないため、会社が性の多様性を尊重しようとする姿勢をとった場合に、乗客から苦情が多く寄せられ、乗客が減少し、経済的損失などの不利益を被るとも限らない
以上の理由などを述べて裁判所は「化粧しての乗務を禁止することに必要性も合理性も認められない。そうである以上、就労拒否についても必要性も合理性も認められない。よって乗務拒否に正当な理由ナシ」と結論づけました。
そして月額18万円の限度で支払いを命じました。
ここ数年で風潮がガラっと変わりましたね。ありのままの個が尊重されるという当たり前の話なのですが、時代がやっと個に追いついてきた感じです。「男性だから」「女性だから」という発言はアウトになる可能性が極めて高くなっています。
オッサンほど固定観念が強いので私も気をつけます。皆様も気をつけましょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
「ムズイ法律を、おもしろく」をモットーにコンテンツを作成している弁護士
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