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回転寿司業界のトップを走るスシローと巻き返し狙うかっぱ寿司、両社の戦略の違いと今後の展望

2025.03.20
かつて日本の外食産業の“革命児”として急成長した回転寿司。今や一皿100円という手軽さを超え、テクノロジーやグローバル展開、高級食材の採用まで、さまざまな進化を遂げています。その最先端を走るのが業界トップのスシロー(3563)と、一度は王者に君臨しながら苦戦を強いられたものの、最近は再浮上を目指して攻めの戦略を打ち出すかっぱ寿司(7421)です。コロナ禍や世界的なインフレの煽りを受け、同じ回転寿司業態でもまるで違うアプローチをとる両社は、どのようにこの難局を乗り越えようとしているのでしょうか? 

そこで今回は2025年3月時点の最新データをもとに、両社の売上や市場シェア、価格・ブランド戦略、そしてDXや海外展開に至るまで、いま注目すべきポイントを徹底解説します。

業績動向と市場シェア:明暗を分ける数字

まず両社の最新の業績を確認します。スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES(F&LC)は2024年9月期決算で売上収益約3,611億円(前期比+19.7%)と過去最高を更新し、営業利益は約233億円(+112.6%)と大幅増益でした。国内の既存店売上も前年比114.2%と好調で、来店客数が113%以上伸びています。

一方、かっぱ寿司を展開するカッパ・クリエイト(親会社はコロワイド)の2024年3月期連結売上高は722億円で、前期比わずか+2.5%の増収にとどまりました。営業利益は17億円程度(営業利益率2.4%)と薄利ですが、前期の赤字からは黒字転換を果たしています。

回転寿司業界全体の市場規模は推計で約9,250億円(海外出店分含む)。スシロー(F&LC)は約3,000億円超の売上で市場シェア30%以上を占める独走態勢です。対するかっぱ寿司は売上約722億円でシェアは一桁台。店舗数でも、国内約642店(スシロー)に対し311店(かっぱ寿司)と、半数以下にとどまっています。いずれもかつての“100円寿司ブーム”をけん引したチェーンでありながら、現在は規模・知名度ともにスシローが一歩リードし、かっぱ寿司は苦境を抜け出しかけている段階だと言えるでしょう。

価格戦略とブランド戦略:対照的なアプローチ

スシローは長らく全皿100円(税込110円)均一のイメージを掲げてきましたが、原材料高騰を受けて2022年10月に初の値上げを断行。最安皿を120円(税込132円)へ引き上げると、一時は既存店客数が20%以上落ち込む月もあるなど、顧客離れによる苦戦を強いられました。さらに「おとり広告」問題で消費者庁から措置命令を受け、ブランドイメージまで揺らぐ事態に。しかしスシローはすぐに軌道修正を図ります。例えば「大切りびんちょう鮪100円」など期間限定の割引企画を積極展開し、コラボフェアで話題性を高めることで集客力を回復させました。また、値上げ分に見合う付加価値としてサイドメニューや高価格帯ネタを強化し、最安価格帯を残しながら客単価アップを図るという両立路線を確立。結果として2023年後半から既存店売上は再び前年比プラスへ転じ、2024年9月期には大幅増収増益を達成しました。スシローのブランド戦略は、「安さ+楽しさ+質」を巧みに組み合わせた点が特徴です。店内演出やSNS映えを重視し、デジタル化(後述)でも差別化に取り組むことで「回転寿司はエンタメ」という価値観を再定義しています。

かっぱ寿司は一世を風靡した「100円寿司」のパイオニア的存在でしたが、低価格競争を続けるうちにコスト面で行き詰まり、品質・イメージも悪化する悪循環に陥りました。そこで2019年頃からは平日限定90円皿を廃止し、2022年にはコロワイドグループの支援を受けて店舗改装やメニュー開発に投資。看板の「110円メニュー」100種類以上を継続して安さを守りつつ、限定高級ネタや外食チェーンとのコラボ企画、食べ放題「食べホー」の導入など話題性を重視する方向にシフトしました。これにより、かつて離れた顧客が徐々に戻り、2023年度は既存店ベースで売上が前年を上回る月が増加。長期低迷からは抜け出しつつあります。ブランド再構築としては「おいしくなった」「新鮮なネタが増えた」という評価を広めることが急務で、店内サービス向上やスタッフ教育にも力を入れています。かっぱ寿司の戦略は「低価格のイメージを維持しながら付加価値を足す」ハイブリッド路線で、過去の失われたブランドを回復していく真っ最中です。

インフレ環境と消費者ニーズへの対応

世界的なインフレと水産物の価格高騰、人件費上昇など厳しい環境下、両社は様々な工夫でコスト増を吸収しています。スシローはAIによる需要予測システムを早期から導入。各皿にICタグを付与して販売データを詳細に蓄積し、来店客の傾向に合わせて作る寿司の量や種類をコントロールすることでフードロスを大幅削減し、原価管理を徹底しています。また、大手としての仕入れ交渉力を活かし、魚種の多角化や調達先開拓を進めてコストの安定化を図っています。コロナ禍で拡大したデリバリー・テイクアウト需要にも応え、スマホ注文や持ち帰りロッカーなどを充実させて客単価アップに貢献しています。

一方のかっぱ寿司は、親会社コロワイドのスケールメリットを活かした食材調達で原価上昇を和らげると同時に、人件費対策では省人化と接客品質向上の両輪に取り組んでいます。近年は店舗改装費用を投じてセルフレジや自動受付システム、モバイルオーダーなどを整備し、人件費を削りながら顧客体験を向上。食材ロス削減にも注力し、売れ筋フェアネタの需要予測や在庫管理を見直していると発表しています。価格戦略では極力110円皿の豊富さを維持し、「かっぱはやっぱり安い」と消費者に認識させながら、季節限定の高価格帯メニューも提案して客単価アップを狙っています。インフレや円安の逆風の中、2社とも「安さだけでなく付加価値で勝負する」路線を鮮明化していると言えるでしょう。

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