
デロイト トーマツ グループ(以下「デロイト トーマツ」)は、自動車メーカーがこの数年注力しているSDV(=ソフトウエア・デファインド・ビークル。ソフトが機能や特徴を決めるクルマ)の開発状況に関するグローバル調査の日本語版を発行した。
欧州メーカーのSDV化に関連する投資額は1社平均30億ドルに
調査は2024年3~4月にかけて、日本、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、スペイン、アメリカ、韓国の8か国で、自動車メーカーの技術部門およびビジネス部門の管理職層計160人に対して、デロイト(デロイト トーマツが加盟するグローバルネッワーク)によって実施された。
レポートはSDV市場についての理解、技術基盤の構築、効率の最大化、SDVの価値を引き出す方法、の4章で構成され、メーカーの開発態勢や課題を分析している。本稿では同社リリースをベースに、その概要をお伝えする。
■技術部門とビジネス部門ではSDVへの取り組み状況に関する認識に顕著な相違
技術部門の89%は、自社がSDVの開発と実装で業界をリードしていると考え、ビジネス部門で同様の回答をしたのは45%だった。
この認識のずれは、一部のOEMが一貫した戦略を策定する際に課題に直面し、SDVの効果的な実装の妨げになる可能性があることを示している。
■全体の73%が5年以内に投資収益率(ROI)の達成を見込む
ビッグデータ活用によるデータの収益化が実現可能ととらえられている一方で、ソフトウェアアップデートを通じた業務に大幅にシフトすることが見込まれ、従来より合理化とコスト削減が進むと予想される。
企業の収益性が高まることで、株主価値の向上と成長への再投資が可能になる好循環が期待されている。
技術基盤の構築
■技術基盤で進むクラウド環境の利用
全体の47%が技術基盤において全てクラウドネイティブの原則を利用、30%がある程度利用と答え、自動車業界でもクラウド技術の利点に対する認識が広がっている。
■技術に対する認識にもズレ
技術部門の72%がSDV技術の要求に完全に対応できる能力があると考えている一方で、ビジネス部門で完全に対応できると考えている回答者は44%にとどまる。技術部門はビジネス目標を理解する必要があり、ビジネス部門は技術的な可能性と導入プロセスを把握する必要がある。
継続的なコミュニケーションと相互理解を通じて、技術進歩が革新的であるだけでなく、経済的に成り立つことを双方が認識し合い、目的の共有と相互理解による調和のとれた連携が必要。
効率の最大化
■SDV化で開発の効率性が向上する可能性
開発にかかる資金は、SDV化により最大20%の効率性向上を見込んでいる。特に、欧州メーカーが効率改善に最も大きな可能性を見出しており、ソフトウェア開発、テストと検証、保守と統合、クラウドサービス、車載ソフトウェアアーキテクチャ、ソフトウェアの再利用におけるメリットを強調している。
■欧米の伝統的メーカーが抱く危機感
欧州メーカーのSDV化に関連する投資額は1社あたり平均30億ドルに達しており、これは研究開発に対する予算全体の3分の1に匹敵する。欧州や米国の伝統的メーカーは、SDV領域において新興系にリードされているという課題に迫られ、SDV化に多大な投資をしている。
SDVの価値を引き出す方法
■データを活用したビジネスモデルの再定義
全体の30%が、SDVから生成されたデータによる収益化のために、車両とクラウドプラットフォームによるデータを活用したパーソナライズド機能をユーザーに提供し、顧客体験の向上を図っている。また、26%はデータから得られる価値を最大化するため、他社と提携する方法をとっている。
■大多数のメーカーがデジタルサービスの収益性に期待
全体の81%がデータの利活用による大きな収益増を期待しており、今後5年間で予想される平均収益は約7億2000万ドルを見込む。
関連情報
https://www2.deloitte.com/jp/ja.html
構成/清水眞希