
仕事やビジネスシーンにおいて、『合理的』はプラスの意味合いで使われるケースがほとんどです。論理的との違いや使い方のポイントを、例文付きで分かりやすく紹介します。
目次
仕事やビジネスでは、合理的思考が歓迎される場面が多くあります。合理的とは、どのような様子を指すのでしょうか?
合理的とは?
まずは、意味と正しい使い方をチェックしましょう。
■合理的には2つの意味がある
合理的(ごうりてき)という言葉は、『合理』と『的』が組み合わさった言葉です。『~的』は、名詞に付いて形容動詞の語幹を作り、『そのような性質を持っていること』を意味します。合理の主な意味は、以下の二つです。
- 道理や論理にかなっている
- 能率的である
例えば、『合理的な自然の法則』は、道理・論理にかなっているさまの意味で使われています。『合理的な方法』は、無駄がなく能率的な方法を意味します。
合理的の類語は、理屈に合っていることを指す『理詰め(りづめ)』です。合理的はプラスの意味合いで用いられますが、理詰めはプラスとマイナスのどちらの意味でも使えます。
■合理性と合理的の違い
『合理性』と『合理的』は、どちらも『合理』に関連する表現です。『~性』は名詞に付いて、物事の性質・傾向を表す接尾語です。
従って、合理性は『道理にかなった性質』または『無駄がなく能率的な性質』という意味になります。以下、例文で使い方を比較してみましょう。
【例文】
- この人事評価制度は合理性に欠けており、従業員の反発があって当然だ
- 都市部には、地方と比べて経済合理性がある
- 一緒に仕事をするのなら、合理的な人がよい
■合理的であることが評価される場面
合理的な考え方・行動が評価されるのは、データに基づく適切な意思決定が求められる局面や、公平性・透明性が重視される状況です。
例えば、M&Aの企業価値評価においては、コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチなどの、合理的な評価方法が採用されます。
また、災害時の損失額の計算においても、合理性が重視されるのが通常です。雑損控除の適用を受けるに当たり、住宅や家財の損失額を明確に算出することが難しい場合は、1平米当たりの工事費用や家族構成別の評価額に基づいた簡便な計算方法が認められています。
裁判所では、論理的かつ効率的な判断が合理的として評価されます。資産評価の妥当性が争点となる裁判では、適切な根拠に基づいた計算方法が採用されることが多いでしょう。
■法律用語の『合理的配慮』について
法律用語の一つである『合理的配慮』とは、障害者が他の人と平等に権利や自由を享受するために必要な、変更・調整を意味します。
日本国憲法には、『基本的人権の尊重』が掲げられています。障害者の人権を、健常者の人権と同じように保障するには、個々の状況に応じて社会的障壁を取り除く配慮が必要です。
障害者の権利に関する条約では『必要かつ適当な変更および調整』と定義されており、各事業者の過度の負担にならない範囲で提供されます。
例えば、障害のある児童・生徒が平等に教育を受けるための合理的配慮としては、教員・支援員の確保や施設・設備の整備、個別の教育支援計画に対応した柔軟なカリキュラム編成などが挙げられるでしょう。
合理的の使い方を例文でチェック
合理的は、書き言葉・話し言葉の両方に使えます。日常会話はもちろん、仕事やビジネスシーンでもよく登場するため、正しい使い方を例文で確認しておきましょう。
■日常会話
日常会話の中では、効率的な選択について話し合うときや、筋の通った意見に同意するときに使われます。相手を納得させる際には、なぜそれが合理的なのかという理由を添えると、より効果的です。
【例文】
- 電子書籍リーダーは紙の本よりも合理的だね。本棚が不要になるし、何百冊でも持ち歩ける
- 4人で行くなら、公共交通よりもタクシーが合理的だと思う。相乗りすれば安上がりだし、何よりも楽で速いから
- 北欧の人々の暮らしは、合理的な上に無理がなく、まさに私が理想とするライフスタイルだった
■ビジネスシーン
『合理的な価格設定』や『合理的なスケジュール』など、ビジネスシーンでは合理的という言葉が頻繁に登場します。文脈によっては、単に理にかなっているだけでなく、『目的達成のために効率的』というニュアンスを含みます。
使用する際は、具体的な根拠を添えることで、説得力が増すでしょう。感情ではなく、理論に基づいた意思決定であることを示す際にも有効です。
- 新規開発には2,000万円以上のコストがかかるため、既存システムの有効活用が最も合理的な選択だと思います
- 合理的な判断に基づき、本年度は採用活動よりも業務効率化を優先します
- お客さまのご要望には合理的な範囲で対応いたします
■合理的の英語表現
英語で『合理的』を意味する表現は複数あります。『Rational』は理性的・合理的という意味で、人の考えが道理・論理にかなっているときに使われるケースが多いでしょう。合理的な決定は、『Rational decision』と表現します。
『Logical』は、論理的という意味ですが、合理的で筋の通ったニュアンスがあります。特に、プロセス・構造・順序が合理的な場合に用いられるのが一般的です。
価格や要求が合理的で妥当なときは、『The price for this service is reasonable.(この価格は妥当だね)』のように、『Reasonable』を使います。
ビジネスパーソンに求められる合理的思考とは?
合理的思考を持つビジネスパーソンは、感情に流されない冷静な判断や意思決定ができます。ただし、過度な合理性追求は、思わぬマイナスの結果をもたらしかねません。ここでは、合理的思考の重要性と留意点を見ていきましょう。
■合理的思考を持つ人の特徴
合理的思考とは、道理・論理にかなった無駄のない考え方のことです。感情や先入観に左右されず、目的に応じた最も最適な方法を選択します。合理的思考を持つ人には、以下のような傾向が見られます。
- 無駄な時間を嫌い、効率性を重視する
- 感情よりも論理を優先する
- 目的が不明確な人間関係を避ける
- 現実的な条件や制約を考慮した実行可能性を考える
合理的思考は、迅速な意思決定や的確な判断が求められるビジネスシーンに、欠かせない思考といえるでしょう。
■合理的すぎる人は好かれない
ビジネスシーンでは、合理的思考の重要性が強調されますが、人間の感情を無視した過度な合理性は思わぬ失敗を招くこともあります。
合理的すぎる人は、脇道にそれることをよしとしません。融通が利かず、柔軟性にも欠けやすい傾向があります。
コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスを追求しすぎると、周囲からは『人間味に欠けた人』『面白みがない人』という印象を持たれるでしょう。
合理的思考は重要ですが、度を過ぎると周囲との関係性やチームワークを乱す原因になることも忘れてはいけません。
合理的思考を高めるヒント
考え方・行動に合理性が欠けていると感じる人は、合理的思考を鍛えるトレーニングをしましょう。トレーニング方法は多岐にわたりますが、普段の生活の中で簡単に実践できるものをピックアップして紹介します。
■曖昧な表現をできるだけ使わない
合理的思考の人は、無駄や能率的でないことを嫌い、相手に対しても物事を分かりやすく説明する傾向があります。
普段から曖昧な表現をできるだけ避け、端的に伝えることを意識すれば、合理的思考が徐々に鍛えられていくはずです。
例えば、誰かと会話をする際は、多い・少ないといった主観的表現ではなく、『5人増えた』『徒歩10分』などの具体的な数字を用いてみましょう。情報を正確に伝える力が養われるとともに、コミュニケーションの無駄も省けます。
■「なぜ」と問いかける癖をつける
『他者から見て、自分の意見・主張は筋道が通っているか』を常に検証することも、合理的思考を強化します。
他者と意見が合わないときは、『自分の主張は間違っているかもしれない』という前提に立ちましょう。『なぜ』を習慣化すれば、物事の原因を探り、仮説と事実の照合ができるようになります。
また、人は慣れ親しんだ環境・習慣から、なかなか離れられない傾向があります。合理性の面において、長年のやり方・ルールが必ずしもよいとは限らないため、客観的な視点で分析する癖をつけましょう。