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物流オートメーションを支える世界一の物流機器メーカー・ダイフクはなぜ強いのか?

2025.03.17

インターネット通販(EC)の拡大に伴い、消費者はより早く・正確に商品を受け取りたいという要望を強めています。

かつては「翌日お届け」が特別サービスだったのが、今では標準化しつつあります。さらに多様な商品ラインナップに合わせて、倉庫には小ロットでのピッキングや短納期対応など、幅広いニーズが寄せられています。

同時に、少子高齢化などで物流業界の人手不足が深刻化しています。人件費は上昇傾向にあり、従来のようにピッキングや仕分けを行う人員確保が困難になってきました。そこで、自動化機器やロボットによる作業代替が注目され、投資が拡大しているのです。

1. なぜいま物流オートメーションが熱いのか?

1-1. EC市場の拡大と消費者行動の変化と人手不足

また企業が競争優位を保つためには、生産や在庫管理だけでなく、サプライチェーン全体を俯瞰した最適化が欠かせません。とりわけ消費者ニーズの多様化が進むなか、物流のスピードと柔軟性を両立させるには、オートメーション×IoT×AIが不可欠となっています。

2. 世界一の物流機器メーカー「ダイフク」とは?

2-1. ダイフクの概要と歴史

ダイフク(DAIFUKU)は、1937年に創業されたマテハン(マテリアル・ハンドリング)分野のトップ企業です。

マテハンとは「モノの移動・保管・仕分け・輸送」を効率化するための機器・システムを指し、ダイフクは自動車工場や家電製造ラインで活躍する搬送設備からスタートし、グローバルに展開。現在では物流機器メーカーとして世界一の規模を誇り、業界トップクラスの売上高を維持しています。

2-2. 事業領域の広がり

ダイフクが扱う事業領域は大きく分けて以下の通りです

・物流ソリューション事業
•自動倉庫(AS/RS)、コンベヤ、ソーター、AGV(無人搬送車)など
•倉庫管理システム(WMS)などソフトウェア面も含めた総合提案
•FA(ファクトリー・オートメーション)事業
•自動車生産ライン向け吊り下げ搬送システムや組立ライン構築
•半導体・液晶パネルなどハイテク製造工程向けの自動搬送技術
•クリーンルーム向けシステム
•半導体工場など特殊環境でのウェハー搬送・保管・検査装置
•洗車機ビジネス
•実は洗車機のリーディングメーカーとしても高いシェアを持つ

コアとなる物流ソリューション事業では、長年培ったノウハウと先端技術を融合し、世界各地で自動化を推進しています。

3. ダイフクの強みとビジネスモデル

3-1. 豊富な導入実績と信頼性

 物流オペレーションでトラブルが起これば、企業のサプライチェーン全体に大きな影響を及ぼします。だからこそ、導入実績と安定稼働の実証が重視されるのですが、ダイフクは80年以上にわたる実績と、多業種・多国籍の大手企業への導入事例を持っています。この豊富なノウハウが信頼を生んでいるのです。

3-2. ワンストップソリューション

 ハードウェア(搬送機器、ロボットなど)とソフトウェア(倉庫管理システム等)を一括で提供し、設計から据付、アフターサービスまでワンストップで担うのも強みです。ユーザー企業からすれば、部分的に機器を導入して“システムのつなぎ込み”を行うよりも、全体最適を考慮した設計・構築ができるパートナーは大きな存在です。

3-3. グローバル展開力

 ダイフクは北米、欧州、アジアなど世界各地に拠点を持ち、現地密着のサポートや企業買収を通じて事業を拡大してきました。地域ごとの産業特性や文化を理解しているため、大規模・複雑な案件にも柔軟に対応できるのが特徴です。これが世界標準の物流機器メーカーとして評価される大きな要因となっています。

4. 「オートメーション×IoT×AI」の活用事例

4-1. 自動倉庫システムとIoT

ダイフクの得意とする自動倉庫(AS/RS)は、ラック内の在庫を自動で搬送・管理する仕組みです。近年はラックや搬送機器にセンサーを取り付けて、稼働状況をリアルタイムにモニタリング。IoTを活用することで、故障リスクやメンテナンス時期を予測し、ダウンタイムを最小化できます。

4-2. AIソリューションによる最適化

収集したビッグデータをAIで分析し、以下のような高度な最適化が可能になっています。

•倉庫内の在庫配置を需要予測に基づいて改善
•ピッキングルートや順序を自動で算出し、作業時間を短縮
•シーズン変動やイベントに合わせた在庫コントロール

これらにより、物流コスト削減と顧客サービス向上を同時に実現しています。

4-3. AGV・AMRとロボットの連携

自動搬送車(AGV/AMR)やロボットアームを組み合わせることで、ピッキングや仕分けの省人化がさらに進みます。ダイフクでは、倉庫全体を統合管理するシステムを開発し、人・ロボット・搬送機器が安全かつ効率的に動く環境を提供。AIによる制御や動線計画が進むことで、次世代のスマート倉庫の姿が具体化しつつあります。

5. ダイフクの最新業績:数字から見る成長と強さ

物流オートメーションの需要増を追い風に、ダイフクの業績は力強い成長を示しています。以下は、ダイフクが公表している実績と予想をまとめたものです。

2023年3月期までは3月決算期ですが、2024年12月期以降は12月決算へ移行しているため、複数の会計期間が混在しています。

5-1. 安定した売上拡大

•2021年3月期の売上高は約4739億円から2023年3月期には6000億円超にまで伸びており、さらに2024年3月期は約6115億円と堅調な拡大が見込まれます。

5-2. 営業利益率の向上

•2021年3月期の営業利益率が9.40%だったのに対し、2023年3月期は9.78%、2024年3月期では10.15%と着実に改善しています。
•12月決算への移行後の予想では、2024年12月期の12.70%、2025年12月期は12.54%とおおむね12%台を維持し、高い収益性が見込まれます。
•これらは受注拡大に加え、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた高付加価値の総合ソリューション展開が奏功していると推察されます。

5-3. 今後の視点

ロボットやAI関連の研究開発への投資と並行して、グローバル展開やサービス型ビジネスへのシフトも進めているダイフク。これらの取り組みが、高い売上・利益成長と安定した利益率につながっていると考えられます。

特に人手不足の構造的要因やEC需要の継続拡大を考えれば、ダイフクの提供するオートメーションソリューションは今後も多方面からの需要が見込まれ、さらなる売上アップが期待されています。

6. ビジネスモデルが示す未来の展望

6-1. コンサルティング型サービスへの転換

物流現場に機器を導入して終わりではなく、その後の改善提案やシステム拡張といったコンサルティング型サービスへシフトすることで、顧客との長期的な関係を築きながら収益を確保するモデルが今後も加速していくでしょう。これこそが、単なる“モノ売り”から“コト売り”へと変わる流れです。

6-2. DX時代のパートナーとして

物流でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、倉庫管理システムやデータ分析といったソフト面の価値が増しています。ハードとソフトを一体化できるダイフクは、DX推進パートナーとして企業のサプライチェーン改革を包括的に支援し、さらなるビジネスチャンスを獲得する可能性があります。

6-3. 環境負荷低減と持続可能性

省人化や効率化は、企業のコスト削減だけでなく、エネルギー消費の削減やミス・廃棄の抑制にも寄与します。ダイフクのソリューションは持続可能な社会づくりに直結しており、SDGsやESG投資が重視される今後、環境面のアピールも企業価値を高めるポイントになっていくでしょう。

7. 今後の課題と可能性

7-1. ロボット技術の更なる進化

バラ積みや形状が複雑な商品のピッキングなど、ロボット化が難しい作業領域をどう克服するかが焦点です。AIによる画像認識や自律制御技術が進化すれば、これまで人の手が必要だった作業も自動化範囲に取り込めるようになり、ダイフクの市場はさらに広がるでしょう。

7-2. 新興スタートアップとの競合・協業

物流領域では多数のスタートアップが革新的な技術やビジネスモデルを打ち出しています。大手EC企業などが自社開発の倉庫管理・配送システムを外販するケースも増えています。ダイフクとしては、長年培ったノウハウとグローバル展開力を武器にしつつ、オープンイノベーションやM&Aを通じて最先端技術を取り込み、競争優位を維持する戦略が重要となります。

7-3. サービス化(SaaSモデル)への挑戦

機械設備をリースやサブスクリプションで提供するなど、初期投資を抑えたい企業ニーズに応える動きも出てきています。クラウド型のシステムやロボットのオンデマンド利用など、これまでの買い切りから利用料に移行するモデルが拡大する可能性があります。ただし、ハードを含む大掛かりなシステムゆえに、保守・契約形態・リスク管理など課題も多く、事業モデルの高度化が求められます。

8. まとめ:物流革命を支えるダイフクの存在感

ダイフクは「物流革命の巨人」という呼び名にふさわしく、マテハン分野を中心に世界のオートメーションをリードしてきました。最新の決算数値からは、EC需要や人手不足などの社会的背景を追い風に、堅調な売上拡大と収益性の向上がうかがえます。特に2025年12月期には売上高6,500億円・営業利益815億円(営業利益率12%超)という見通しは、同社が「装置メーカー」から「総合物流ソリューションプロバイダー」へと深化している成果といえそうです。

デジタルとフィジカルが融合し、サプライチェーン全体の最適化が加速するDX時代において、物流オートメーションが占める重要度はますます高まります。ダイフクのような大手企業が提供するハード&ソフト統合型のサービスは、これからの物流改革の基盤を形作る重要な要素となるでしょう。ビジネスパーソンにとっては、物流を単なる“コストセンター”ではなく“競争力の源泉”として位置づけ、ダイフクのソリューションが示す未来像を自社戦略にも取り込むことが求められます。

こうしたダイフクの成長ストーリーは、まさにその変革を象徴しており、日本企業が持つ底力とイノベーションの可能性を改めて示しています。自動化がもたらす価値は、コスト削減だけではありません。労働環境の改善や環境負荷の低減、そして何より柔軟かつ迅速なサービス提供による顧客体験の向上など、社会全体にポジティブなインパクトを生み出します。

これから先、ECのさらなる拡大やサプライチェーン再編の動きが進むなか、ダイフクの挑戦はますます注目を集めるでしょう。

文/鈴木林太郎

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