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「宇宙」を仕事にする人にとって知識やスキルより大切なものとは?

2025.03.22

宇宙ビジネスが盛り上がる中で、幅広い専門性を持った人材が求められている。誰もが宇宙を仕事にできる時代、スペースロイヤーの新谷美保子さんと宇宙ライターの井上榛香さんに誰もやっていなかった仕事に挑むやりがいと宇宙への思いを聞いた。

 

新谷美保子
TMI総合法律事務所 パートナー弁護士
新谷美保子
専門分野は、宇宙航空ビジネスに関する法務全般、宇宙法・航空法、新規事業立ち上げ、リスク管理、知的財産権など。2013年米国コロンビア大学ロースクール卒業後は、宇宙航空産業に複数のクライアントを持ち、民間企業間の大型紛争、宇宙ベンチャー投資、宇宙ビジネスに特有な契約交渉など、数多くの宇宙ビジネス法務を扱う。18年から「一般社団法人スペースポートジャパン(SPJ)」設立メンバーとして理事も務める。

井上榛香宇宙ライター
井上榛香
宇宙開発や宇宙ビジネスを専門に取材・執筆活動を行うフリーライター。1994年生まれ、福岡県小郡市出身。小惑星探査機「はやぶさ」の活躍を知り、宇宙開発に関心を持つ。学生時代は留学先のウクライナ・キーウで国際法を学んだ。一般社団法人九州みらい共創理事。著書に『探そう!宇宙生命体:地球以外にも生き物はいる!?』(誠文堂新光社)などがある。好きな食べ物はホタテ。趣味は街歩き。

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文系にもチャンスあり!専門性を生かして宇宙を仕事に

──2人はどんな仕事をしていますか? どういう経緯で今の仕事を始めたのでしょうか。

井上 私は宇宙開発やビジネスについて取材して、その内容を記事としてまとめて雑誌やWebメディアなどに寄稿するライターとして活動しています。子どもの頃から宇宙に関心があったので、宇宙に関わる人びとに会って話を聞いたり、歴史に残るであろう一大イベントを取材したりすることもできる今の仕事は天職のようです。

 宇宙というと、いわゆる理系の仕事だと思われがちですが、私の場合は大学で学んだ国際法や国際関係の知見を足掛かりしました。最初のインタビュー取材の相手は実は新谷先生でした。

新谷 私は宇宙ビジネスが専門の弁護士「スペースロイヤー」です。宇宙ビジネスに関わる企業間の契約交渉や宇宙スタートアップへの投資前にその企業のリスクを分析する法務デューデリジェンスや契約交渉などを引き受けています。宇宙に関連するビジネスは民法を知っているだけでは太刀打ちできず、宇宙ビジネスにおける国際商慣習への理解が求められます。

 ニューヨークのコロンビア大学に留学した2013年頃は、イーロン・マスクが率いるスペースXはすでに創業10年を迎え、米国では、宇宙はビジネスの場になるという意識が浸透しはじめていました。一方、日本ではまだ、宇宙は政府予算で研究開発する場だと捉えられていました。ですから、宇宙ビジネス専門の弁護士が米国にはいても日本にはおらず、国益を損なうレベルの問題だというお話を留学中に聞きました。それで、スペースロイヤーになることを決めたのです。

井上 印象に残っている仕事は何ですか?

新谷 複数の国内企業が関与するプロジェクトで人工衛星が壊れてしまい、どこが巨額の損害賠償責任を負うべきかを争う紛争を担当できたことは、私にとって大きなブレークスルーとなりました。ある企業は他の弁護士事務所で「全額支払うしかない」と言われたそうですが、資料を見せていただくと、宇宙ビジネスの国際商習慣では全額支払う必要がないと言えることに気づき、結果的に賠償額を大幅に減額できました。以来、その企業に多くの宇宙ビジネスの実務を経験する機会をいただき、世界に伍する契約交渉ができるようになりました。

いま動き出せば、未来は変わる!

──宇宙ビジネスに挑戦するために知っておくべきことは何ですか。

新谷 宇宙ビジネス業界で、今どんなことが起きているのかはニュースを追っておいていただきたいです。やはり、ある程度の勘所がないと入りにくい領域ですから。日本の情報だけでなく、海外の情報にもぜひ当たってください。そしてもし興味があれば、海外の宇宙ビジネスカンファレンスにもぜひ足を運んでいただきたいですね。

井上 国内外で起きる宇宙関連の出来事を取材し、より多くの人に届けることが私の仕事のひとつです。宇宙開発やビジネス分野における世界最大のカンファレンス『国際宇宙会議(IAC)』が今年はシドニーで開催されるので、取材に行く計画を立てています。

新谷 IACといえば、17年に参加し、イーロン・マスクの講演を初めて直接聞くことができました。当時は、通常は打ち上げ後に捨ててしまうロケットのブースターをスペースXが回収して、再利用する技術を開発したことで、世界がマスクに一目を置いた時期でした。スペースXは製造費を抑えるためだけに再利用ロケットを開発したのではなく、再利用ロケットを活用して、宇宙空間を経由して世界中のどこへでも2時間以内に人やモノを運べる世界を構想していることを発表しました。

 かたや日本は、有人宇宙飛行は米国やロシアに任せる方針でした。当時は政策議論の場では「有人宇宙飛行」という言葉さえ、言い出せない状況でした。このままでは日本だけ世界から取り残されてしまう。もしもロケットによる高速移動のアジアのハブが他国にできてしまったら……。悶々としながら帰国しました。すぐには有人宇宙飛行を実現させられなくても、まずはロケットが離着陸するスペースポート(宇宙港)の開港から進められないだろうか。「いま動かなければ、日本は終わる」。そんな思いに共感してくれたメンバーを集め、日本の宇宙港の開港を推進するスペースポートジャパン(SPJ)を立ち上げました。想像以上に早く物事を動かすことができ、SPJには70以上の企業・団体が加盟してくださり、ついには日本の成長戦略にも「宇宙港」の文字を入れていただけるようになりました。物事を少しずつ民間の手で動かせたという手応えを感じています。

井上 宇宙業界は新谷先生や宇宙スタートアップのCEO、国内カンファレンスの創設メンバーなど、40代の皆さんは特に熱い思いを持って活動されている方が多く、人生の先輩として尊敬しています。

新谷 私は100年後に日本に生まれてくる子どもたちにどんな未来を残せるかを考えながら、仕事をしています。いま動けば、10年後、100年後の未来は変えられます。そのきっかけは、実は自分の日頃のタスクのなかにあると思っています。大切な時間をどんな価値を生み出すために使うかを本気で考えていますし、そんな仲間が増えていけばうれしいですね。

宇宙ビジネスロケットが離着陸するスペースポートを中心に、ホテルやテーマパークなどが集まる未来の街の構想図。
提供:一般社団法人スペースポートジャパン

取材・文/井上榛香

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