
ビジネス文書を作成する際、「記」と「以上」の使い方は文書の完成度と信頼性を大きく左右する。本記事では、記書きの基本的な意味や活用シーンを解説し、実際のビジネス文書に役立つ例文とともに、その書き方のポイントを紹介していく。
目次
ビジネス文書における「記」および「以上」の正しい使い方は、文章全体の完成度と信頼性を左右する重要な要素である。この記事では、記書きの意味や活用シーン、具体的な例文とともに、効率的な記書き作成のポイントを解説し、実務に役立つ知識・体験を提供する。
「記書き」の意味と使い方
「記書き」とは、文書の本文とは別に、重要事項や同封書類の内訳などを箇条書きで示すための見出しである。文末に「以上」を添えることで、伝達内容が完結していることを明確にし、受け手に安心感を与える。
■記書きの意味
記書きとは、文章の後半部分において、本文で述べた事項とは別に、補足的かつ重要な情報を箇条書きで整理するセクションを指す。一般に「記」という見出しを中央に配置し、続いて各項目を箇条書き形式で左揃えに記載する。この手法を採用することで、文書全体の構造が明確になり、受け手はどの情報が重要なポイントであるかを一目で把握できるようになる。
本文で送付の趣旨を説明した後、同封した書類の種類や部数を「記」の下に具体的に列挙することで、書類の漏れや誤送を防ぐ効果が期待できる。また、「以上」と記すことで、記書き部分の情報がここまでで完結していることを示し、文書全体の締めくくりとしての役割を果たす。これにより、相手側は書類の確認をスムーズに行えるとともに、後日のトラブル発生時にも根拠となる明確な記録として機能する。
■ ビジネスにおける「記書き」の使用シーン
ビジネス文書や社外への連絡文書では、正確な情報伝達が求められるため、「記書き」は必須の要素となる。請求書、契約書、送付状、さらには行政文書などにおいて、記書きを活用することで、受け手は「何が送付されたのか」や「どの情報が含まれているのか」を瞬時に確認できる。具体的には、送付状では本文で送付の概要や目的を述べた後、同封する書類の内訳や部数を箇条書きで記載し、記書きの締めとして「以上」を明記する。
これにより、記載内容に抜けや誤りがないことを示すとともに、受け手は書類の内容を迅速に確認できるため、後の問い合わせやトラブル防止につながる。また、契約書などの正式なビジネス文書においても、記書きを用いることで、重要事項や条件の一覧が明確になり、双方の合意内容を正確に伝える手段として非常に有効である。こうした書式は、官公庁や社団法人などの公的機関が定めたガイドラインにも準じており、企業間の信頼性を高める一助となっている。
記書きの例文と書き方のポイント
記書きを実際に作成する際は、書類の種類や用途に応じた書き方を選択することが肝要である。以下に、契約書や請求書での記書き例と、効果的な記書き作成のポイントを具体例とともに解説する。
■コピペOK!記書きの例文
【契約書の例文】
契約日:令和○年○月○日 株式会社○○○○ 代表取締役 ○○○○ 様 契約書送付のご案内 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 さて、下記の通り契約書を同封いたしましたので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。 敬具 記 ・契約書 1通 ・別紙 1通 以上 |
【請求書の例文】
発行日:令和○年○月○日 株式会社○○○○ ご担当 ○○○○ 様 請求書送付のご案内 拝啓 貴社におかれましては、ますますご繁栄のことと存じ上げます。 平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。 下記の通り、請求書を同封いたしましたので、何卒ご確認くださいますようお願い申し上げます。 敬具 記 ・請求書 1通 ・明細書 1通 以上 |
■記書きの書き方のポイント
記書き作成時の基本ルールは以下のとおりである。
「記」と「以上」の配置
・「記」は中央揃えにし、内容の始まりを明示する。
・「以上」は必ず記書きの最後に右揃えで記載し、内容が完結していることを示す。
箇条書きの整合性
・各項目は左揃えで統一し、書類の種類に応じた必要事項を漏れなく記載する。
シンプルかつ端的に
・不要な説明や重複表現は避け、最小限の言葉で内容を正確に伝える。
■記書きを効率的に書く方法
記書きを効率的に作成するためのコツは以下の通りである。
- 事前準備 :同封する書類や伝えたい事項をリストアップし、順序を整理する。
- テンプレートの活用:定型の記書きテンプレートを作成しておくことで、複数文書に流用できる。
- 文章作成ソフトの利用:WordやGoogleドキュメントなどを活用し、箇条書き機能やセンタリング機能で整然とした書式に仕上げる。
- チェックリストの作成:「記」「以上」の位置、各項目の記載漏れがないかを確認するチェックリストを用意する。
記書きに不向きな書類とは
記書きは、本文以外の補足的な情報を整理し、重要な要点を箇条書きで明示するための有効な手法であるが、必ずしもすべての文書に適用すべき形式ではない。例えば、全体の文章量が少なく、用件がシンプルである挨拶状や短文のメールなどでは、記書きを設けることにより冗長な印象を与え、文章全体の読みやすさや明快さが損なわれる可能性が高い。
こうした場合、文書の主たる内容が端的に伝わるよう、余計な形式や見出しを挿入せずに、必要な情報のみを簡潔に記載するほうが望ましいだろう。
情報量が多く複雑な場合には、記書きに全てを盛り込もうとすると、かえって項目が煩雑になり、受け手側での確認作業に混乱を招く恐れがある。こうした文書では、本文と記書きの区分が曖昧になり、誤解や見落としを誘発するリスクがあるため、別紙や付録として整理する方法が適している。さらに、極端に短い文書の場合には、記書きとして箇条書きを設ける必要がなく、逆に「以上」で締めくくる形式自体が不自然となることも考えられる。
加えて、記書きはビジネス文書や公式文書において、情報の完全性や整合性を示すために用いられるが、内輪向けのメモや日常的な連絡事項、個人的なメモ書きなど、フォーマルな形式を要求されない文書に対しては、形式にこだわりすぎることがかえって非効率であり、柔軟性を欠く結果となる。
以上の理由から、文書の目的や受け手の状況を十分に考慮し、記書きの採用が本当に必要かどうかを判断することが重要である。
まとめ
記書きの正しい使い方は、ビジネス文書作成における基本中の基本であり、正確な情報伝達と相手への安心感を提供するために極めて重要な役割を果たす。本文と記書きの明確な区分けは、書類の全体構成を整え、読み手が必要な情報を一目で把握できるようにするための工夫である。書類の受け手は漏れなく必要な情報を確認でき、後のトラブル防止や誤解の回避につながる。
記書きは、正式なビジネス文書や官公庁文書において、文書の信頼性と一貫性を担保するための形式として定着している。文書作成時には、不要な重複表現を避け、必要な情報のみを端的にまとめることが求められる。この記事で示した例文や書き方のポイントを実務に取り入れることで、記書きの活用により効率的かつ正確な文書作成が実現できる。
すなわち、記書きを適切に活用することは、ビジネスにおけるコミュニケーションの質を向上させ、信頼性の高い情報伝達を可能にする重要な手段である。
文/諏訪 光(すわ ひかる)
大手ネット系企業にて10数年に渡りプログラマーからプロダクトマネージャーまでを幅広く経験。新規事業から企業再生に至るまで様々な案件の開発に携わる。DX推進者や起業経験を経て現在は大手信託銀行でDX推進を行いながら、フリーランスの新規事業、DX、デジタルマーケティングのコンサルティングも行う。