首都圏から転出、中堅規模以上の企業で増加
首都圏から地方へ転出した企業を売上高規模別にみると、最も多かったのは「1億円未満」(176社)で、多くが小規模な企業だった。大幅に増加した23年(164社)からさらに増加し、1990年以降で最多だった21年(179社)に次ぐ過去2番目の多さだった。
23年に減少した「1-10億円未満」(136社)は横ばいで推移したほか、企業規模としては中堅~大手に位置づけられる「10-100億円未満」(45社)は2年連続で増加した。首都圏外への企業移転は、コロナ禍前に多かったIT関連産業など小規模な企業の動きが中心だったものの、中堅規模以上の企業でも首都圏から本社を移転するケースが増加している。
地方から首都圏へ転入した企業では「1-10億円未満」(121社)が最も多かった。「1-10億円未満」が全規模で最多となるのは2022年(106社)以来、2年ぶりとなる。「1億円未満」(116社)を合わせると、転入企業全体のうち約8割が売上高10億円未満の企業だった。一方で、売上高「10-100億円未満」(48社)と「100億円以上」(11社)はいずれも前年から減少し、売上高10億円以上の企業が首都圏への転入に占める割合は19.9%と3年ぶりに2割を下回った。
首都圏から転出した企業の業績動向をみると、2024年は転出企業のうち、前年から「増収」となった企業の割合は37.8%で、前年(35.9%)を上回った。コロナ禍当初は、急激な環境変化を理由に業績が急変したことで、オフィス賃料などランニングコストの高い首都圏から地方へと移転する動きが急増したものの、近時は成長を続ける企業の地方移転が増加傾向にある。
転出入企業における「増収」企業の割合(2014年~24年推移)
首都圏への転入企業では、成長や規模拡大が続く企業が引き続き多くみられた。2024年に首都圏へ転入した企業のうち前年から売上高が増加した企業の割合は48.6%で、前年(50.3%)を下回ったものの高い水準を維持した。
首都圏全体で高機能オフィスの供給が拡大するなど移転企業の受け入れ態勢が整っているほか、取引先との関係構築、人材採用の強化、海外や地方へのアクセス面など、首都圏に本社を置くメリットが大きい点も、拡大・成長する地方の中堅企業が首都圏への本社移転を決断する要因と考えられる。
首都圏から地方へ分散の動き、2025年も継続する可能性
総務省が1月31日に発表した、住民基本台帳に基づく2024年の人口移動報告によると、東京都では転入者が転出者を上回る「転入超過」が7万9285人となり、コロナ禍前の水準に回復した。首都圏を巡る人口流入は、リモートワークの普及などで一度は「脱首都圏」の動きもみられたものの、再び首都圏集中への回帰が鮮明となっている。
2024年は、テレワークの縮小・廃止や、対面ビジネスへの復帰などから、首都圏から地方へ拠点を移設する「脱首都圏」の動きが弱まるとみられた。しかし、首都圏から地方へ転出する企業が過去最多を更新し、経営規模の大きい企業の移転も目立つなど、これまでのトレンドに変化の兆しもみられる。
地方からビジネスチャンスを求めて首都圏に移転する成長企業の移転は依然として多いものの、WEB会議を活用したビジネススタイルやリモートワークが定着した企業では、BCP対策による拠点の分散化や、地方創生に貢献する企業ブランドイメージの向上、従業員のワークライフバランス向上といった地方移転におけるメリットに対する理解が、経営層でより浸透した可能性がある。また、企業移転の理由が、工業団地の整備や助成金といった「モノ・カネ」中心の移転から、生活環境など「働くヒト」のエンゲージメント向上といった「ストーリー性」が重視されつつある。
こうした局面では、生活環境などで優位性のある地方都市が移転先の魅力として大きなアドバンテージを得られやすく、今後首都圏からの移転の受け皿として、今後選ばれるケースが増えることも期待される。一方で、移転先は依然として創業の地など所縁のある場所、事業所や工場など拠点が既にあるエリアに限られ、新たに進出する形での本社移転は少ないなど、本社移転の内容の偏りをどのように解消するかが課題となる。
2025年の首都圏における本社移転は、政府による地方創生に向けた議論が再び加速するなかで、災害に備えた首都圏以外への本社機能分散やバックアップ拠点の確保といった動きも加わり、転出超過トレンドが続く可能性がある。
[注1] 本社とは、実質的な本社機能(事務所など)が所在する事業所を指し、商業登記上の本店所在地と異なるケースがある
[注2] 首都圏の企業転出・転入は、首都圏内外をまたぐ道府県との本社移転を指しており、首都圏内での県境をまたぐ本社移転は含まれない
出典元:株式会社帝国データバンク
構成/こじへい