
レバテックは同社が運営するITエンジニア専門新卒向け就職支援エージェント、レバテックルーキーにおいて、民間企業で働く・働いた経験のある博士人材212名と博士人材の採用を行なう企業の採用担当者・責任者192名を対象に、博士就活・採用に関する実態調査を実施。結果をグラフにまとめて発表した。
民間企業での就業経験がある博士人材の約7割が「民間企業で働いて良かった」と回答
民間企業で働く・働いた経験のある博士人材(※1)が、博士課程修了後に民間企業で働くことを決めた理由について聞いたところ、「経済的安定を得たいと考えたから(53.8%)」が最多となった。
※1 本調査では「社会人になる前に博士課程に在籍して、博士号を取得した」人材を指す
また民間企業で働く・働いた経験のある博士人材のうち約7割が「実際に民間企業で働いて良かった」と回答した。
良かったと思う理由の1位は「経済的安定を得ることができたから(37.6%)」となり、経済的な基盤の確保がキャリアにおける重要な要素となっていることがわかる。
また「社会に貢献できている実感を持つことができたから(33.1%)」「大学に残るよりもキャリアパスの選択肢が広かったから(29.9%)」といった点も挙げられている。
一方で「どちらかというと良くなかった」「良くなかった」と回答した人の理由としては「専門知識を過小評価されていると感じたから(49.1%)」「博士課程で学んできたことを活かせないから(32.7%)」が上位に入った。専門知識を活かせる環境や、評価制度の改善が課題となっているようだ。
■博士人材を採用して良かった理由、「学んできた専門分野以外でも高い能力を発揮してくれた」が4割超
博士人材の入社実績がある企業に対し、博士人材を採用して良かったことを聞くと、「博士課程で培ってきた専門知識やスキルと自社の研究開発分野の親和性が高く、事業に大きく貢献してくれた(55.8%)」が最も多い結果となった。
次いで「博士課程修了者が学んできた専門分野以外でも高い能力を発揮してくれた(41.9%)」「他の社員の学習意欲を刺激する良い影響を与えた(38.0%)」が続く。
専門分野以外で際立っていたと感じる能力については「論理的思考力(48.8%)」が1位となり、「情報を収集し分析する能力(47.3%)」「計画を立案し、実行・管理する能力(42.6%)」が続く結果となった。
博士人材の入社実績がある企業は、研究分野における貢献だけでなく、専門分野以外でも高い能力を実感していることが判明した。
■約3人に1人の博士人材が「研究分野と業務の関連性はない」と回答
民間企業で働く・働いた経験のある博士人材のうち、約3人に1人が「博士課程での研究分野と現在の業務に関連性はない(37.7%)」と回答。また「研究分野と業務内容が類似している(18.4%)」と回答した人は全体の約2割に留まっており、博士課程で培った専門性を活かしきれていない現状が明らかになった。
「研究分野と業務の関連性はない」と回答した人おいても、その約半数は「民間企業で働いて良かった」と回答している。研究分野との関連性がなくても、民間企業で働くことで得られる「やりがい」や「安定性」といった他の要素が、満足度に繋がっているのではないか。
■博士課程在籍中の就職活動で大変だったこと、「相談先が少なかった」が最多
博士人材が就職活動を開始したタイミングは「博士課程修了後(27.8%)」が最も多く、約4人に1人の博士人材が修了後に就職活動を開始していた。
博士課程在籍中に就職活動を開始した人に対し、在籍中の就職活動で大変だったことを聞くと「就職活動についての相談先が少なかった(45.3%)」「いつ就職活動を開始するべきか分からなかった(34.7%)」「研究室や先輩の紹介以外での企業の探し方が分からなかった(32.0%)」が上位を占めた。
博士課程修了者のうち民間企業・公的機関に就職する人は約3割と言われている(※2)。
※2 文部科学省「博士後期課程修了者の進路について」
大学教員やポストドクターに進む人も多いなかで、就職活動に関する情報を得る機会やキャリア支援が不足している現状が見えてきた。博士人材が、多様な分野で活躍できるように、在学中から民間企業におけるキャリア情報の提供や就職活動支援の拡充が重要となるだろう。
調査結果まとめ
<レバテック執行役員 泉澤 匡寛 氏>
少子高齢化による労働力不足と急速な技術革新の時代において、民間企業における博士人材の活躍への期待が高まっています。今回の調査においても、約4割の博士人材の採用実績がある採用担当者・責任者が博士人材の専門分野を超えた貢献を実感していることが明らかになりました。
一方で博士課程の就職活動における課題も浮き彫りになっています。今回の調査では、民間企業での就業経験がある博士人材の約7割が「民間企業で働いて良かった」と回答した一方で、就職活動についての相談先が少ない現状が明らかになりました。
実際に、弊社が運営するレバテックルーキーでも「就職活動を開始する時期が分からず、出遅れてしまった」や「どの企業が博士課程を採用しているか分からない」といった博士課程の学生からの相談が寄せられています。
博士の就職活動における情報やキャリア支援の少なさは、学生が適切なキャリア選択を行い、博士人材が民間企業で活躍する可能性を狭めているのではないでしょうか。
2025年3月に経済産業省と文部科学省によって作成される「博士人材の民間企業における活躍促進に向けた手引き・ガイドブック※3」では、博士人材の待遇や採用活動の見直しに加え、企業と博士課程学生の交流機会の増加などが提案される予定です。
※3 経済産業省「博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会開催について」
高度な専門知識と研究能力を持つ博士人材が活躍できる社会を実現することは、日本の技術発展、そしてIT先進国化に大きく貢献すると考えています。
<調査概要>
調査年月/2025年1月22日~2025年1月27日
調査方法/インターネット調査
調査主体/レバテック株式会社
実査委託先/GMOリサーチ&AI株式会社
・企業側調査
有効回答数/192s
調査対象/博士号取得者を採用する企業の採用担当者・責任者
・人材側調査
有効回答数/212s
調査対象/博士課程修了者のうち、民間企業で働く・働いた経験のある博士人材
構成/清水眞希