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〝誰ひとり取り残されない〟まちづくりを目指した次世代車いす×デジタルアート展が示す未来

2025.03.13

電動車いすのようで電動車いすではない。

近距離モビリティ「WHILL(ウィル)」は2012年、国内発のスタートアップ企業WHILL社によって開発、販売されている次世代型の乗り物だ。

身体障害者の方だけでなく、免許返納後の移動手段やエリア観光など様々な用途での使用が期待されている。

そんな「ウィル」を活用し、東京・天王洲で開催中のアートイベント「動き出す浮世絵展 TOKYO」(※2025年3月31日まで開催)および「天王洲・キャナルサイド プロジェクションマッピング HOKUSAI IMMERSIVE ART」(※現在は終了)で連携し、「まちづくり」の可能性を探る実証実験が行なわれた。

本稿では、2月21日に行なわれたまちづくり実証実験の様子を紹介するとともに、今回の実証実験の中で実施されたワークショップを企画・運営した国内電通グループ横断のタスクフォース「dentsu DEI innovations」に話を聞いた。

パーソナルモビリティ「ウィル」とは

「ウィル」は車いすユーザーの「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」という声がきっかけで誕生した。

健常者が何気なく過ごしている日常も、車いすユーザーにとっては悪路や段差など物理的なハードルがあり、「車いすに乗っている人」として周囲から見られる心理的なバリアが存在する。

そのことを知ったエンジニアやデザイナーたちが「デザインとテクノロジーの力があればそれらを超えられる」と考え、生み出したのが「ウィル」だった。

車いすとしてではなく、「パーソナルモビリティ」として再定義したかった開発メンバーらは、福祉用具の展示会ではなく、あえて東京モーターショー(現:Japan Mobility Show)でお披露目することで、新しい世代の価値観を作りあげる一歩を踏み出したのだった。

車いすユーザーへの提案だけでなく、免許返納後の移動手段、普段は車いすを使わないけれども長距離の移動は疲れてしまう際の解決手段といったニーズにも対応すべく展開している。

「ウィル」に乗って街とアートイベントを巡る

今回のまちづくり実証実験では、日常的に「ウィル」を使っている当事者ユーザーと、健常者が一つのチームとなり、天王洲区の街やアートイベントを巡った。

仕掛け人は「誰一人取り残すことのない社会」を目指すチーム

今回、都市部のアートイベントと連携して社会課題の解決に向けたワークショップを主導したのは、国内電通グループ横断のタスクフォース「dentsu DEI innovations」だ。

同グループは2011年に電通が発足させたDEI課題専門タスクフォース「電通ダイバーシティ・ラボ(DDL)」を2025年に拡充した組織だ。現代社会が抱える多様性という社会課題、ビジネス課題に対し国内電通グループ各社の事業ドメイン、人財、専門技術、ネットワークなどを融合し、「誰一人取り残すことのない社会(Inclusion)」を目指して活動する組織横断型のチームとなっている。

「dentsu DEI innovations」が取り組むインクルーシブ・マーケティングには、「社会から誰一人として取り残さない」という意味だけでなく、「当事者以外の人たちにも、開発プロセスやマーケティングプロセスに入ってもらい、身近なこととして感じてもらおう」という意味が含まれている。

つまり、社会全体、ビジネス全体でのDEI実現がその根底にある。その具体的な取り組み事例の一つが「ふだんクエスト」だ。

ふだんクエストは、「ふだん、当事者以外は気に留めていない施設やサービスのユニバーサル化に対し、当事者と一緒になり、彼らの目線、自分なりの目線で改めて探索をする」取り組みだ。

企業のDEI研修だけでなく、これから生み出される新たなサービスやソリューションがよりDEIを促進したものにすべく、これまで多くの企業とタッグを組んできたプログラムだ。今回、天王洲のアートイベントで行なわれたまちづくり実証実験は、「WHILL」、天王洲区のまちづくりを行なう「天王洲・キャナルサイド活性化協会」とともに実施した「ウィルでふだんクエスト at 天王洲・キャナルサイド プロジェクションマッピングHOKUSAI IMMERSIVE ART」だった。

「まちづくりに関わる人々がウィルに乗り、ウィルユーザーと対話をしながらアートイベントを巡る。ふだんとは違う視点から新たな可能性を見つけ、障害の有無や年齢に関係なく誰もがアートを楽しめるまちづくりを目指すものです。これまで『ふだんクエスト』は、企業のオフィスなどを障害のある方と共にまわる課題発見型のプログラムを提供してきました。今回は街やアートイベントという公共の場やコンテンツを対象に、『ウィル』で巡るという体験性を加えた、エンターテイメント性の高いプログラムとし、新たなアイデア創出を促すプログラムとしました。

実際に低い目線で、モビリティを操縦しながら街やアートイベントを巡る体験は刺激的で、独特の没入感を感じたり、街の路面や植栽をアートの一部として感じたりと、1時間半ほどの体験だけで、これまでまちづくりやイベント企画に関わってきた皆さんが多くの新発見をし、その後のセッションで多数の新企画アイデアが出たほどです。そして、そのいずれもが『障害者のための企画』ではなく、自然に『障害の有無を越えて誰もが楽しめる企画』になっていたのが印象的でした。こうした当事者共創型、参加体験型のプログラム『ふだんクエスト』をより多くの企業や団体の皆さんと展開することで、インクルーシブでより豊かな社会を作っていきたいと考えています」(dentsu DEI innovations 代表・林孝裕さん)

DEI課題の解決だけでなく、地域活性化やエンタメ体験の深化など「ふだんクエスト」が取り組む”当事者と当事者以外の目線の共有”は、今後も思いがけない発見が生みだしそうだ。

取材・文/峯亮佑

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