「費用対効果が見合わない」という課題を抱えている会社は、多いのではないでしょうか。ビジネスで成果を上げるためには、費用を最小限に抑えて効果を最大化することが重要なポイントです。本記事では、費用対効果の意味や効果を測る指標、効果を高める施策について解説します。
目次
費用対効果とは?

費用対効果とは、施策や投資にかけた費用に対して得られる効果を測る指標のことです。費用対効果が高いほど、少ない支出で多くの成果を得られたことを表します。
ここでは、費用対効果と投資対効果やコストパフォーマンスとの違いを解説します。
参考:デジタル大辞泉
■投資対効果(ROI)との違い
費用対効果と似た言葉に投資対効果がありますが、両者の意味は異なります。投資対効果はROI(Return On Investment)とも呼ばれ、投資によりどのくらい利益をあげられたかを測る指標です。
費用対効果の「費用」とは目の前にあることにかける支出であるのに対し、投資対効果の「投資」は将来の利益を得るために支出することを指します。
そのため、費用対効果という言葉は目的と効果のいずれも短期的・限定的で、投入を止めるとすぐに効果がなくなるものを対象に使うことが多いでしょう。
一方、投資対効果は長期的な効果があり、投資を止めても将来効果が見込めるものを対象に使います。
■コストパフォーマンスとの違い
費用対効果とコストパフォーマンスは、ほぼ同じ意味で使われます。どちらも支出した費用に対して得られた効果を測定するときに使う言葉ですが、費用対効果は主にビジネスの場面で、経費に対する効果を考えるときに使われる言葉です。
これに対しコストパフォーマンスは、一般的に満足度の高い商品やサービスに対して使われることが多いでしょう。
費用対効果の使い方・例文

費用対効果は、主にビジネスの場で、施策や戦略を策定するときなどに使われます。
ここでは、費用対効果を使用する場面や例文をご紹介します。
■使用する場面
費用対効果は、主に次のような場面で使われます。
- マーケティング戦略の策定
- 商品・サービスの価格設定
- 商品の販売個数の決定
- 施策の前後で効果を比較をする際
- 販売方法の決定
- 広告出稿の検討
- 複数の企画の比較
- 設備投資の検討
- 事業の方向性などを決定する際
- 人材採用のコスト設定
- 人材育成プログラムの効果測定
戦略や施策の検討・意思決定の際に使われることが多いでしょう。
■例文
ビジネスシーンで使う費用対効果の例文は、次のとおりです。
- 候補に上がった施策の費用対効果を比較検討し、最終的にひとつの施策に絞り込まれた
- 投下した開発費や広告費に対して想定した売上が上がらず、費用対効果が低い結果になった
- SNS運用を始めてから企業の認知度が上がり、新規顧客が増えた。広告費をかけず、高い費用対効果を得ることができた
- 広告に費用をかけたものの費用対効果が低く、至急、マーケティング戦略の見直しを検討するべきだ
- 前年度に行った施策の費用対効果に基づき、今年度の広告費を見積もった
- 人材育成の費用対効果を考えると、研修を外部委託することも検討した方がよい
- 今回の企画は費用対効果に優れ、少ない予算で大きな成果を得られた
- 従業員の教育にかかる費用が高額になっても、その結果スキルや仕事への意欲が高まれば、費用対効果は高いといえる
費用対効果の計算方法

費用対効果は、「効果」から「費用」をマイナスして求めます。
たとえば、1,000万円の費用をかけた企画で3,000万円の効果が出たときの費用対効果は、3,000万円−1,000万円=2,000万円です。
一方、1,500万円の効果であれば1,500万円−1,000万円=500万円という結果になります。より費用対効果が高いのは、前者です。
「費用」にはお金だけでなく、時間や携わった人数、作業工数も含まれます。「効果」には商品・サービスの売上だけでなく、イベントなどの集客や公式サイト・SNSへのアクセス数、企業の認知度アップ、評価の向上など、さまざまな内容が該当します。
費用対効果の指標

費用対効果の指標には、さまざまなバリエーションがあります。ROIもそのひとつですが、ほかにも多くの指標があり、算出したい費用の内容に合わせて使用するとよいでしょう。
ここでは、費用対効果の5つの指標を解説します。
■ROAS
ROASは「Return On Advertising Spend」の略で、広告費に対して得られた利益を測る指標です。
広告の効果を数字で確認でき、広告を活用したマーケティングの効果測定に活用されています。
次の計算式で測定します。
「ROAS(%)=売上÷広告費×100」
媒体ごとの費用対効果を測定したり、広告の費用対効果を改善したりする際に用いられます。また、ROASを測定することで、広告予算の適切な配分が可能です。
■CPA
CPAは「Cost Per Acquisition」の略で、新規顧客を獲得するためにかかったコストを示す指標です。実施したキャンペーンや施策にかけた費用が、どれだけの新規顧客獲得につながったかを測定する際に使います。
計算式は、次のとおりです。
「CPA(%)= 広告費 ÷ コンバージョン数」
コンバージョン数とは、広告をクリックしてサイトに訪れたユーザーが、資料請求やお問い合わせといった行動をとった数のことです。数値が低いほど、施策の効果が高いことを表します。
■CPO
CPOは「Cost Per Order」の略で、注文1件あたりにかかる費用を表す指標です。
次の計算式で求めることができます。
「CPO=広告費÷注文件数」
数値が小さいほど、効率的な投資で注文を獲得できている状態です。低コストで顧客の獲得に成功し、費用対効果の高い広告活動につながっていると判断できます。
コンバージョンを対象にするCPAに対し、投資した費用が直接注文につながっていることを確認できる指標です。
■CPR
CPRは「Cost per Response」の略で、見込み客1人の獲得にかかった費用を表す指標です。「レスポンス獲得単価」とも呼ばれます。
計算式は、次のとおりです。
「CPR=広告費÷レスポンス数」
レスポンスとは「反応」のことで、資料請求や問い合わせ、メールアドレスの登録などが該当します。無料サンプルやトライアルセットの申し込み、サブスクリプションのお試し期間など、購入の前段階である行動が対象です。
CPRに購入・注文は含まれないため、CPOと併用して使われることが多い指標です。
■LTV
LTVは「Lifetime Value」の略で、顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの期間にどれだけの利益をもたらすかを表す指標です。「顧客生涯価値」とも呼ばれます。
LTV の計算式は複数あり、主に使われるのは次の計算式です。
- LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均購入回数
- LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入回数× 平均継続期間(年)
会社の規模や業種ごとに適した計算式が異なるため、自社に合うものを選びましょう。
とくに、サブスクリプションによる継続性が重要となるビジネスモデルで重視される指標です。
費用対効果が重視される理由

費用対効果が重視される理由は、主に次の2点があげられます。
- 経営判断の指針になる
- 施策の効果を判断できる
詳しくみていきましょう。
■経営判断の指針になる
費用対効果は経営判断の指針になることが、ビジネスで重視される理由です。数値で把握できるため、これまでの施策で算出された数値と比較して客観的な検証ができます。
今後の施策や戦略、プロジェクトなどを打ち出す際に役立つでしょう。事実に基づく客観的な分析により、合理的な経営判断ができます。
費用対効果の分析は、新規事業を立ち上げる際にも、赤字のリスクを回避した計画の策定に役立ちます。
■施策の効果を判断できる
費用対効果の算出により、施策の効果を可視化できます。施策によってどれだけの効果を得られたのか測定し、成功したかどうかの検証が可能です。
たとえば、次のような2つの施策を行った場合、売上が高いのは2の施策ですが、費用対効果が優れているのは1の施策であることがわかります。
- 施策1:売上100万円−費用30万円=利益70万円
- 施策2:売上300万円−費用250万円=利益50万円
費用対効果は商品・サービスの売上だけでなく、開発やマーケティング施策、人材育成など、さまざまな場面で使えます。
費用対効果の測定結果がよくなければ、課題や問題点について考えることができます。改善するためのきっかけになり、よりよい施策・戦略の策定につながるでしょう。
費用対効果が低い場合の対策

費用対効果が低い場合には、対策が必要です。
主な対策として、次の4点があげられます。
- 無駄なコストを削減する
- 効果的な広告戦略を考える
- 価格を見直す
- 業務を効率化する
それぞれの内容を解説します。
■無駄なコストを削減する
費用対効果を高めるためには、無駄なコストを削減することが必要です。そのためには業務フローをチェックし、重複や必要のない業務など、無駄が発生している業務はないか洗い出します。
ただし、コストを抑えることを重視しすぎると、効果も下がる可能性がある点に注意しなければなりません。あくまでコストを減らしつつ、最大限の費用対効果を得られるよう調整することが大切です。
業務の標準化も、無駄なコストの削減につながります。ノウハウや経験が偏らないようマニュアルを作成し、誰もが同じように作業できるようにすることで、生産性が高まるでしょう。
■効果的な広告戦略を考える
より効果的な広告戦略を考えることも、大切な対策の1つです。どれだけ費用をかけても、ターゲット層に届かない広告では意味がありません。広告費が無駄になり、費用対効果が下がります。
そのため、まず自社の商品・サービスのターゲット層を明確にすることが重要です。年齢や性別、居住地などの属性や興味・関心などを細かく設定します。
設定したターゲットにより、適した広告媒体は異なります。SNSだけみても、XやInstagram、Facebookなど媒体ごとに利用者層は異なるため、どの媒体であれば訴求効果が高いかを分析し、選ぶことが大切です。
■価格を見直す
無駄なコストを省いても費用対効果が上がらないときは、価格設定の見直しを検討しましょう。
原価や経費、利益率などのバランスを考え、どの程度の価格であれば妥当かを考えます。類似商品・サービスを提供する競合他社の価格相場を把握し、適正価格を考えることも必要です。
価格の値上げは、慎重に判断しなければなりません。顧客が値上げに納得できなければ売上につながらず、かえって費用対効果を下げる結果になります。
デザインのリニューアルや性能アップ、材料費高騰といったやむを得ない事由の説明など、値上げに対するなんらかの理由づけは必要です。
あくまでも顧客のニーズに合っているかどうかが大切であり、自社の提供する価値が顧客の求める価値に合致し、その価値への対価として妥当と思われる価格を設定する必要があります。
■業務を効率化する
費用対効果を高めるためにコストを削減するには、業務の効率化が欠かせません。効率化により作業時間が短縮し、人件費などの削減につながります。
作業工数が多く時間がかかっているノンコア業務は、ITツールによる自動化やアウトソーシングの活用を検討するとよいでしょう。よりコア業務に集中することで、無駄を省きながら生産性を高められます。
スケジュール・タスク管理に役立つツールやコミュニケーションツールを導入すれば、作業時間を短縮できるだけでなく、情報共有やミス防止などにもつながります。結果として生産性を高め、コスト削減になるでしょう。
費用対効果を高める施策を考えよう

費用対効果は投入した費用に対して得られた効果がどのくらいかを測る指標であり、経営判断の指針になるものです。確認したい施策の内容ごとにさまざまな指標があるため、自社のビジネススタイルに応じて適切なものを選ぶとよいでしょう。
費用対効果が低い場合は、無駄なコストを削減したり効果的な広告戦略を検討したり、効果的な対策を検討する必要があります。
費用対効果の意味を把握し、高める施策で会社の業績を向上させましょう。
構成/須田 望







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