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2025年2月17日から、令和6年分の確定申告の受付が始まった。今回の確定申告で前回と異なる点や注意点などについて説明しよう。
令和6年分の確定申告の目玉は定額減税
令和6年度税制改正に伴って、今回の確定申告では定額減税が実施される。定額減税では、令和6年分の所得税額から一定額を特別控除してくれる。その金額は本人分として所得税3万円、住民税1万円。家計を共にする家族がいる場合は、配偶者、扶養親族1人につき、同様に所得税3万円、住民税1万円が控除される。
つまり配偶者と子ども2人の4人家族の場合、(所得税3万円+住民税1万円)×4人で、合計16万円分の定額減税が受けられる。なお対象者は、令和6年分の合計所得金額が1805万円以下(給与収入のみの場合は2000万円以下)の人になる。対象となる配偶者や扶養親族は、年収が103万円以下の人。定額減税には年齢制限がないので赤ちゃんも対象。その人数の確定は、所得税の場合は令和6年12月31日時点、住民税の場合は令和5年12月31日時点になる。
とはいえ住民税は令和6年度の納付額からすでに控除されている。給与所得者の場合は所得税についても、令和6年6月1日以降に支払われる給与等の所得税の額から控除されているので、特に何も行う必要はない。
この定額減税について、個人事業主は令和6年分の確定申告で申告する。ただ、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、定額減税を適用した申告書を自動計算で作成することができる。申告書類を提出する場合は、「令和6年分特別税額控除」の欄に対象人数と金額を忘れずに記載するようにしよう。
マイナンバーカードの読み取りが不要になる
確定申告は国税庁の「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」を使って、スマホやPCから申告することができる。スマホ申告する場合、マイナンバーカードをスマホで読み取ることで本人確認を行なうのだが、事前に「スマホ用電子証明書」を申し込んでおくことで、この読み取りが不要になる。
「スマホ用電子証明書」とは?
「スマホ用電子証明書」とは、スマホに搭載できる公的個人認証サービスのこと。このサービス自体は2023年5月から行なわれているのだが、2025年1月6日から「e-Tax」でも利用できるようになった。対応している端末は「マイナポータル」の該当ページから確認できる。なお利用できるのはAndroidのみで、iOSについては今春に対応予定だ。
利用するには「マイナポータル」アプリからマイナンバーカードを使って、利用申請と登録を行なう。利用申請の手順は「マイナポータル」の該当ページから確認できる。
利用申請に必要なものは、対応しているスマホとマイナンバーカード、マイナンバーカードの署名用電子証明書のパスワード(6文字から16文字まで)だ。スマホに登録した電子証明書を利用する時に必要となる数字4桁のパスワードと、半角の英大文字と数字を含む6文字から16文字までのパスワードの2つを新たに設定する。
「マイナポータルアプリ」を立ち上げた時に、画面上部に「スマホ用電子証明書を利用できます」というバナーが出た人は、まだ申請や登録を行なっていないということ。スマホ申告をする場合は、早めに操作しておこう。
「マイナポータルアプリ」画面。上部に「スマホ用電子証明書を利用できます」というバナーが出る場合(画面左)は、まだ申請や登録を行なっていない。
マイナポータル連携でスマホ申告が便利になる
「e-Tax」で電子申告する場合、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用するが、2025年1月から、所得税の申告の全ての画面でスマホ向けの専用画面を提供している。
確定申告に必要な証明書等を発行するサイトと「マイナポータルアプリ」を連携する「マイナポータル連携」しておくと、給与所得の源泉徴収票や社会保険などのデータを一括で取得して、確定申告書の該当項目に自動入力してくれるので便利だ。令和6年分の確定申告で対応しているのは以下の通り。
確定申告が必要な給与所得者とは
会社員などの給与所得者は、基本、確定申告をする必要はない。だが近年、副業や投資を行う人が増えていて、その中には確定申告が必要な人もいる。以下の項目に該当する人は、確定申告の必要があるかどうかを確認しておきたい。
●給与所得者で確定申告が必要なケース
・給与の収入金額が2000万円を超える人
・給与所得や退職所得以外に20万円を超える副業所得がある人
・給与所得や退職所得以外に20万円を超える仮想通貨への投資などの所得がある人
・ふるさと納税先の自治体数が6団体以上になる人
・住宅ローンを利用してマイホームの購入、新築、増改築などを行なった人
・令和6年中に支払った医療費が10万円を超える人
また確定申告をすることで、所得税等が還付されて、得になるケースもある。それが医療費控除、住宅ローン控除、寄付金控除だ。
医療費控除は令和6年中に支払った医療費が10万円を超えた人。住宅ローン控除は住宅ローンを利用してマイホームを購入したり、新築した人。寄付金控除は年間2000円以上を超える寄付をした人が該当する。
ふるさと納税の場合、寄付した自治体が5団体以内で「ふるさと納税ワンストップ特例」の申請を行なっている場合、確定申告は不要だが、医療費控除や住宅ローン控除などの申請のために確定申告する場合は、寄付金控除の計算も含めた上で確定申告する必要があるので注意したい。
令和6年分の確定申告の受付期間は以下の通り。確定申告を行なう必要がある人は、早めに申告の準備を始めよう。
令和6年分確定申告の受付期間
所得税等:2025年2月17日~3月17日
個人事業者の消費税:2025年1月6日~3月31日
文/綿谷禎子