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日本の伝統野菜を守る!在来種再生の立役者が下した〝種の焼却処分〟という衝撃の決断

2025.02.26

ウェルビーイングを語る上で、欠かせない“食”。そして、言わずもがな、その根本となる日々の生活に必要な作物を育て提供する重要な役割を担っている農業。

今、農の現場で、世界的に注目されているトピックが“種”の問題である。

そんな中、山形県の庄内にある、ハーブ研究所スパールの山澤清代表が保有する600種類もの在来野菜の種を全て破棄することを発表。一部界隈では衝撃的な事件として話題になっている。

“種を捨てちゃうことがなんでそんな大騒ぎすることなの?”と思われる方もいるかと思うが、“種”が、いかに日々のウェルビーイングに密接に関わりあるかという話を山澤氏の今回の件を取り上げレポートしたい。

食糧安全保障のリスクを高める種子の多様性の喪失

食の根幹を支える野菜や果物の種子は、私たちにとって生命の源そのものである。しかし、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告によれば、20世紀末まで過去100年で数千種類の在来種が失われたと言われている。

これは「90%以上」の農業品種が絶滅してしまったということになり、人類史上最速のスピードで種子の多様性が失われたと言われている。

山澤氏が保有する日本在来種の野菜の一覧表。

この減少の背景には、気候変動などによる自然環境の影響もさることながら、商業化された農業システムによる単一品種の普及、そして遺伝子組換え作物(GMO)の導入が挙げられる。

特に、遺伝子組換え作物の普及により、農家が自らの収穫物を種子として保存して翌年に再利用することが法的に禁止されるケースが増加していることが大きな原因として考えられる。その結果、種子の多様性は急速に失われつつあり、今後の食糧安全保障や生態系に及ぼす影響は非常に深刻な状況と危惧されている。

こういった、現代農業における効率主義が、地域ごとの伝統的な農業の消失を加速させて、農業の高齢化、農地の減少などが相まって、日本でも、特に伝統的な農作物(在来種)の栽培が激減している。

在来種野菜の特徴は、例えば、京都の伝統野菜「九条ねぎ」や、山形の「庄内柿」など、特定の地域で長年にわたって育てられてきた野菜で、その土地の気候や土壌条件に強い適応力を持つ。

自家採種(収穫した種を翌年また使うこと)によって、これまでは、農家や家庭で代々受け継がれ、地域ごとの「遺伝的多様性」が守られてきた。

また、在来種野菜の栽培は、化学肥料や農薬を使用しない伝統的な農法が多いため、環境負荷が少ないことも特記すべき点であろう。

栄養価が高いものも多く、近年の本質的な健康志向の高まりによる脚光を浴びるようになってきた。これらの特徴を持つ在来種野菜は、日本の食文化や農業遺産を象徴する貴重な存在であり、近年では保存活動や復活プロジェクトが全国各地で進められている。

世界的に高まる種子保管の重要性

ここ最近、急速に失われる可能性がある多くの在来種を保管するために種の保管場所として種子バンクなる施設が世界中で設けられるようになった。著名な例として知られるのがノルウェーの「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」で、これは地球規模での食糧安全保障における重要な役割を果たしている。

日本でも、在来種を保存するためのシードバンクが存在するものの、冷凍技術や保管のコストが高いため、十分な保存がなされていないことが課題となっている。

また個々の農家や地域による保存活動が主となっており、商業用に大量に流通しているF1種(異なる品種を交配してできた種で、育てやすく収穫量が多いが次の世代ではその特性が維持されず、毎年新しい種を買う必要がある)の種に依存している農家がほとんどで、在来種の管理が十分に行われていない現状があり、全体としての保存体制の確立が急務となっている。

↑山澤氏が保有する貴重な在来種の種たち。

野菜や果物は、日々の生きとし生けるものの生命活動を支える大切な源であり、単なる工業生産品とは異なる。

種子の多様性が減少すると、特定の作物や品種に依存することになる。もし、気候変動や病害虫の流行、自然災害などによって、その作物が不作になってしまった場合、食料供給が危機的な状況に陥るリスクが高まる。

また、特定の種が急速に広がってしまうと、その地域の生態系に悪影響を与えることも考え得る。伝統的な作物が地域の動植物との生態系と調和して育成されてきたのに対し、単一種ばかりを普及させてしまうと生態系のバランスを崩す可能性がある。

さらには、農業の選択肢も狭まり、農家は特定の品種に依存せざるを得なくなる農家は、作物の選択肢がせばまり、作物の収益性や持続可能性が低下する可能性があり、農家の経済的安定性も損なわれることになる。

人口増加や気候変動で、世界的な少量不足が危ぶまれる中、その土地に根付いた在来種の種の重要度は非常に高まっているのである。

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