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ドライバーの平均年齢29.5歳、離職率65%→8%を実現した運送会社の名物社長が願う運送業界の未来

2025.02.20

三重県亀山市にあるトラック運送会社カワキタエクスプレスは人手不足に悩む業界の中、独自の広報戦略や福利厚生の充実を図ることで、10〜20代の採用に成功を収めている。

「トラックドライバーを若者の憧れの職業にする」をモットーに掲げる亀山の名物社長ことカワキタエクスプレスの代表取締役・川北辰実さんに話を聞いた。 

SNSで積極的に若い世代へアピール

カワキタエクスプレスが高卒の新卒採用を始めたのは今から16年前、2009年のこと。

「大型トラック運転手の全国平均年齢は49.9歳と言われています。高齢化が進み、近い将来、人手不足が起こることは目に見えていました。夢も希望もない業界と言われても仕方がありませんでした。

私も諦めていた時期があったのですが、ある時、ふと思ったんです。世間の運送業界に対するイメージを真逆にすることができれば、業界を変えることができるんじゃないかって。

だから自分の会社から世間のイメージを変えていこうと、若者の採用、トラック運転手の働き方改革やイメージ改善に取り組むようになりました」

YouTubeはもちろん、InstagramやTikTok、最近はポッドキャストを始めた川北社長。時には自らダンスをした動画を投稿することもあるという。SNSを通した情報発信で若者へのリーチは着実に伸びているという。

「2021年ごろから高卒新卒をはじめ10〜20代の応募が増えてきているなと実感しています。インスタやTikTokを見て応募をしましたという子もいます。嬉しいことに、今では東京、大阪、九州など日本全国から応募があります」

時には自らダンスをして動画を投稿することもある川北さん

離職率65%→8%を実現した大変革

社員の平均年齢は29.5歳。社員の7割が10〜20代だという。全国平均と比べると若い世代の活躍が目立つ。

それだけではない。離職率も8%(2024年12月現在)と、かなり低い水準となっているというのだ。その秘訣はなんだろうか。

「弊社ではこれまで業界があまり取り組んでこなかった社員の働きやすさを重視しています。例えば、『男性の育休取得率』は100%です。若い社員を採用するということは、子育てへの支援は欠かせませんから。他にも女性社員からの要望で誕生した年1万円の『コスメ手当』もあります。年二回の記念日休暇もありますし有給取得にも口を出しません。中には『推しのアイドルがいるからライブには休みは欲しい』と応募の段階で話してくれた子にはできる限り休みを取得させるようにしています」

メディアにも度々紹介される男性育休取得率100%

プライベートを充実させながら働ける環境づくりねと働き方改革をする中でも、一番大きな変化は「歩合制」から「月給制」への変更だったという。

「業界では今でも歩合制が一般的です。売上に対して⚫︎%という収入形態です。しかし、そうなるとどうしても長時間労働が良しとなる風潮になってしまいます。これではプライベートの充実とはかけ離れていきます。

私としては、従業員には夜はちゃんと自宅に帰宅してもらって、きっちりと休みを取ってほしいと考えています。ベテランドライバーからは反発もありましたが、会社の未来、業界の将来を考えると絶対に変えなければいけないポイントでした」 

ドライバーの長時間労働や過酷な労働環境が課題となった「物流の2024年問題」の記憶も新しいが、カワキタエクスプレスは10年以上も前からドライバーの労働環境に目を向けていていたということになる。

その結果が、社員平均年齢は29.5歳、離職率も8%という驚異的な数字につながっているのだろう。

三重・亀山から物流業界、そして日本を変えていきたい

近年、中小企業にとっては「人手不足倒産」も大きな課題になっている。

人手不足倒産とは従業員の離職や採用難による人手不足が要因となる倒産のこと。

帝国データバンクの調査では、2022年に140件だったのが2024年には342件と過去最多を更新しているという。

 特に2024年は時間外労働の上限規制が適用された建設・物流業界が全体の4割を占めている。

「この業界は世の中には絶対に必要な業界です。誰かがやらないといけない。そこには当然やりがいを持って働ける人を増やしていかないといけない。人手不足の現状はここで止めないといけないんです。

そのために、まずは自分の会社から変えていかないといけない。私たちが変わることができれば、これが業界のスタンダードになるはずです。そうなれば物流業界を変えることができると本気で思います。それだけでなく、物流業界から他の業界にまで、さらには日本を変えていきたいですね」

還暦を超えてもハングリー精神旺盛な川北社長の挑戦は続くーー。

株式会社カワキタエクスプレス
代表取締役:川北辰実(かわきた たつみ)
1964年生まれ。宅配便配達のアルバイトをきっかけに物流業界へ。1989年に創業し、1998年に株式会社カワキタエクスプレスを設立。高校の新卒採用をきっかけに業界の当たり前を見直し、「人材が会社の財産」と位置付けた経営戦略を行う。スポットでのトラック輸送業務をはじめ、国内外の引越業務や国際物流など、物流全般を手がけている。「誰にでもできる仕事」と下に見られがちなトラックドライバーを「若者が憧れる職業にしたい」という想いから、若手の業界未経験者に絞った採用・育成に注力。トラックドライバーの高齢化や労働者不足が深刻となる中、若手中心のフレッシュな力で物流業界の未来を切り拓いている。プライベートでは4人の孫を愛する「じぃじ」としての顔も持つ。座右の銘は「侠気」。

取材・文/峯亮佑

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