
ドクターズプライムは1月29日、シリーズAラウンドとして3.9億円を調達した。Dual Bridge Capital、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルが引受先で、株式発行による資金調達は同社初。銀行融資を含む累計調達額は6.4億円となる。
構造的な問題に切り込み「医療の民主化」を目指す
同社が掲げるミッションは「自分らしく選べる医療をすべての人に」。医師評価制度の導入や医療の民主化を推進してきた。創業事業は、救急車を断らない当直医と病院をマッチングすることで、「救急車のたらい回し」問題を解決する医師紹介事業「Dr.’s Prime Work」。実際の診療内容や患者受け入れ数を軸とした評価制度を構築し、救急患者を積極的に受け入れる医師ほど給与が高まるインセンティブ設計を可能にしている。
事業のタネとなったのは、代表の田真茂氏が、医師として働く中で感じていた課題。夜間の救急に対応する当直医は非常勤で採用された医師(アルバイト医師)が多く、救急車受け入れに対するモチベーションには、ばらつきがあったという。
背景には、「患者を救っても評価されない」=診療実績より論文実績が評価される、「患者が医師都合の対応に気づけない」=患者と医師の情報の非対称性、にあると分析。「自分がやらなくても誰かがやるだろう…」と”電車の中で席を譲るか迷う時と近い状況”が起こっているという。「医師都合が優先される」可能性を見抜いたのだ。
また、「自分の診療科以外の患者への対応に不安を抱き、受け入れ拒否につながるケース(専門外による断り)」の実態も指摘した。
今では同社の紹介医師の救急車受け入れ率は驚異の98%!直近で年間6万7000人以上の救急患者を診療している。
問題への解像度を上げた、緻密なビジネスモデル
「Dr.’s Prime Work」には、独自の求人を通して救急車の受け入れに積極的な医師が集まる。病院に人材紹介と救急コンサルをセットで提供することで、医師はインセンティブをはじめとするメリットを享受できる。病院は、「Dr.’s Prime Work」への利用料や、インセンティブなどを負担するが、救急受け入れに応じて売上も増えるので、こちらにもメリットがある。また、医師のシフトは近隣の救急隊に共有され、不要な搬送要請と救急搬送時間の減少・短縮に活用される。
また、実態としては「自分の診療科以外の患者への対応に不安を抱き、受け入れ拒否につながるケース」、つまり専門外による断り、という側面もある。同社は、その解決策とすべく、医師専用の学習動画を月に600本配信する「Dr.’s Prime Academia」事業も運営している。
今回の調達資金は、新たに一般ユーザー向けサービス「LifeDoctor」事業を立ち上げるための投資に充てる考えだ。こちらは2025年5月にリリース予定のセカンドピニオンサービスで、3万人の医師データを活用し、患者が自分の状況に合った医療を選択できる仕組みを構築していく。それに伴い、同社は現状60名(うち正社員34名)規模の組織を、1年後には150名へ拡大する方針だという。
先述の「Dr.’s Prime Work」、医師のスキルアップをはかる「Dr.’s Prime Academia」、患者をサポートして情報の非対称性を解消する「LifeDoctor」。複数のソリューションを組み合わせて全体で機能させる設計は、ビジネスパーソンとしても参考にしたい。
文/ソルバ!