
キャンディ市場のナンバーワンシェアを誇るカンロ(東京都新宿区)が2024年決算・新中期経営計画を発表した。2024年度は売上高・利益ともに過去最高を達成し、販売している商品の中でも特にグミが前年比14.5%と高い伸び率だった。
今年からは対米進出も本格化するという村田社長は、2030年の目標は売上高500億円以上、営業利益13%以上を目指すと言う。日本のグミと飴が世界を制覇する可能性が見えてきた。
拡大し続けるキャンディ市場
最初に、日本のキャンディ市場についてごく簡単に紹介すると、市場規模は全体で約3501億円、その中で飴(ハードキャンディ)が占める割合が35.3%の1236億円、グミが32.5%の1138億円となっている。売り場でもグミが目立っているが、飴とほぼ互角という数字を見ると、グミがいかに定着し、消費者に支持されているかが、よくわかる。
次に、国内キャンディ市場の推移を見てみよう。カンロによると、飴市場は底堅いのど飴需要により、2030年には市場規模を1200億円と予想している。中でも好調なのがグミで、「2030年には1500億円程度まで拡大する」とカンロ村田社長はグミの市場拡大に期待している。
キャンディ市場全体の国内メーカーシェアは、1位がカンロで、市場占有率は12.1%となっている。グミの市場ではカンロは2位の15.9%だが、カンロの「ピュレグミ」はグミカテゴリー年間売り上げナンバーワンブランドとなっている。ハード系の「カンデミーナグミ」も人気で、グミ全体の売り上げは、今年度も伸び続けると期待している。
グミ市場の強さはSNSとの親和性の高さ
いつのまにか、飴市場の大きな主役の座に立っていたグミ。2021年にガム市場を追い越したのが、はるか遠い昔の様にも感じられる。
カンロ社長はグミの強さの理由について、「いくつかあると思いますが」という前提の上、「色、形、食感などいろんな形で展開することができることは強みの一つだと思います。たくさんあるいろいろな商品を、みなさんそれぞれ楽しめる。たくさんの商品の中で自分の味を探して楽しめるというのは、グミの魅力のひとつだと思います」と教えてくれた。
確かに他の菓子に比べると、グミは色や形など種類が豊富で、硬さも人によって好みが分かれる。ピカチュウのグミなどキャラクターが楽しいグミのほか、2月22日の猫の日に合わせて、11日に発売されたグミも注目されている。こうした商品展開が豊富なところは、グミの強みの一つだろう。
もうひとつ、村田社長はグミの魅力を「SNSとの高い親和性」と分析している。「自分の体験した美味しさや楽しさ、感動などを、SNSで出しやすいのもグミならではの特徴です。いろんな珍しい味をSNSでアップして、それが話題になっていました。商品の情報がSNSで伝わりやすいのです。
さらに、SNSで見た商品を実際にその商品を買って、食べてみたらどうだった、というような、自分の体験をさらにアップして、どんどん人から人へと拡散させることができる。ムーブメント作りやすい商品の一つであることは確かです」と言う。
お菓子だけど、ごはんの代わりに
もうひとつ、村田社長は「グミは空腹感を紛らわすことができるお菓子のひとつ」として利用されている点も評価している。仕事中や外出先で、ちょっと小腹が空いたときに食べるのに最適なお菓子は他にあまりないと言う。
「コロナ禍で在宅勤務などが増え、家の中で仕事をしながらちょっとお腹が空いた時、食べてみたら、腹持ちが良かった。そうしたお客様の声は多いです」と言う。
確かに空腹を簡単に満たした上で、食事に影響を与えない菓子類は少ない。クッキーやチョコレートを食べてしまうと、食事の量に影響するし、子どもは特にお菓子でお腹がいっぱいになってしまう。また、グミは携帯に便利で、移動中でも食べる場所を選ばない。口寂しいときに口に入れるとすぐに満足できる。小さいけれど、空腹感を紛らわせることができる、便利なお菓子でもあった。
グミの今後については「いろいろ模索中ですが、原料として動物性のコラーゲンを使用している商品が多いので、今後は植物性の原料で、今のグミと同じような食感が出せるものが求められている」と教えてくれた。
植物性のグミならば、いろいろな理由で動物性の食物が摂取できない人も食べることができる。海外での展開も、より容易になるかもしれない。カンロでは事業領域の拡大を今後の課題のひとつに掲げ、特に今年から米国に拠点を新設して、本格的なグローバル展開を行っていく計画を打ち出した。輸出のための生産設備も確立中で、現在、長野県内の朝日工場に約130億円を投資してグミの製造ラインを増設予定である。日本の飴とグミが世界を制する日がくるかもしれない。
文/柿川鮎子