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ハリウッドサインやホワイトハウスにも採用された世界最大の塗料メーカー「シャーウィン・ウィリアムズ」の歴史と将来性

2025.02.12

直近の株価動向と財務状況

【株価パフォーマンス】

SWはニューヨーク証券取引所(NYSE)にティッカーシンボル「SHW」として上場しています。株価は長期的に見ると、過去10年以上にわたり堅調な右肩上がりの傾向を示してきました。リーマンショック時に株価が落ち込んだ局面はあったものの、業績とともに見事に回復し、その後は多くの投資家にとって魅力的な銘柄となっています。

• バルスパー買収前後

2017年に大型買収が完了し、その後一時的に財務指標の変動がありましたが、市場の見方は総じてポジティブ。世界シェアの拡大を評価する声が大きく、株価は買収後も概ね上昇傾向を維持してきました。

• コロナ禍以降の動向

2020年以降は世界的なサプライチェーン混乱や原材料価格の上昇により、塗料業界全体にもマイナス材料がありました。しかし、住宅リフォーム需要の拡大や経済回復の流れもあって、SWの株価は急落することなく踏みとどまり、堅調に推移しました。直近では住宅関連のDIY需要や企業の設備投資が底打ちしつつあるとの観測もあり、引き続き塗料需要は堅調と見られています。

2024~2025年にかけては、世界的な景気の減速感が警戒されるものの、塗料業界はインフラ整備や住宅リフォームなどの内需的な需要に支えられ、相対的には好調さを維持する可能性が高いと予測されています。

【財務指標と収益性】

SWの決算を概観すると、売上高・純利益ともに長期的に成長傾向を描いています。バルスパー買収後の統合効果やシナジーもあり、収益性は高い水準をキープ。

• 売上高

2022~24年時点で約220~230億ドル程度(※年によって変動あり)を推移しており、バルスパー買収前と比べると大きくスケールアップしています。

• 純利益率・営業利益率

塗料業界は競合企業が多く、また原材料価格の影響を受けやすいものの、SWは業界内でも比較的高い利益率を維持しています。営業利益率は10~15%程度を推移する年が多く、これは化学セクターの中では優秀な部類に入ります。

【配当実績と自社株買い】

SWは米国企業らしく、連続増配銘柄としても知られています。すでに40年以上にわたって増配を続けており、これはいわゆる「配当貴族(Dividend Aristocrats)」に名を連ねる企業の一つです。また自社株買いプログラムも積極的に行っており、株主価値向上のための施策をバランスよく展開しています。大きな設備投資や買収が行われる年度は自社株買い規模が抑えられる場合もあるものの、利益余剰が出た年には自社株買いを通じてEPS(1株当たり利益)を高め、株主還元策を多様化させることが多いです。

業界内での立ち位置と競合

世界の塗料業界では、SWのほかにもPPGインダストリーズやアクゾノーベル(オランダ)、日本ペイントといった巨大企業が存在します。その中でもSWは北米市場での圧倒的な知名度とシェアを武器に、グローバル展開を進めています。

• PPGインダストリーズ

航空機や自動車塗装などの分野で強く、SWと並ぶ米国大手の一角。業績はSHWを下回るものの、ともに世界の塗料市場を牽引する存在です。

• アクゾノーベル

ヨーロッパを拠点に世界展開する化学大手で、塗料分野ではデュラックス(Dulux)やインターラックス(Interlux)などのブランドを持っています。地域によって強さに差はあるものの、SWと競合する場面は多々あります。

• 日本ペイント

アジアで強いプレゼンスを発揮。特に自動車塗料分野では世界トップクラスのシェアを持ち、トヨタをはじめ日本の自動車メーカー向けに大きな強みを持っています。

SWはこうした強力なライバルたちと競合するなかでも、特に北米市場を中心とした直営店の販売網や、バルスパー買収によるラインアップ拡充で一歩リードしていると言えるでしょう。

今後の課題と注目ポイント

【原材料価格やサプライチェーン】

塗料の主要原材料には石油由来の化学品や顔料などが含まれます。原油価格の変動やサプライチェーンの混乱が続く中、SWのコスト構造がどのように変化していくかは注目ポイントです。コスト増を価格転嫁できるかどうかが、利益率の維持に関わってきます。

【環境規制とグリーンテクノロジー】

世界的に環境規制が厳しくなる中、塗料にも低VOCや水性化など、環境負荷を低減する技術開発が求められています。SWはすでに持続可能な塗料の開発に力を入れており、エコ商品ラインを充実させていますが、今後も環境対応製品の投入が市場での優位性を決める重要なファクターとなるでしょう。

【M&A戦略】

SWはこれまでも買収を通じてシェアを拡大してきました。今後も新興市場や特定のニッチ分野(自動車補修塗料や特殊用途塗料など)で、さらなるM&Aの可能性があります。グローバルでのプレゼンス拡大を狙う上で、企業規模をさらに拡大する動きは続くかもしれません。

【住宅市況やインフラ投資の影響】

アメリカ国内の住宅市場は、金利や景気に左右されやすいものの、人口増加やリフォーム需要によって底堅い需要が見込まれています。また、インフラ投資や公共工事などの予算が拡充される局面では、橋梁や道路関連の塗装需要が高まり、SWの業績を押し上げる可能性があります。逆に金利上昇や景気後退で住宅着工件数が減少すると、塗料需要が減るリスクもあり、ここはマクロ経済と直結しやすいセクター特性だと言えます。

まとめ

シャーウィン・ウィリアムズは、150年以上の歴史を持ち、バルスパー買収などを通じて世界最大の塗料メーカーへと成長してきました。ハリウッドサインやホワイトハウスに採用される塗料ブランドとしての知名度や信頼性は抜群で、業界トップクラスの研究開発体制と販売ネットワークを構築しています。

米国の住宅市場や工業塗装需要に支えられ、株価は長期的に見ても好調であり、連続増配という株主還元姿勢も魅力的です。塗料業界の参入障壁は高く、安定的なキャッシュフローを生み出しやすいセクターでもあるため、長期保有銘柄として検討する投資家は少なくありません。

一方で、原材料価格や世界的な景気後退リスクなど、決して楽観視できない要素も存在します。高値圏にある株価水準や、環境規制強化への対応などの課題は今後も注目されるでしょう。とはいえ、世界規模で見ても先行者優位を持ち、かつDIYから産業用まで幅広い顧客基盤を持つSWは、今後も塗料市場をリードする存在であり続けることが期待されています。

塗料というと、日常生活の中では地味に思えるかもしれませんが、こうした企業が支えるからこそ、美しい景観や快適な住環境が維持されているのです。ハリウッドサインが映し出す煌びやかな看板の裏側や、ホワイトハウスが醸し出す重厚感の陰には、シャーウィン・ウィリアムズの長年の技術と挑戦が詰まっています。今後も同社の動向には大いに注目していきたいところです。

文/鈴木林太郎

【参考文献】
https://www.sherwin-williams.com/
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-21/O4E0866JTSEO01
https://www.bloomberg.co.jp/quote/SHW:US

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