ハリウッドサインやホワイトハウスで使用されている塗料と聞くだけで、「なんだかすごい会社なのでは?」と思われる方も多いかもしれません。
その塗料こそが、世界最大の塗料メーカーとして知られる「シャーウィン・ウィリアムズ(Sherwin-Williams)」が手がけるものです。今回は、このシャーウィン・ウィリアムズの歴史やビジネスモデル、さらには株価動向や配当に至るまで、深堀りして解説していきます。
米国企業深堀シリーズ「シャーウィン・ウィリアムズ」
シャーウィン・ウィリアムズ(以下、SWと略)は、アメリカ合衆国のオハイオ州クリーブランドに本社を置く大手塗料メーカーです。創業は1866年。およそ150年以上の歴史を誇り、建築用塗料から工業用塗料まで幅広い分野で世界トップクラスのシェアを誇っています。
【創業の背景】
19世紀半ばのアメリカでは急速な都市化と工業化が進んでいました。当時、塗料業界は品質がまばらで、製造過程も職人任せのところが多かったため、安定したクオリティの塗料を供給できる企業は限られていました。そこに参入したのがSWです。20世紀に入ると、自動車産業の発展や建築ブームに伴い塗料の需要は爆発的に増加。SWはその需要を的確につかみ、アメリカ国内のみならず海外にも進出を進めていきました。また、R&D(研究開発)投資を積極的に行い、塗装の耐候性や発色、乾燥速度などの技術革新をリードしました。
現在では、アメリカのみならず欧州やアジア、南米など世界各地に工場や販売拠点を構えています。2017年には大型買収としてライバル企業であるバルスパー(Valspar)を約113億ドルで買収し、世界最大級の塗料会社としての地位を確固たるものにしました。
ハリウッドサインやホワイトハウスに採用される理由
SWの塗料は、アメリカを代表するランドマークにも数多く採用されています。ロサンゼルスのハリウッドサイン、そしてホワイトハウスの白色などは、その象徴的な存在です。採用される理由としては、以下のような特徴が挙げられます。
【高い耐候性と耐久性】
露出が激しい屋外の看板や歴史的建造物には、雨風、紫外線などの環境負荷に耐えられる高耐久の塗料が不可欠です。SWは長年の研究開発の成果として、褪色しにくく、ひび割れや剥離が起きにくい高性能な塗料をラインアップしています。
【ブランド力と信頼性】
歴史あるランドマークは維持管理に慎重にならざるを得ません。長く使われる塗料の品質保証は重要な課題です。その点、長い歴史とグローバルな実績を持つSWへの信頼は非常に高く、結果として多くのランドマークに採用されています。
参入障壁の高さとSWのビジネスモデル
塗料業界には、いくつかの高い参入障壁があります。
【研究開発コスト】
耐候性や特殊な色合い、環境対応など、塗料の開発には多額のR&D投資が必要です。大手企業は長年にわたり研究を積み重ねることで、特許やノウハウを蓄積してきました。
【規制対応】
VOC(揮発性有機化合物)など環境規制が世界各国で強化されており、これに対応した安全性・環境負荷の低い塗料を開発・提供する必要があります。新規参入企業がこれらのハードルを一気にクリアするのは容易ではありません。
【ブランドと流通網】
大手塗料メーカーは、建設会社や工場などの法人向けから個人向けホームセンター、専門店まで幅広い流通チャネルを構築しています。SWは全米のみならず世界各地で自社店舗や取扱店を持ち、圧倒的な販売・流通ネットワークを築いています。
【SWのビジネスモデル】
SWのビジネスモデルは、BtoBとBtoC両方を強力にカバーしている点が大きな特徴です。一般的な家の外壁や内装向けの塗料から、巨大工場の塗装ライン用、航空・自動車産業向けの工業塗料まで非常に幅広い製品をそろえています。