![](https://dime.jp/wp-content/uploads/2025/02/539da26e3a74a165983542c1ce139510-770x536.jpg)
ユニクロで人材育成の責任者をしていた宇佐美潤祐さんは、ユニクロの強みは「仕組み化」にあると言う。柳井社長のもと経営改革と人材育成を行なってきた経験からユニクロのすごさは「仕組み化」にあると見抜いた。宇佐美さんだからこそ知りえたユニクロの強さについて、解説してもらおう。
ユニクロのすごさをもう一度確認
ユニクロすなわちファーストリテイリングがすごい会社だと言うのは何となく感覚的に知っていても、実際にどこがどうすごいのか、改めて問いただすと答えられない人は多いはず。宇佐美さんは新刊書「ユニクロの仕組み化」(SBクリエイティブ発刊、定価1870円)で、そのすごさを「企業価値創出力の高さ」だと解説してくれた。
「日本の時価総額トップテン企業の時価総額とPBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)、 ROE(Return On Equity:自己資本利益率)、PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)、を比較してみよう。ファーストリテイリングは時価総額14.5兆円で第7位となっている(図表1)。
PBRは時価総額÷純資産額で算出され、株価がひと株当たり純資産の何倍まで買われているかを見る投資尺度である。現在の株価が企業の資産価値に対して割高あるいは割安かを判断する目安として利用されており、これが1倍を切っていると、今会社を解散する方が株主にとってメリットがあるということになる。 PBRは1倍をどれだけ越しているかが重要で、この表を見ても上位10社のうち、突出して高いのが見て取れる。
ROEは自己資産利益率で当期純利益÷純資産額で算出され、足元の収益率・資本効率の指標になる数字である。一般的に日本企業はROE 8%を目指すべきだと言われているが、ファーストリテイリングはこれが17.51%と抜きん出ている。
図表のトップテンに入っている企業は、ROEはそこそこ高いのに、PERが低く、将来の成長期待が低いということがわかる。つまり企業価値創出の効率性で言えば、日本で時価総額トップテンの企業の中でもナンバーワン企業だと言えるのだ。
最近はユニクロの企業価値創出力ナンバーワンを物語るエピソードして、ユニクロは日経平均を最も動かす銘柄である言われている。日経平均がユニクロ平均と呼ばれている。ちなみに日経平均への寄与度トップ5企業は、1位ファーストリテイリング、2位東京エレクトロン、3位アドバンテスト、4位ソフトバンクグループ、5位信越化学工業の順になっている。
ユニクロのすごさの裏にある「仕組み化」とは
数字だけ見てもファーストリテイリングはすごかった。その理由だが、「トップの柳井正氏のカリスマ性によるもの」だと考えている人は、多いはず。しかし実際、柳井さんに仕えていた宇佐美さんによると、強烈なカリスマによるトップダウンだけではなかった。ユニクロのすごさは特定の人に頼らない仕組みをつくって、事業を回す、すなわち「仕組み化」にあると見抜いたのである。
この仕組み化は、単に生産性を上げるための仕組みだけではなく、イノベーションを促す仕組みに及んでいる点が他の企業と異なる点の一つだと宇佐美さんは分析した。イノベーションを促す仕組みとはすなわち「意識を高める仕組み」や「成長を促す仕組み」でもある。その点が他の企業との大きな違いになっていると、宇佐美さんは言う。
さらに、特にこの仕組み化の根幹となる基本戦略である「グローバルワン・全員経営」の仕組みがユニクロの強さの秘訣にあると、宇佐美さんは新刊書「ユニクロの仕組み化」で書いている。
「ユニクロの社員、特にリーダーに求められるのは変革と創造です。変革とは永遠に仕組みを変えることで、創造とは仕組みをゼロから作ることです。日本の企業では既存の仕組みを効率よく回すことが評価されがちですが、ユニクロではそんな過去の延長を回すことは、評価されないのです」と解説している。
確かに、大きな成長を遂げようと思ったら、組織のメンバー全員に(仕事のやり方や意識を)変わってもらう必要があるだろう。簡単なことではない。自分が所属している部署やプロジェクトチームの5人、10人を変えるのも大変なのに、企業全体の改革となれば、困難は計り知れない。
熱意で変えようと思っても、メンバーひとりひとりに訴えかけるのは現実的ではない。つまり、企業において、人は熱意だけでは変えられず、仕組みしか企業を変えられないと、宇佐美さんは見抜いたのである。
新刊書ではユニクロの仕組み化を1)生産性を上げる仕組み、2)意識を高め、次世代リーダーを育成する仕組み、3)イノベーションを促す仕組み、4)経営スピードを高める仕組み、の4つに分けて紹介している。ユニクロのように仕組みを日々新たにしながら一人一人が経営マインドをもって仕事をするためにどうすればよいのか、ビジネスパーソンが取り入れることができそうな「改革する力」を取り上げたい。