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ブックオフがカザフスタンで出店を重ねる理由は?海外事業が好調なリユース王者の経営戦略

2025.02.07

ブックオフグループホールディングスの業績が堅調に推移しています。

書籍からアパレル、楽器、アウトドア用品などを総合的に扱うBOOKOFF SUPER BAZAARの出店が奏功。インフレを背景とした中古市場の盛り上がりや、トレーディングカードブームの追い風もあってコロナ禍以降は増収、営業増益を重ねています。

一方、意外と知られていないのが海外事業の好調ぶり。特にカザフスタンでの出店を重ねています。そこには巧みな市場開拓とビジネススキームが隠されています。

ブックオフ海外攻略の要となるJalan Jalan Japanとは?

ブックオフの20246-11月の売上高は前年同期間比7.3%増の568億円、営業利益は1.4倍の15億円でした。今期は通期の売上高を前期比7.5%増の1200億円、営業利益を同14.7%増の35億円と予想しています。予想通りで着地をすれば、3期連続の増収、営業増益です。

稼ぐ力も強まっており、2%程度だった営業利益率は3%付近まで上昇しました。足元の好調ぶりがうかがえます。

20246-11月の海外事業の売上高は1.3倍となる29億円。1.4%の営業増益でした。

20245月期の海外事業の売上高は前期比15.4%増の47億円、営業利益は同14.7%増の7億円。ホールディングス全体で見ると規模は小さいものの、着実に育っている印象を受けます。

売上増を支えているのが、マレーシアとカザフスタンに出店している「Jalan Jalan Japan」。特にカザフスタンの出店スピードが速く、20244-9月で4店舗をオープンしました。

Jalan Jalan Japan2016年にマレーシアで1号店をオープンしたブランド。国内のブックオフとは異なり、雑貨やおもちゃ、アパレル、アウトドア用品などを扱う総合リユースショップです。

ブックオフは海外事業を成長期待事業に位置づけており、Jalan Jalan Japan20285月期に50店舗、20335月期に100店舗まで増やす方針を掲げています。出店余地は十分にあると見ているのです。

ブックオフの巧みなビジネス戦略とは?

このJalan Jalan Japanは単なるリユースショップではありません。中古市場のリーディングカンパニーであるブックオフならではの役割があります。それが、余剰在庫の出口戦略。

ブックオフは国内チェーンの年間買取点数が39470万点ある一方、販売点数は26778万点。12000万点以上が在庫として残ってしまう計算です。

売れ残った商品はリサイクルして資源化に努めているものの、廃棄処分となるものも少なくありませんでした。そこで、Jalan Jalan Japanを開発。高品質な日本の製品を手軽に販売する場を設けたのです。

Jalan Jalanとはマレー語で「ぶらぶらする」という日常句。店舗名には、日本から輸入した中古品を宝探し感覚で楽しむという意味が込められています。

2023年はレジ通過ベースで170万人が利用。360トンの品々を廃棄することなく、提供することができました。

すなわち、Jalan Jalan Japanは余剰在庫を解消して業績に寄与するだけでなく、廃棄物を削減するという社会貢献の色合いも強いビジネスなのです。

ブックオフにモノを売りに行った人の中には、「これを使う人がいるのだろうか?」と感じたことがあるかもしれません。例えば、使い古したスキー板、スノーボードのようなものです。

カザフスタン最大の都市アルマトイは、札幌とほぼ同緯度。アルマトイ周辺で最も人気の観光地であるメデウから数キロ離れた場所には有名なスキー場があります。カザフスタンは、ウィンタースポーツが盛んなのです。

カザフスタンのJalan Jalan Japanでは、スキーやスノーボードなどのスポーツ用品がよく売れているといいます。日本で買い取ったウィンタースポーツ用品の多くは、カザフスタンで販売されているかもしれません。

カザフスタンとマレーシアで季節性のリスクを排除したか?

ブックオフは2022年から、加盟店として2店舗をカザフスタンに出店しました。カザフスタンは外洋と接していない内陸国で、港はカスピ海沿岸の2港のみ。外国との物流は主に陸路輸送となっています。運輸業者は2000社。中小零細企業が9割を占めており、大手一極集中化が進んでいません。

地理的特徴と物流面でのハードルが高いため、日本の商品の流通量が少ないという特徴があります。日本の中古品は品質が高く、取扱量が多いブックオフはそれを安価で販売することができます。競争優位性が高いことに着目し、ブックオフは2024年に合弁会社設立へと踏み切りました。

今期のカザフスタンにおける出店スピードが速まったのは、合弁会社設立の影響が大きいでしょう。物流コストを中心に考えた場合、店舗数が多いことはメリットになります。カザフスタンは100店舗展開の主要エリアの一つとなりそうです。

一方、1号店を出店したマレーシアの開拓も着実に進めています。20249月にアパレル専門店「Jalan Jalan Japan Apparel The Mines Mall 店」をオープンしました。首都クアラルンプール郊外にあるショッピングモール内の店舗で、常時33000点を取りそろえる大型店。

興味深いのは、温暖な地域のマレーシアと、寒冷地のカザフスタンという相反するエリアで市場開拓を進めていること。これにより、夏物はマレーシア、冬物はカザフスタンという商品カテゴリーの明確な切り分けができます。日本のように四季がある地域では、在庫調整の難しさが出るはず。それを極力排除しているように見えます。

リユース市場は、フリマアプリの台頭で実店舗の勢いが失われると言われた時期がありました。しかし、リユースショップは宝探し感覚のエンタメとして消費するという別の強みを持つに至り、強力な存在感を放つようになっています。

Jalan Jalan Japanはそれを体現するブランドの一つであり、ブックオフという企業が抱えていた課題を解決する役割も担っています。

文/不破聡

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