
企業全体の状況を体系的に調査することで、ビジネスや業界を変革する可能性が高いテクノロジー・トレンドを特定してきたアクセンチュアの「テクノロジービジョン」。
その25回目となる最新版「アクセンチュア テクノロジービジョン2025」が発表されたので、同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
AIの自律性によって切り拓かれる未来を調査
25年目を迎えたアクセンチュア テクノロジービジョン2025では、AIの自律性によって切り拓かれる未来を調査した。企業や社会におけるAIの普及速度は目覚ましく、過去のあらゆるテクノロジーより最も早く普及している。
経営幹部の69%は自社システムとプロセス設計、構築、運用方法や、組織の再創造が急務だと考えている。
この調査はまた、AIが技術開発パートナーやブランドの個別アンバサダーとして機能したり、物理世界のロボットを動かしたりすることで、人とAIとの新たな関係を育み、良い相互関係を構築する動きが強まるだろうと予測している。
AIによるポジティブな影響を広げていくためには、AIに対する信頼が不可欠だ。すなわち、技術的な側面の裏でAIが公正かつ期待通りに機能するという信頼が求められる。
AIの責任ある活用のみならず、デジタルを活用するシステムとAIモデルがより正確で予測可能であること、一貫性があり追跡可能であることが肝要だ。
今回の調査で経営幹部の77%が、AIの真の利点は信頼の基盤があって初めてもたらされると考えており、さらに81%の経営幹部は、この信頼戦略はあらゆるテクノロジー戦略と並行して進化しなければならないと考えていることがわかった。
生成AIが技術開発、顧客体験、物理世界、労働力など多岐にわたる潜在的な影響を解説
■生成AIを活用したソフトウエア開発とAIエージェントの進歩によりカスタムシステムが台頭
基盤モデルが自然言語の障壁を乗り越えたとき、ソフトウエア開発とエコシステムの根幹を変える変化が起きた。すでに生成AIのコーディングアシスタントは開発者の役割をシステムエンジニアへと高め、コードの民主化とビジネスのデジタル化を加速させている。
生成AIを活用したソフトウエア開発とAIエージェントの進歩により、カスタムシステムが台頭し、静的なアプリケーションアーキテクチャから意図に基づくフレームワークとエージェントシステムへの移行が進んでいる。
マルチエージェントシステムが、より高い性能や適応力をもって個人に最適化されるようになれば、例えば効率的な旅程の策定から在庫の最適化まで、処理能力の向上によってプロセスや機能全体を管理できるようになり、さらなる普及拡大につながるだろう。
アクセンチュアでは、専門的なマルチエージェントシステムを構築して、価値を生み出すまでの時間を短縮するため、GenWizard、SynOps、AI Refineryといった構築済みの業界別エージェントとワークフローを提供することで、この未来を実現している。
■AI体験にも焦点を当てなければ、ブランドの差別化が不可能
企業はAIを顧客との新しい接点にすべく競っているが、AI体験にも焦点を当てなければ、ブランドの差別化を図ることはできない。
80%の経営幹部は、LLM(大規模言語モデル)やチャットボットを使用することで、ブランドの独自性を薄め、類似した情報発信につながる可能性を懸念していまる。
一方で77%の経営幹部は、擬人化されたAIを構築し、その体験にブランド独自の文化、価値観、メッセージを組み込むことで、この問題を解決できると考えている。
■今後10年で汎用ロボットが登場、より多くのAIの自律性を物理世界にもたらす
汎用ロボットが今後10年で登場し、より多くのAIの自律性を物理世界にもたらすだろう。また、導入時には汎用ロボットだったものが素早く新しいタスクを学習し、専門的なロボットへと成長すると考えられる。
すでに、KIONグループはアクセンチュア、NVIDIAと提携して、AI駆動型のロボットが倉庫業務を最適化。倉庫スタッフとシームレスに連携して学習することで、より迅速、安全かつ低コストに注文を履行できるようになっている。
80%の経営幹部は、ロボットが人と協働しながら継続的に学習することで、人とロボットとの間に信頼とさらなる協力関係が生まれると考えている。
■多くの人がAIを使用すればするほどAIは改善され、人々はさらに活用したくなる
人とAIの間に、好循環の学習サイクルが形成され始めている。多くの人がAIを使用すればするほどAIは改善され、その結果、人々はさらに活用したくなる。
従来の自動化とは異なり、このAI新時代では、一度限りの利益にとどまらず、AIのスキルを向上させ、個人や組織全体にとっての価値を高めることができる。
経営幹部にとって重要な優先事項として、80%が人とAIの間でポジティブな関係を確保することを挙げている。自動化に対する猜疑心がその進展を妨げないようにするためには、まず従業員に戦略を伝え、彼らをプロセスに巻き込むことが必要だ。
アクセンチュアは先日、スタンフォード・オンラインとの提携により、顧客が生成AIに関する知識とスキルを磨くための生成AI学習プログラムを発表した。
加えて、企業はすべての従業員に優秀なデジタルアシスタントを提供することで、従業員に新たなスキルを習得させ、生成AIツールの活用の幅を広げることが可能になる。
生成AIの活用に長けている人は、生成AIに対する好意的な認識を持つ可能性が5倍高く、結果として組織もその恩恵を受けることにつながる。
<アクセンチュア テクノロジービジョンについて>
アクセンチュアのテクノロジービジョンは、25年間にわたって、企業全体の状況を体系的に調査。ビジネスや業界を変革する可能性が高いテクノロジー・トレンドを特定してきた。2025年のレポートでは、学界、ビジネス界および公共部門にまたがる20数名の専門家からなる外部アドバイザリーボードから知見を収集している。また、2024年10月から12月にかけて世界28か国で実施された、21業界の4000人以上の経営幹部と、1万2000人以上の消費者を対象とした調査も含まれている。
・詳細はこちらから
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/technology/technology-trends-2025
関連情報
https://www.accenture.com/jp-ja
構成/清水眞希