帝国データバンクは、2024年に発生した「コンプライアンス違反倒産」(※)について調査・分析を実施。結果をグラフと図表にまとめて発表した。
※ 「コンプライアンス違反」は、意図的な法令違反や社会規範・倫理に反する行為などを指す。こうした、コンプライアンス違反が取材により判明した企業の倒産を「コンプライアンス違反倒産(コンプラ違反倒産)」(法的整理のみ、負債1000万円以上)と定義。同一企業に複数のコンプライアンス違反がある場合は、主な違反行為で分類
2024年のコンプラ違反倒産、過去最多の388件
2024年の「コンプライアンス違反倒産」は388件となり、2023年を37件(10.5%増)上回った。3年連続で前年比増となり、2年連続で300件を超え、過去最多を記録した。
業種別(大分類)にみると、「サービス業」が122件(構成比31.4%)で最も多く、「建設業」が68件(同17.5%)、「小売業」が54件(同13.9%)と続いた。
また、中分類でみると、主に広告代理業者やソフトウェア業者等が含まれる「広告・調査・情報サービス業」(50件)が最多で、次いで道路旅客運送業者や道路貨物運送業者などの「運輸業」(38件)、老人福祉事業者や産業廃棄物処分業者などが含まれる「その他のサービス業」(33件)となっている。
■「粉飾」倒産、3年連続増加で過去最多の95件
違反類型別にみると、「粉飾」が95件(構成比24.5%)で最も多く、2019年の84件を上回り、過去最多となった。2020年に始まったゼロゼロ融資など各種支援策の活用が粉飾を糊塗する形となり、表面化しづらい状況が続いていたが、返済期限到来のタイミングで発覚するケースが目立ち、増加傾向で推移している。
加えて、粉飾決算による倒産企業の負債規模は大型化しており、金融機関をはじめとする多くの取引先を巻き込む倒産が発生している。
次いで、労働安全衛生法違反や指定取消などの「業法違反」は72件(同18.6%)となった。その内、26件は「運輸業」で国土交通省の行政処分等の公表により問題の表面化が進んでいる。
資金流出や横領といった「資金使途不正」は70件(同18.0%)で、ルシアンホールディングス(東京)やANEW Holdings(東京)といった不透明なM&Aが行なわれ資金流出した複数企業が倒産した。
また、コロナ禍の雇用調整助成金など各種補助金の「不正受給」(49件、同12.6%)は、2022年以降急増し、2年連続で過去最多となった。
2024年の全国企業倒産件数は9901件(前年比16.5%増)となり増加傾向で推移するなか、コンプラ違反倒産も3年連続で前年を上回り、倒産全体の約4%を占めた。
従業員が故意に車両を傷つけるなど過剰な営業活動によって事業を譲渡し、2024年12月に民事再生法の適用を申請したBALM〈旧商号:ビッグモーター、東京〉のように、コンプライアンス違反に対する社会の目は厳しくなっている。
コンプラ違反の発覚は信用失墜につながり、取引先や消費者の離反を招いて倒産リスクが一気に高まる。2025年に入ってもなおコンプラ違反倒産が散見されており、引き続き増加傾向で推移すると考えられる。
関連情報
https://www.tdb.co.jp/index.html
構成/清水眞希