M&A仲介サービスを展開するM&Aキャピタルパートナーズは、病院・クリニックの経営・運営を行っている経営者・役員・医療従事者を対象に、2024年「診療報酬改定」に関する意識調査を実施。結果をグラフにまとめて発表した。
医療機関の約6割が先行きに期待
「Q1.お勤め先の先行きについて、どのように感じていますか」(n=104)と質問したところ、「とても良い」が20.1%、「やや良い」が35.6%という回答結果となった。
■「先行きが良い」のは「コロナ禍を過ぎて回復基調にあるから」
Q1で「わからない」以外を回答した人に、「Q2.Q1で選択肢を選んだ理由について、具体的なエピソードを交えて教えてください(自由回答)」(n=98)と質問したところ、「コロナ禍を過ぎて回復基調にあるから」や「資金繰りが厳しい」など78の回答が寄せられた。
■64.5%が診療報酬改定により「経営課題が増加」
「Q3.今回の令和6年度診療報酬改定により、経営課題は増加しましたか」(n=104)と質問したところ、「非常に増加した」が19.3%、「やや増加した」が45.2%という回答となった。
診療報酬改定後の経営課題「人員配置基準の見直しに伴う人件費増加」が46.3%で最多
Q3で「非常に増加した」「やや増加した」と回答した人に、「Q4.前回の診療報酬改定後から増加した課題を教えてください(複数回答)」(n=67)と質問したところ、「人員配置基準の見直しに伴う人件費増加」が46.3%、「施設基準の要件厳格化への対応」が40.3%、「医師の時間外労働規制対応に伴うコスト増加」が35.8%という回答が得られた。
■半数以上の医療機関が、「医師・看護師の人材確保」を課題視
「Q5.現在の経営課題を教えてください(複数回答)」(n=104)と質問したところ、「医療従事者(ドクター)の人材確保」が53.8%、「医療従事者(看護師)の人材確保」が50.0%、「医療機器や薬品などコストの上昇」が40.4%という結果になった。
■53.8%が事業承継を「検討している」
「Q6.事業承継について、検討を始めている、もしくは方向性が決まっていますか」(n=104)と質問したところ、「はい」が53.8%、「いいえ」が33.7%という回答結果になった。
■事業承継検討の背景、「事業を継ぐ家族がいないから」や「設備投資の必要性を感じているから」が上位
Q6で「はい」と回答した人に、「Q7.検討を開始した理由、きっかけを教えてください(複数回答)」(n=56)と質問したところ、「事業を継ぐ家族がいないから」が42.9%、「設備投資の必要性を感じているから」が37.5%、「自身の高齢化・健康面から」が35.7%という回答順となった。
4割以上が、M&Aを経験した医療法人の経営者が「周囲にいる」
「Q8.ご自身の周りで実際に「第三者承継」であるM&Aを経験された医療法人の経営者はいますか」(n=104)と質問したところ、「はい」が42.3%、「いいえ」が57.7%という回答が得られた。
■持続可能な医療提供体制の構築に必要な対策として、「病院間などとの業務提携や協力体制の整備」など
「Q9.あなたは、医療法人が永続的に存続していくためにどのような対策をしていくべきだと思いますか(複数回答)」(n=104)と質問したところ、「病院間などとの業務提携や協力体制の整備」が47.1%、「地域と患者のニーズを考慮した医療の提供」が47.1%、「M&Aなどパートナーシップによる経営基盤の強化」が33.7%だった。
■51.9%の医療機関が、M&Aを事業承継や事業成長の選択肢の一つとして「検討する」と回答
「Q10.今後、あなたはM&Aによる事業承継や事業成長の選択肢の一つとしてM&Aを検討しますか」(n=104)と質問したところ、「検討する」が51.9%、「検討しない」が25.0%となった。
調査結果まとめ
<M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長 松井 聡 氏>
今回は、病院・クリニックの経営・運営を行っている経営者・役員・医療従事者104名を対象に、2024年「診療報酬改定」に関する意識調査を実施しました。
医療機関の6割以上が先行きに期待を抱いており、2024年診療報酬改定により64.5%が「経営課題が増加した」と回答しました。具体的には「人員配置基準の見直しによる人件費増加」が46.3%で最多となっており、現在の経営課題として、「医師の人材確保」(53.8%)、「看護師の人材確保」(50.0%)が上位に挙げられています。
さらに、事業承継については53.8%が「検討している」と答え、その理由として「事業を継ぐ家族がいない」(42.9%)や「設備投資の必要性を感じている」(37.5%)などの病院・クリニックの事業承継課題についても課題が浮き彫りになりました。
また、持続可能な医療法人運営のために「病院間の業務提携や協力体制の整備」と「地域と患者のニーズを考慮した医療提供」が47.1%で最も多く支持されています。
最後に、51.9%がM&Aを「事業承継や事業成長の選択肢として検討する」と回答しました。
2024年4月の診療報酬改定は、6年に1度の医療・介護・障害福祉サービスのトリプル改定となりました。診療報酬改定において在宅医療、地域包括ケアに加え、ICTの活用などの評価が引き上げられています。
看護職員の配置基準見直しなど働き方改革の推進についても重要視されており、病院・クリニックは対応を求められています。
また人件費や医療機器、薬品などコスト上昇や施設の老朽化による設備投資なども課題となっており、さらに経営者の高齢化による後継者不在も顕在化するなど、多くの医療法人が事業承継問題も抱えています。
医療機関はこれらの経営課題を解決していかなくては、永続的な法人経営が難しくなってしまいます。
M&Aは、今後の病院・クリニックにおいて、経営課題解決の選択肢の一つとなり得ます。
今回の調査でもM&Aを活用した経営基盤の強化や事業承継については、医療業界の持続可能性を高める有効な戦略として期待されており、地域医療の充実と患者ニーズの対応力向上につながる可能性があります。
病院・クリニックの経営に携わる皆様には、是非M&Aについて情報収集から始めてみていただきたいと思います。
調査概要
調査名称/2024年「診療報酬改定」に関する意識調査
調査方法/IDEATECHが提供するリサーチデータマーケティング「リサピー」の企画によるインターネット調査
調査期間/2024年12月19日〜同年12月23日
有効回答/病院・クリニックの経営・運営を行っている経営者・役員・医療従事者104名
出典/M&Aキャピタルパートナーズ株式会社
構成/清水眞希