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こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。
―― ヤバイ社員がいるとかで?
社員
「はい。Xさんです。鉄の棒を持って追いかけてきたんです」
―― 会社さん、Xさんに鉄槌を!
会社
「転勤命令を出したのですが、2ヶ月くらい無視してきよりました……」
というわけで、懲戒解雇されます。
Xさんは「懲戒解雇は無効だ!」と提訴。
果たして、裁判所のジャッジは?(東京地裁 R3.2.17)
以下、わかりやすく解説します。
※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化
登場人物
▼ 会社
貨物自動車運送事業、倉庫事業
▼ Xさん
A営業所で輸送業務を行う乗務員(正社員)
どんな事件か
転勤命令を出されるまでのトラブルは、以下のとおりです。
▼ Eさんとのトラブル
A営業所で起きた事件です。Xさんが自身のホースカバーの在りかについて、同じ営業所で働く別会社(以下「D社」)の社員Eさんに聞いたところ、Eさんは謝罪することなく「私が使っている」という旨を答えました。これに腹を立てたXさんは、その社員を大声で非難しました。言い合いとなり、さらに「会社に言って出入り禁止にしてやる」といった内容の発言をしました。
これを受け、Xさんは会社から「けん責処分」を受け、始末書を提出しました。
▼ 鉄の棒を持って社員を追っかける
ある日、Xさんは、トラックの停止場所をめぐってHさんと口論となりました。Hさんがその場を離れたとき、Xさんは、なんと! 作業用の鉄の棒を持ってHさんの後を追いました。血の気が多過ぎます。別の社員に止められたので、暴行事件などに発展することはなかったものの、この件で、会社はXさんに厳重注意を行いました。
▼配車担当者に不満をぶつける
Xさんは、配車についての不満を担当者に何度も述べていました。これについては、配車担当者に代わり上司がXさんに「公平に配車している」と伝えました。
▼Eさんがダウンする
はじめに紹介した“ホースカバートラブル”が発端となって、ストレスを抱えたEさんの体調が悪化しました。D社はXさんの会社に対して「Eさんが高ストレス状態となって業務遂行が困難になっている、Xさんの声を聞くだけで手が震えるというかなりまずい状況である、仮にEさんが休職するなどで欠員が発生したとしても、Xさんがいる限り要員の補充はできない」などと伝えました。
★ アンタをつぶす!
会社は、Xさんに対して勤務地を変更する配転命令(転勤命令)を出しました(A営業所→B営業所)。しかし、Xさんは命令に従わない姿勢を示し、上司2名に対して「アンタをつぶす」と発言しました。
▼無断欠勤
B営業所での初勤務の日、Xさんは欠勤しました。会社はXさんに電話をかけましたが、Xさんは「納得できないので業務命令に従わない」と答えました。それから約2か月もの間、Xさんは会社からの電話に出ず、ショートメールにも反応せず欠勤を続けました。また、会社はXさんに対して、4回も書面を郵送しましたが返答はありませんでした。
▼ 懲戒解雇
その後、会社はXさんを懲戒解雇しました。配転命令や懲戒解雇に納得できないXさんは、提訴しました。