裁判所のジャッジ
―― なにかご反論が?
Y1・Y2・会社
「はい。このチャットはXさんが日常的に他人の悪口や不平不満を述べていたことを背景としてなされたものでです。内容としても、悪口や陰口の域を超えていないでしょ」
―― 裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「シャラップ!個人の人格を傷つける内容の表現であり、過失による違法行為であるとの評価を免れない」
「会社も責任を負います(使用者責任・民法715条)仕事中になされたメッセージのやりとりであり『事業の執行について』なされたといえるからです」
――賠償額は、いかほどでしょう?
裁判所
「6万円にします」
[理由]
・このメッセージのやりとりはXさんに不快感を覚えさせるにすぎない
・このチャットはXさんが閲覧することは想定されていなかった
・うつ病との間に相当因果関係は認められない
■ 解説
悪口にもレベルがあるので、今回のケースはそこまで悪口レベルが高くないと評価されたようです。「しね!」とか書かれていたり、回数が多かったりすれば金額は上がったと思います。あとは、うつ病との因果関係が認められなかったのも金額が低くとどまった理由です。因果関係が認められれば2ケタはいくでしょう。
同僚間でもパワハラの可能性あり
現在のパワハラ防止法では、同僚間でもパワハラが成立する可能性があります。
Q. え?パワハラって上司や先輩からやられるものでは?
A.
厚生労働省指針は、以下は同僚間でもパワハラにあたるとしています。
・イジワル
〈正式文言〉
同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・2人以上からのイジメ
〈正式文言〉
同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
イジワルの例は、「仕事に必要な情報を回してこない」「その人だけが知ってるのに教えてくれない」などです。イジメの例は、今回のような「悪口」「無視」「ランチや飲み会に誘わない」などです。
▼ 裁判例
同僚イジメの裁判例を1つご紹介します。女性社員が7名の同僚女性にイジメられた事件です。イジメの概要は以下のとおりです。
・悪口を言われる
「さちうすい顔して」
「コピーの仕事なのに高い給料もらって」
「オオカミ少年」
・執拗な陰口を叩かれる
・毎日のように悪口を送信される
・顔スレスレで殴るマネをされる
女性社員はうつ病になってしまいました…。訴訟して労災を勝ちとることができました。
さいごに
今回のようなイジメは砂の数ほどあるでしょう。
今回のケースは賠償額が低かったですが、裏を返せばこのレベルの悪口でも提訴すればいくばくかの賠償を得られるということです。イジメてきた奴に法的鉄拳制裁を加えたい方はチャットを押さえたり、録音したりして証拠を確保してみてください。
今回は以上です。これからも労働関係の知恵をお届けします。またお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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内部通報した人がターゲットに!大企業で起きた「史上最悪イジメ裁判」の全貌
こんにちは。 弁護士の林 孝匡です。 宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。 今回お届けする裁判は【社内でウソをバラまかれた名誉毀損事件】です。 以下の...