
退職意思を本人に代わって会社に伝える退職代行が存在感を強めている。ストレスなく辞められる点がメリットだが、デメリットはないのだろうか。後悔しないためのポイントをまとめた。
目次
退職代行とは、退職者本人に代わって職場に退職の意志を伝えるサービスだ。会社に辞めたいと伝えるのは大なり小なりプレッシャーがかかるため、言い出しにくいと感じるビジネスパーソンの間で利用者が増えている。
ストレスを感じることなく辞められる点がメリットとなっている退職代行だが、使うことでデメリットはないのか気になる人も多いだろう。
本記事では、退職代行サービスのデメリットと、退職代行で後悔しないために心がけたいポイントについて解説する。
退職代行を利用するならデメリットも知っておこう
退職代行サービスには、辞める際の心理的負担を和らげるメリットがある。職場に苦手な上司や同僚がいる場合は、顔を合わせないで退職できるため気分的に助かる人も多いだろう。
その一方で、以下のようなデメリットがあることも知っておきたい。
■退職代行のデメリット1:退職にお金がかかる
通常、会社を辞めるにあたってお金を払う必要はないが、退職代行のほとんどは有料サービスだ。料金相場は一万円前後から十万円前後。
退職代行サービスでは、業者が持つ資格によって会社と交渉できる範囲が異なるため。交渉力を持つ退職代行サービスほど料金は高くなる傾向がある。
■退職代行のデメリット2:使われた会社との関係が悪化する
退職代行を使われた会社との関係が悪くなるのもデメリットだ。退職したあと、同じ業界内や辞めた会社と地理的に近い場所に留まらないのであれば、「会社との関係はどうなっても気にならない」という人もいるだろう。
しかし、同業種への転職や前職の営業エリア内など比較的近い場所で転職する予定がある場合は、前職での評判が次の仕事に影響する可能性もある。
■退職代行のデメリット3:再就職に響く可能性がある
一昔前とは異なり、ビジネスパーソンの転職はごく当たり前のものとなっている。会社側も社員の転職や独立を見越して様々な制度を用意しているケースが多い。たとえば、転職・独立した社員を再度受け入れる「カムバック採用」や「出戻り制度」などだ。
しかし、退職代行を利用して一方的に退職すると、当然、会社の心象は悪くなり、このような制度は利用できない。退職代行を利用したことが社外にまで伝われば、再就職先での自分の評判に響くケースもある。
■退職代行のデメリット4:問題が解決しないまま放置される
退職代行を利用したくなる背景には、コミュニケーションを取りにくい職場環境やハラスメントの横行、長時間労働といった労働問題が潜んでいるケースが多い。
しかし、退職者が意思表示をせず、退職代行サービスに手続きを一任することで、本来であれば退職者の存在と共に日が当たるべきだった問題が解決されないまま残ってしまう。
■退職代行のデメリット5:業者によって対応範囲が異なる
退職代行サービスの業者は、それぞれに保有する資格が異なる。たとえば、退職日の調整や未払い給与の支払交渉などは、会社との交渉権を持つ業者に依頼しないと法律違反に問われる可能性があるため注意が必要だ。
退職代行というサービスを聞いたことはあるだろうか。退職代行サービスとは、本人に代わって退職意思を会社に伝えてくれるサービスのことだ。使われた会社の立場になって考...
退職代行サービスには資格別に三種類ある
先述の通り、退職代行サービスは、業者が持つ資格によって会社と交渉できる範囲が異なる。現在、退職代行を手がけている業者は、主に以下の三種類だ。
■民間業者は退職の意思を伝える伝言役
民間企業が運営する退職代行サービスは、会社との交渉資格を持たない。そのため、あくまでも本人に代わって退職の意思を伝える伝言役となる。
退職したい旨を職場に言い出しにくい場合は便利だが、交渉を依頼すると法律違反に当たるため注意しよう。料金は比較的安く、一万円台から依頼できるケースもある。
■労働組合の退職代行は会社との労使交渉が可能
労働組合が運営する退職代行サービスは、団体交渉権を付与されているため、退職者本人に代わって未払い給与の請求や有給消化後の退職日の相談なども依頼できる。
ただし、会社が損害賠償請求をしてきた場合など、法的トラブルへの対応は権限外(法律違反)となる。料金は二万円台から三万円台が相場だ。
■弁護士の退職代行サービスはトラブル全般に対応できる
弁護士事務所が運営する退職代行サービスは、三種類の退職代行の中ではもっとも広範囲の交渉が可能となる。会社からの損害賠償請求などに対しても法的な対応を依頼できるため、会社とトラブルを抱えている場合は役立つだろう。
ただし、利用料金は高額で、五万円台から十万円程度かかる。
退職代行を使って後悔しないためにチェックしておきたいポイント
退職代行サービスにはメリットとデメリットの両方がある。会社との関係性によっては、使わざるを得ないケースもあるだろう。
利用を検討する場合は、使って後悔することがないよう、以下のポイントをチェックしよう。
■退職代行で後悔しないためのポイント1:業者の交渉資格やサービス内容を調べる
三種類の退職代行サービスのうち、自分のケースでは、どの程度までの交渉力が必要かを考えた上で業者に依頼しよう。違法行為は退職代行サービスにとってもリスクとなるため、会社との現在の関係性や自分自身の状況を偽りなく申告することが大切だ。
■退職代行で後悔しないためのポイント2:辞めたあとの影響を考える
退職代行サービスを利用して、その時点ではうまく退職できたとしても、業界内で噂が広まるなど自身にとって不利な影響が出るケースもある。
退職代行サービスを使って辞めたあとにどのようなことが起こりそうか、ある程度の予測を立ててから利用しよう。特に、独立を考えている場合や同業界・同業種に転職する場合は注意したい。
■退職代行で後悔しないためのポイント3:本当に使わないと退職できないかを考える
退職を言い出すのは、誰にとっても一定のプレッシャーがかかる行為だ。「退職を責められたくない」「引き止められたくない」といった心理も多くのビジネスパーソンに共通のものだろう。退職代行は、そうした心理的負担を和らげてくれるサービスと言える。
ただし、会社側は法律上、従業員からの退職の申し出を拒否することは(原則的に)できない。また、有給の消化や退職関連書類の発行も法律によって義務付けられている。
これらの法律に違反することでリスクを負うのは、むしろ会社のほうと言えるだろう。
そのため、労働基準法や雇用保険法の知識があれば、退職代行サービスをあえて利用せずとも円満退社が可能なケースは多い。退職代行に頼る前に、「本当に使わないと辞められないのか」をセルフチェックしてみよう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部