
「お大事にしてください。」は、体調不良や怪我の相手を気遣う表現だが、ビジネスや目上の人には「お大事になさってください」など丁寧な敬語が適している。状況や相手に応じた表現を使うことが大切だ。
目次
「お大事にしてください」は、体調を崩した相手への気遣いとしてよく使われるフレーズだが、ビジネスシーンではどう使えばいいか迷う人も多い。
例えば、上司や取引先などの目上に対して同じ言葉を使って良いのか、もう少し丁寧な敬語に言い換える必要があるのかなど疑問点は少なくない。
本記事では、「お大事にしてください」の基本的な意味や、ビジネスメールでの正しい使い方、英語表現、さらにさまざまな言い換えパターンをわかりやすくまとめる。
お大事にしてください。とは?意味や使われ方を簡単に解説
「お大事にしてください」は、病気や怪我をした相手に「体を労わり、早く元気になってほしい」と願いを込めて伝える表現だ。日常会話でもよく登場するが、ビジネスシーンで使う場合は注意が必要かもしれない。
例えば、上司や取引先の人に軽々しく「お大事にしてください。」と言うのは失礼なのか、それとも問題ないのかを考える必要がある。ここでは、まず「お大事に」という言葉の成り立ちや基本的な使い方を押さえておこう。
■「お大事に」の成り立ちと使われるシーン
「お大事に」の「大事」は「大切なこと」という意味であり、相手の健康や身体を大切に思う気持ちを示す言葉だ。もともとは、医療現場で、患者に対して医師や看護師が「お大事に」と声をかけるのが通例だった。
一般社会でも、友人や同僚が体調不良を訴えたとき、あるいは怪我をしたときに「お大事に」と伝えることで、「ゆっくり休んで治してね」の気持ちを表す。家族や友人間ではこのままの表現で問題ないが、相手が上司や取引先などの目上の場合は、もう一段丁寧な敬語が望まれる。
■ビジネスで使う場合の留意点
ビジネスパーソンとして上司や目上の人に声をかけるとき、「お大事にしてください」だけでは失礼になるかもしれない。より丁寧なかたちとして「お大事になさってください」や「ご自愛ください」が使われる。
ただし、相手との距離感によっては「お大事にしてください」でも違和感を覚えられない場合もある。日頃からフランクなやり取りがある上司なら、そこまで気にしなくてもいいだろう。相手が受け取る印象に配慮して、状況に応じた言葉づかいを選ぶことが大切だ。
お大事にしてください。を上司や目上に使う際のポイント
「お大事にしてください」はカジュアルな雰囲気を含むため、上司やお客様など目上の人に対して使うと、場合によっては失礼と感じられる恐れがある。
例えば、上司が体調を崩して休む場合、「お大事にしてください」とそのまま言っても構わないシチュエーションがある一方、より敬意を示したかたちを求められる場面もある。ここでは、「お大事にしてください」を使う際の注意点と、敬語に言い換える例を紹介する。
■カジュアルな「お大事に」と敬語の違い
「お大事にしてください」:親しい間柄やフランクな関係であれば問題ないが、敬意が薄く感じられる可能性もある。
「お大事になさってください」:「なさる」は「する」の尊敬語であり、さらに「~てください」をつけて丁寧さを加えている。上司や取引先などへ送るときはこちらが基本になる。
「どうかお大事になさってください」:頭に「どうか」や「くれぐれも」を添えると、より丁寧かつ誠実な印象を与える。
■「お大事になさってください」などの表現例
例えば、上司が風邪をひいて休むとき、部下としてメールや口頭で気遣いを伝えるには次のようなフレーズが考えられる。
【口頭での例】
「体調がすぐれないとのことですが、どうかお大事になさってください。少しでも早く良くなられるようお祈りしています」
【メールでの例】
「〇〇部長、体調はいかがでしょうか。どうかお大事になさってください。ご無理はなさらず、回復に専念いただければ幸いです」
これらのように、「なさる」を使った敬語表現を意識し、さらに「どうか」や「くれぐれも」などの副詞を加えると、相手へのいたわりが丁寧に伝わる。
メールや手紙での「お大事にしてください。」を使う例文集
実際にビジネスメールや手紙で「お大事にしてください。」と書く場面は多い。例えば、上司が体調不良で休暇を取ったときや、取引先の担当者が怪我でしばらく連絡できないときなどが典型的だ。
しかし、いつもの口語表現をそのまま文章にすると、ややフランクすぎる印象を与えることもある。ここでは、ビジネスの文面で使いやすい例文をいくつか挙げてみる。
■上司・先輩・取引先へ送る場合の実例
以下に、上司や先輩、取引先など目上や社外の人に宛てるときに使いやすい例文をまとめる。メールの結びや一言メッセージとして添えれば、相手への配慮を伝えられるだろう。
【上司へのメール例】
「〇〇部長、このたびはお加減が優れないとのこと、大事に至らないよう祈っております。どうかお大事になさってください」
【先輩へのメール例】
「△△先輩、体調不良と伺いました。お忙しい時期かと思いますが、くれぐれもお大事になさってください。また何かありましたらご連絡ください」
【取引先へのお見舞いメール例】
「□□株式会社 ◇◇様、いつもお世話になっております。ご体調を崩されたとのお話を伺い、大変心配しております。どうぞ無理をなさらずに、お大事になさってください」
■相手の家族や子どもなどに向けた言い回し
相手本人ではなく、その家族(特に子ども)が体調を崩した場合など、ビジネスパーソン同士のやり取りで気遣いを伝えることもある。
その場合は、「ご家族もお大事になさってください」といった文面にするのがいい。
【例文】
「お子様が高熱とのこと、さぞご心配のことと存じます。くれぐれもお大事になさってくださいませ。奥様にもよろしくお伝えください」
「ご家族の体調不良と伺いました。少しでも早く回復されるよう願っておりますので、どうかお大事になさってください」
「お大事にしてください。」を英語で伝えるには?
海外のビジネスパートナーや上司が外国人の場合など、英語で「お大事にしてください」と伝えたい場面があるかもしれない。
しかし、日本語の「お大事に」に完全に相当する英語フレーズは存在しないため、状況に応じて適切な表現を選ぶのがポイントだ。
ここでは、よく使われる英語表現や、ビジネス向けにもう少し丁寧な言い回しを紹介する。
■ビジネスメールや口頭でよく使われる表現例
・Take care.:気をつけて(親しい間柄やカジュアルなシーンに向いており、「お体に気をつけて」の意味を含む)
・Please take care of yourself.:ご自分のお体をお大事にしてください(相手を思いやる気持ちが強まり、ビジネスでも使いやすい表現)
・I hope you get well soon.:早く良くなりますように(相手がすでに体調を崩している場合に使う)
■さらに丁寧にするフレーズと注意点
よりビジネス寄りの丁寧な言い方をしたい場合は、以下のように補足できる。
・I sincerely hope you will recover soon.:心から早期のご回復をお祈り申し上げます(“sincerely”を加えることで、フォーマルな表現に)
・Please don’t hesitate to let us know if there’s anything we can do to help.:何かお手伝いできることがあれば、遠慮なくお知らせください(相手の負担を軽減する提案を含む)
日本語の「お大事にしてください」と同様、一言で済まそうとするとややフランクに聞こえることがある。ビジネスメールなら全体の文脈を踏まえ、「早期回復を祈る」「サポートしたい」という気持ちを文章に含めると丁寧さが伝わる。
お大事にしてください。の言い換え表現
「お大事にしてください」は、相手の体調を慮る気遣いの言葉だが、日本語にはこれを別の言い回しで表現できる多彩なバリエーションがある。
例えば「お大事になさってください」や「ご自愛ください」、さらには「養生なさってください」などが代表的だ。状況や相手との関係によって、どの表現が適切かは少し変わるので、いくつかのパターンを押さえておくと役立つ。
■「ご自愛ください」や「養生なさってください」のニュアンス
・ご自愛ください:「ご自分を大事にしてください」の意味を持つ。相手自身が無理をしないで健康を維持してほしいというニュアンスが強い。ビジネスメールの結びなどでよく使われ、汎用性が高い表現。
・養生なさってください:「しっかり休んで体調を回復させてください」の意味。病状がやや重めの場合や、長期休養を要する場合に使われることが多い。
・お労りください、おいといください:どちらも身体を労る、厭うという意味で、やや古風な敬語表現。手紙やメールの結びに添えると、柔らかな印象を与える。
■「お労りください」「おいといください」などの活用法
以下に、「お大事にしてください」を別の表現に言い換える際、どう使えるか具体的に見てみる。
・お労りください:「疲れや痛みに注意しながら、ゆっくり静養してほしい」のようなイメージ。ビジネスメールでは「〇〇様、どうぞお身体をお労りください」と結びに用いる。
・おいといください:「遠慮なく休みながら、心身を大切にしてください」のようなニュアンスを含む。やや文語的な表現のため、手紙や丁寧なメールに向いている。
・お身体ご自愛ください:本来は「ご自愛ください」に「身体を大切に」の意味が含まれるため、「お身体ご自愛ください」は重複表現となる。使う場合は「ご自愛ください」だけにするのが正しい。
いずれの表現も、相手が速やかに元気になるように願う気持ちを示すもの。言葉遣いのレベルを合わせ、状況や相手との距離感に応じて選択したい。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部