
『私用』は、日常的によく使われる言葉です。職場において、『私用のため』という言い回しが使えるのは、どのような場面でしょうか?使い方の留意点や、私用と混同しやすい表現を解説します。
目次
私用とは?
『私用』は、公共の対義語に当たります。『私用のため』『私用電話の利用を禁ずる』など、ビジネスシーンではよく見聞きする言葉なのではないでしょうか?まずは、私用の意味と使い方の基本をおさらいしましょう。
■個人的な用事のこと
私用とは、『個人的な用事』を意味する言葉です。会社においては、業務と関係のない事柄を指すケースが多いでしょう。
【例文】
- 私用で早退いたします
- 業務中の私用電話はお控えください
- 私用のため、明日の会議には出席できません
- 社用車の私用は禁じられている
参考までに、『私用で』『私用のため』を表す英語表現は複数あります。状況に応じて使い分けましょう。
- For personal use(個人使用のために)
- For non-business reasons(非ビジネス上の理由で)
- For personal reasons(私的な理由で)
- On personal business(私的な用事で)
■「私用のため」を使えるシーン
『私用のため』というフレーズは、会社を休んだり、会議を欠席したりする際に使えます。どこまでを私用としてよいのかで悩む人もいますが、個人の都合・家庭の事情・業務に関係のない事柄は、全て含まれると考えましょう。
- 通院
- 冠婚葬祭
- 旅行・レジャー
- 子どもの学校行事への参加
私用の対義語は、公の用事や会社の用務を意味する『公用』です。入籍や引っ越しなどに伴う公的手続きは私用に該当しますが、裁判員制度で裁判員に選ばれた場合は、公用として会社を休める可能性があります。詳細は、会社の担当者に確認しましょう。
私用と混同しやすい表現
私用と混同しやすい表現には、『私情』『私事』『一身上の都合』などが挙げられます。それぞれの表現を正しく理解し、適切に使用することで円滑なコミュニケーションを図れます。
■私事
私事は、個人的な事柄や生活に関すること、または他人に知られたくない秘密を指します。読み方は『しじ』ですが、同音異義語が多いため『わたくしごと』と読んだ方が相手に伝わりやすいでしょう。
私用と異なり、必ずしも用事や目的を意味しません。『私事で恐縮ですが』という前置きは、個人的な体験談を話す際に使われます。
ビジネスシーンでは、『私事ながら』と断りを入れてから個人的な話題に触れることが多いでしょう。『私事を語る』『私事に立ち入る』といった表現もあります。
■私情
私情は、個人的な感情や利己的な心を意味します。私用・私事とは、意味や使い方が異なる点に注意しましょう。
私情は主に感情面を表現し、『私情にとらわれる』『私情を交える』といった使い方をします。例えば、『私情に流されず、公平な立場で物事を判断する』は、個人的な感情を抑えて客観的に物事を見ることです。
『私情で会社を休む』という表現は、相手に違和感を与えかねません。個人の都合で欠席するのであれば、私用や私事、個人の都合などを使うのがふさわしいでしょう。
■一身上の都合
一身上の都合は、個人的な事情を指す言葉です。私事や自己都合と同義で、現代においては以下のようなシーンで使われるのが一般的です。
- 会社に退職届・退職願を提出するとき
- 履歴書で退職理由を記載するとき
- 内定をもらった企業を辞退するとき
詳細な説明を避け、プライバシーを守れるのが利点ですが、面接で退職理由を聞かれたときは、曖昧な答え方はしない方がよいでしょう。当然ながら、契約満了や会社都合による退職には、一身上の都合は使えません。
「私用のため」を使う上での留意点
私用のためは、会社を休むときや早退するときによく用いられます。用事の内容を相手に知らせる必要がないため、つい多用してしまいがちですが、状況によってはふさわしくないケースもあります。以下で、使用上の留意点を確認しましょう。
■社外の人には使わない
取引先やお客さまに対して「私用のため欠席します」と伝えると、仕事よりも自分の事情を優先している印象を与えてしまいます。
社外の人に対しては、私用ではなく『所用(しょよう)』を使うのがマナーです。用事や要件を指す言葉で、ビジネスシーンで幅広く使えます。
例えば、取引先から電話があり、担当者の不在を伝える際は「所用のため外出しております」と伝えます。フォーマルな印象を与える上、相手に具体的な理由を詮索される可能性も低くなるでしょう。
■有給休暇の理由にも使える
有給休暇の取得理由に、私用のためと記載することは一般的に認められています。法律上、有給休暇は労働者の権利であり、取得理由を会社に伝える必要はありません。会社は、理由の内容を問わず取得申請を認める必要があります。
ただし、繁忙期は有給休暇を取ることに難色を示す上司もいるでしょう。スムーズな取得のためには、体調不良や通院、冠婚葬祭といった具体的な理由を伝えるのが効果的です。
なお、有給休暇・遅刻・早退の申請ルールは、会社ごとに異なります。不明点があれば、会社の就業規則を確認するか、勤怠管理の担当者に確認することをおすすめします。
私用は状況に応じて正しく使おう
私用とは、個人的な用事を指す言葉であり、職場やビジネスシーンで多く使われます。家庭の事情で会社を休まなければならないときは、『私用のため』という言い回しが便利です。
ただし、ビジネスシーンでは、言葉遣い一つで相手に不快な思いをさせてしまう恐れがあるため、状況をよく見極めて使う必要があります。社外の人に対しては『所用のため』を使うのが基本です。私事や私情との使い分けも、チェックしておきましょう。
構成/編集部