
『尊重』とは、相手や物事を大切に扱うことを意味する言葉です。円滑な人間関係に不可欠なものとされており、お互いの考えを尊重させた『アサーティブ・コミュニケーション』という手法もあります。今回は、尊重の意味から、大切な人を尊重するコミュニケーションの取り方まで、徹底解説します。
目次
『尊重』は、人間関係を築く上でも重要なキーワードです。しかし、実際はどのような意味があり、なぜ重要なのか明確に理解できていないことも多いかもしれません。どんな時に使える言葉なのか、今一度チェックしていきましょう。
尊重とは?
まずは、尊重の意味について見ていきましょう。混同されがちな『尊敬』との違いについても解説します。
■価値あるものとして扱うこと
尊重は、人や物事を価値あるものとして扱うことを意味します。単なる表面的な礼儀作法ではなく、相手の人格や価値観を心から認め、受け入れる内面の姿勢を指します。
健全な人間関係の継続や、信頼感の構築において重要です。また、個人の成長や幸福、企業・組織の成功など、さまざまな側面に影響を与えます。
尊重の対象となるのは、人間としての基本的人権や尊厳のほかに、個性・能力・文化背景・思想信条など多種多様です。持続可能な社会という視点で見れば、自然環境や動植物の生命なども尊重されるべき対象となるでしょう。
■尊敬との違い
尊敬と尊重は似た意味を持ちますが、微妙に異なるニュアンスがあります。尊敬は、相手の能力や人格、功績などに対して高く評価し、敬意を抱くことです。
特定の人物に対して感じることが多く、相手に対する憧れの気持ちを含む場合もあります。例えば、偉業を成し遂げた人や模範的な行動を取る先輩に対して抱くのが尊敬です。
一方、尊重は特定の人物を対象とするものではありません。また、その人の能力や人格などを評価するのではなく、考え・価値観を認めて大切に扱うことです。
尊敬は『相手を高く評価し、敬意を持って接すること』、尊重は『相手の存在や価値観を認め、対等に扱うこと』と考えるとわかりやすいでしょう。
尊重の類義語と対義語
尊重の意味をより深く理解するために、類義語や対義語も知っておきましょう。それぞれの言葉の意味や使い方も紹介します。
■尊重の類義語・言い換え
尊重の類義語や言い換え表現には、『敬意を表する』『尊ぶ』『認める』などがあります。
・敬意を表する
『敬意を表する』は、相手の努力や人格などを認め、たたえる気持ちを表す言葉です。例えば、「彼の努力に敬意を表する」のように使用します。どちらかというと、尊敬に近い表現といってよいでしょう。
・尊ぶ
『尊ぶ』は、『伝統を尊ぶ』といった使い方があり、人や物事を大切にする気持ちを表すときに用いられる表現です。
・認める
『認める』は、相手の存在や価値を肯定的に受け入れることを意味します。「相手の努力を認める」などのように使われます。
これらの言葉は、相手の価値を認め、大切に扱うという尊重の本質をさまざまな角度から表現する類義語といえるでしょう。
■尊重の対義語
尊重の対義語には、『無視』『軽視』が挙げられます。
・無視
『無視』とは、相手の存在や意見を意図的に認めず、注意を払わない態度のことです。例えば、『彼の提案を完全に無視した』といった場合は、提案があることを知っているがそれを認めなかったという意味になります。
・軽視
一方、『軽視』は相手や物事の価値を低く見積もり、重要性を認めないことを意味する言葉です。「彼女の能力を軽視してしまった」のように、本来の価値を見過ごして、軽んじてしまうときなどに使います。
どちらも相手や物事を大切に扱うことの対極にあり、価値のないものとして見なしたり、粗雑に扱ったりするという意味のある言葉です。無視や軽視といった行為は、相手の自尊心を傷つけるだけでなく、良好な人間関係を築く上で障害となることがあります。
自己尊重とは
自己尊重は、個人の成長と幸福感に欠かせない要素です。具体的な意味や自己尊重が高い傾向にある人の特徴のほか、高める方法についても解説します。
■自分自身の価値を認めること
自己尊重とは、自分自身の価値を認め、大切にする姿勢です。自身の長所だけでなく、短所も含めたありのままの自分を価値ある存在として捉えることをいいます。欠点も含めて自分には価値があると考えられれば、自己肯定感が高まり自信を持てるようになるでしょう。
周りからの評価に左右されることなく自分の考えを表現できるため、精神的な健康も保たれます。また、自己尊重は、人間関係の構築や自己実現にも影響を及ぼします。個人の幸福や成功の基盤となる、重要な要素といってよいでしょう。
■自己尊重が高い傾向にある人の特徴
自己尊重が高い人は、自己肯定感も高い傾向にあるのが特徴です。自分の意見や価値観に自信を持ち、それを適切に表現できます。また、周囲の評価に振り回されず、自分らしい生き方ができる人です。
自立心が強いので、困難な課題や新しい挑戦にも積極的に取り組めるでしょう。リーダーシップを発揮しやすいタイプなので、管理職に抜擢される人も少なくありません。
しかし一方で、自身の考えに固執しやすくなり、他人の意見を受け入れなくなる人もいるので注意が必要です。
■自己尊重の高め方
自己尊重を高めるには、『自分には無条件に価値がある』と信じることが大切です。日々の生活の中で、常にその思いを持ち続けることで、徐々に自己尊重感を高めていけるでしょう。
ネガティブな思考を、ポジティブに転換する習慣を持つことも有効です。例えば、『すぐ行動に移せない』性格を短所だと考えるのではなく、『慎重に行動できる』と長所に変えて捉えてみるとよいでしょう。
また、自己肯定感を育むことも大切です。自分に自信が持てない人は、知識やスキルを習得するという方法もあります。
他者尊重とは
人間関係においては、自己だけでなく他者を尊重する姿勢を持つことも大切です。他者尊重の意味や重要性などについて見ていきましょう。
■相手の価値観を認めること
他者尊重とは、相手の考え方や個性を認め、大切にする姿勢のことです。単に相手の意見を聞くだけでなく、その人の存在や生き方全体を尊重することを意味します。
他者を尊重するには、相手の立場に立って考える想像力や、違いを受け入れる寛容さが求められます。ただし、相手を受け入れるといっても、わがままを許すわけではありません。
相手の意見や気持ちをくみ取り、可能性を引き出すことです。相手を尊重することで建設的な対話が生まれ、結果的に個人や組織の成長につながるでしょう。
■他者尊重が重要な理由
他者尊重は、良好な人間関係を築くために不可欠です。特に、多様化が進む現代社会において欠かせない要素といえるでしょう。
近年、異なる文化や考え方を持つ人々と協働する機会が増えています。そうした環境で対立を防ぎ、お互いに協力し合って働くには、他者に対する尊重が大切です。
特に組織をまとめるリーダーには、メンバー一人一人の個性や価値観を受け入れる他者尊重の姿勢が求められます。また、ハラスメントの発生も、他者を尊重する意識の欠如から起こることが少なくありません。
他者尊重は、身の回りのさまざまな場面で、より良い社会や個人の幸福感に影響を及ぼしています。
■他者尊重の高め方
相手の気持ちへの理解や共感を示すためには、話を真剣に聞く『傾聴』が必要です。傾聴とは、相手の話にしっかり耳を傾けて聞くことをいいます。
話の途中で「考えが違う」と感じても、自分が正しいと反論せず、いったん相手の意見を受け入れる姿勢を持ちましょう。ただし、他者を尊重するには、まず自分自身を大切にしていることが必要です。
自分を大切にできていないと、他者も尊重できません。自分自身の価値を認められれば、他者も受け入れられるようになるでしょう。