日本の老舗企業は世界の約半数、業歴200年以上では3分の2を占めるとの調査もあり、世界に誇る日本の魅力の一つだ。そんな長い歴史を刻んできた「ニッポンの老舗」が、苦境に立たされている。
帝国データバンクは、100年経営「老舗企業」の倒産動向調査(2024年)を実施したので、詳細をお伝えしよう。
地域から愛された名店が相次いで終幕 小売・製造業を中心に老舗倒産が急増
2024年に倒産した老舗企業は、145件に達した。5年ぶりの100件超で、これまで最も多かったリーマン・ショック時の2008年(120件)を上回り、過去最多を大幅に更新。
業種別にみると、小売業が43件で最も多かった。スーパーマーケット(5件)を筆頭に、百貨店(2件)も含めた大型商業施設が相次いで姿を消した。さらに呉服小売(4件)、料亭(3件)など昔ながらの業種も目立つ。
また、製造業も42件と高水準だ。郷土料理や加工品などを手がける水産食料品製造(4件)のほか、2024年12月にユネスコ無形文化遺産として日本酒や焼酎など「伝統的酒造り」が登録された清酒製造(4件)、地元の銘菓を扱う生菓子製造(3件)や米菓製造(3件)などがあった。小売業と製造業の2業種で、全体の約6割を占めている。
また、倒産要因ではほとんどが「販売不振」(124件)であった。加えて、物価高や後継者難など、昨今鮮明になりつつある経営リスクが直撃したケースも数多く確認された。
揺らぐ老舗のブランド 長年の伝統と苦難を超えてきた強みを武器に再起を果たせるか
長い業歴は、その企業が市場のなかで生き残り続けた証明であり、業歴100年を上回る「老舗」というブランド力は大きな強みを持つ。
企業間取引においては、長年の信用を裏付けに関係が構築・継続されていくことも多い。また、財務面では長年にわたって蓄積された資産を生かした収益性・安定性が老舗企業の強みでもあり、ブランド力だけではない確かな魅力も存在する。
一方で、老舗企業は小規模事業者が多くを占めている。そうしたなか、近年深刻化している物価高や後継者難に対応できなくなるケースが増えており、日本の伝統産業や地域に愛された企業もその例外ではない。
また、2023年には上場老舗企業ながらコンプライアンス違反によって倒産したケースも複数生じ、「老舗=安泰」というイメージに変調が表れている。
老舗企業は代々続く伝統の家訓・経営理念に代表される豊かな精神性や公益を重んじる事業展開を武器として、長く事業を続けられたはずだ。一層激しく経営環境が変化するなか、あらゆる荒波を乗り越えてきた「進取の気性」が今一度求められているといえよう。
関連情報
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250116-shinise-br2024/
構成/Ara