
ビジネスにおける『ワンオペ』は、一人で全ての作業をこなすことを意味します。人件費削減が主な理由で、従業員への過度な負担や業務効率の低下などの問題があります。
目次
ビジネスにおける「ワンオペ」の意味とは?
ビジネスシーンで使われる『ワンオペ』とは、どのような意味なのでしょうか?ワンオペになりやすい業種についても、併せて見ていきましょう。
■一人で全ての作業をこなすこと
『ワンオペ』は、『ワンオペレーション(one operation)』を略した言葉です。英語の『one operation』を片仮名にした言葉で、『複数人で行うべき業務を一人で全て担当すること』を意味します。
ワンオペという言葉が世間に広まったのは、大手牛丼チェーンにおける過酷な労働実態が報じられたのがきっかけといわれています。大きな売り上げが見込めない深夜の時間帯に、ワンオペにせざるを得ない状況が社会問題となったのです。
その後、育児においても一人でこなさなければいけない状況を表す言葉として広く使われるようになり、現在に至っています。
■「ワンオペ」が発生しやすい業界
特にワンオペが発生しやすいのは、介護業界や飲食業界です。これらの業界では、人件費削減や慢性的な人手不足が背景にあり、一人の従業員に多くの業務を任せる傾向があります。
多くの介護施設では、長時間におよぶ夜勤を一人で担当する『ワンオペ夜勤』が問題となっています。夜間の介護業務は、利用者の就寝介助や定期巡回、緊急時の対応など多岐にわたり、一人で全てをこなすのは大きな負担です。
飲食店では、特にファストフード店やコンビニエンスストアで、深夜帯のワンオペが多く見られます。調理・接客・レジ・清掃など、全ての業務を一人でこなさなければならず、休憩時間の確保が困難なケースもあります。
「ワンオペ」が起こる主な原因と背景
ワンオペが起こるのには、複数の原因や背景が考えられ、多くの企業が直面している課題でもあります。具体的に、どのような原因や背景があるのでしょうか?
■人員不足と人件費削減の影響
ワンオペが起こる主な原因として、人員不足と人件費削減の影響が挙げられます。人員不足の主な原因は、少子高齢化によって若手の労働人口が減少していることです。パート・アルバイトなど、非正規雇用の割合が増えているのも原因です。
国家資格を必要とするスペシャリストになるための、ハードルが高すぎるのも、人手不足の原因といえます。例えば、病院からの需要に対して、病理医の数が圧倒的に少なく、需要に対応しきれていないという現状があります。
また、多くの企業が経営効率化を目指す中、人件費の削減は重要な課題です。しかし、過度な人員削減は、ワンオペ状態を引き起こす要因となります。
■業務の専門化・複雑化による影響
技術の進歩や市場の変化に伴い、多くの職場で業務内容が高度化し、特定の専門知識・スキルを持つ人材が必要不可欠になっています。しかし、こうした専門性の高い業務は、しばしば一人の担当者に集中しがちです。
例えば、IT企業でのシステム開発や保守管理、金融機関での投資分析、医療現場での特殊な治療技術など、高度な専門性を要する業務では、一人の熟練者に頼らざるを得ない状況が生まれやすくなります。
これらの業務は、短期間での引き継ぎや代替が難しく、結果としてワンオペ状態を招きます。
「ワンオペ」がもたらす問題点
ワンオペは、企業や従業員にさまざまな問題を引き起こします。長期化すれば、企業の競争力低下や従業員の離職率上昇といった、深刻な事態を招く恐れがあります。以下で、具体的な問題点について詳しく見ていきましょう。
■従業員の心身への悪影響
常に一人で業務をこなす状況下では、休憩時間が十分に取れず、過度の疲労が蓄積されやすくなります。これにより、健康を害するリスクが高まり、長期的には深刻な体調不良につながる可能性も否定できません。
精神面では、強いストレスや孤独感を感じやすくなります。相談相手や協力者がいないため、問題に直面した際の精神的負担が大きく、不安・焦りを感じやすくなるのです。
また、業務の属人化が進むことで責任が一極集中し、プレッシャーが増大します。さらに、ワンオペ状態が続くと、モチベーションの低下や燃え尽き症候群のリスクも高まります。
■業務効率と生産性の低下
一人で全ての業務を担当することで、従業員は多岐にわたるタスクを同時にこなさなければなりません。結果として、個々の作業に十分な時間と注意を割くことが困難になります。
例えば、接客と調理を同時に行う飲食店のワンオペでは、注文の受付中に調理が中断されるなど、業務の中断が頻繁に発生し全体的な効率が低下します。また、従業員が休憩を取りづらい状況に陥り、長時間労働によって疲労が蓄積され、ミスのリスクも高まるでしょう。
さらに、業務の改善や新しい取り組みを試みる余裕がなくなり、長期的な視点での生産性向上が阻害されます。急な欠勤・退職の際には、業務が完全に停止してしまうリスクが高く、組織の脆弱性にもつながります。
■サービス品質とお客さま満足度への影響
一人で多くの業務をこなすため、接客や商品提供のスピードが低下し、お客さまを待たせる時間が増加します。これは、顧客満足度の低下に直結します。
従業員の疲労・ストレスが蓄積されることで、丁寧な接客や気配りが難しくなり、サービスの質が低下する可能性もあるでしょう。
緊急時や、複数の要望が重なった際の対応力も低下します。例えば、クレーム対応中に他のお客さまの注文を受けられないなどです。
ワンオペでは、多くのタスクを同時進行で処理するため、ミスや見落としのリスクも高まります。これらの問題は、長期的には顧客離れや評判の低下を招き、企業の競争力を弱める要因となります。