
因果応報という言葉を知ってはいるものの、正しい意味を理解しているか自信がない方もいるのではないでしょうか。因果応報は、善悪に関係なく、前世や過去の行いに応じた結果がもたらされることを意味する言葉です。今回は、因果応報の意味や使い方、類似表現を詳しく解説します。
目次
因果応報は「いんがおうほう」と読み、過去や前世の自分の行動に対する結果を意味する言葉です。仏教用語が由来であり、前世や過去の行いの影響を後々受けることになるため、良い行いがいかに大切かを説く言葉として使われていました。
今回は、古くから使われてきた言葉の意味と正しい使い方をあらためて解説していきます。
因果応報の意味とは
■「因果」の意味とは
「因果」は、ものごとの原因と結果、またはその2つの関係を意味する言葉です。ビジネスシーンでは、「因果関係を明らかにしよう」などと使います。
参考:デジタル大辞泉
■「応報」の意味とは
「応報」も仏教用語の1つです。因果応報と同じように、良い行動には良いことが、悪い行動には悪いことが起こることを意味します。
参考:デジタル大辞泉
■良い意味と悪い意味の2つがある
因果応報を、「悪い行いをすると自分に跳ね返ってくる」というネガティブな意味で捉えている方も多いでしょう。しかし、実際には悪い行いに限らず、「良い行いをすると、良いことが起きる」というポジティブな意味も含んでいることがポイントです。
つまり、「善悪を問わず、自分の行動に見合った結果になる」という意味であることを押さえておきましょう。
■自業自得との違い
因果応報と似た意味の言葉として、自業自得(じごうじとく)が挙げられます。2つの言葉に、大きな違いはありません。いずれも「善悪に関係なく、取った行動がそのまま自分に返ってくること」を意味します。
実際には良い意味もあるものの、悪い行動を戒める意味で使われることがほとんどであることも、因果応報と同じといえるでしょう。
因果応報の使い方と例文
因果応報は、良い意味と悪い意味の両方で使われます。ここでは、それぞれの使い方と例文を確認しましょう。
■良い意味での使い方と例文
あまり浸透していないものの、因果応報は良い行動や努力などが報われたときも使える表現です。具体的な例文は、以下をご参照ください。
- 因果応報を信じて長年コツコツと準備を重ねたことで、プロジェクトが大成功を収めた
- 彼は入社してからずっと努力していたのだから、昇格したのも因果応報といえる
- こんなご時世にもかかわらず、あの会社は一人勝ちをしている。因果応報、既存顧客との関係性を重視してきた結果だ
- 彼女の日々の地道な改善が評価され、社内コンテストで最優秀賞を受賞できたのは、因果応報だ
■悪い意味での使い方と例文
因果応報は、悪い行いをした人に不運なことが起きたときに、「それ見たことか」という揶揄するようなニュアンスで使われることが多いでしょう。具体的な例文は、以下のとおりです。
- クレーム対応を真摯に行わなかったことで、大きな信用を失ったのは、因果応報だと思う
- 後輩への当たりが強すぎた結果、全員が退職してプロジェクトが難航したのは、因果応報だ
- 予算の管理が甘かったせいで大赤字を出してしまったのは、因果応報でしかない
- キツい仕事を人に押しつけてばかりだったから、いざというときにサポートしてもらえないなんて、まさに因果応報だ
因果応報の類似表現
因果応報の主な類似表現は、以下の5つです。
- 善因善果
- 悪因悪果
- 自業自得
- 身から出た錆
- 自分で蒔いた種
それぞれの使い方や例文を見ていきましょう。
■善因善果
善因善果は「ぜんいんぜんか」と読み、良い行動は良い結果をもたらすという意味の言葉です。「善因」は良い結果をもたらす行いを、「善果」は良い結果を意味します。
因果応報を良い意味で使うことは正しいものの、そもそも「良い意味でも使える」ことを知らない人も少なくありません。その結果、正しい表現であるにもかかわらず、意図する内容が伝わらなかったり、誤解を与えてしまったりするリスクがあります。
善因善果であれば、「良い行いをしたから報われた」ことをストレートにあらわせるでしょう。
【例文】
- 彼が後輩とのコミュニケーションを大切にしてきたおかげで、チームの士気が上がり、結果的に業績向上につながった。善因善果の賜物だ
- 小さな案件でも全力で対応してきたことによって、売上が右肩上がりに伸びていったのは、善因善果のあらわれといえる
- 地道にマーケティングデータを分析し続けたことが、今回のヒット商品誕生につながった。まさに善因善果だ
参考:デジタル大辞泉
■悪因悪果
悪因悪果は「あくいんあっか」と読み、善因善果とは反対の意味をあらわす言葉です。悪い行いを原因として、悪い結果が起きることを意味します。
因果応報は、善悪にかかわらず取った行動が自分に返ってくることを意味するため、善因善果も悪因悪果も類似表現といえます。
【例文】
- 顧客からの苦情を軽視した結果、競合に取引を奪われたのは、悪因悪果だ
- 社内の風通しの悪さを改善しなかったことで離職率が上がってしまったのは、悪因悪果だ
- 業績をよく見せるためのデータの改ざんが露見し、企業の信用が失墜したのは、まさに悪因悪果といえるだろう
参考:デジタル大辞泉
■自業自得
自業自得は、因果応報と同じように、善悪にかかわらず自分の行為の報いを受けるという意味の言葉です。ただし、悪い意味のほうが広く認知されている傾向があります。
【例文】
- チームメンバーの意見を無視して進めた結果、計画が失敗に終わったのは、自業自得だ
- プレゼンの準備を怠ったせいで契約を逃したのは、自業自得としかいいようがない
- 締め切り直前まで作業を放置してトラブルになったのは、完全に自業自得だ
■身から出た錆
身から出た錆は「みからでたさび」と読み、災いが起きて苦しむのは、自分の犯した悪行や怠慢が原因となっていることを意味する言葉です。他人や環境のせいではなく、本人に責任があることを強調するニュアンスを含みます。
刀の手入れから派生した言葉といわれており、刀の手入れを怠ると錆が蓄積し、使い物にならなくなります。その結果、いざというときに自分の命を落とす原因になりかねません。このことから、自分の行いによって引き起こされる苦しみを表現するようになりました。
【例文】
- あれだけ無理な目標設定をしていたのだから、プロジェクトが崩壊したのも身から出た錆だ
- 身から出た錆だよ、コスト削減を優先して品質を犠牲にすれば、クレームも増えるはずだ
- クライアントに対する丁寧な説明を怠ったせいで信用を失ったのは、完全に身から出た錆といえる
参考:デジタル大辞泉
■自分で蒔いた種
自分で蒔いた種も、因果応報の類似表現の1つです。蒔いたは「まいた」と読みます。自分がきっかけを作って招いた悪い事態、あるいはそのきっかけをあらわす言い回しです。「自分で蒔いた種は自分で刈り取れ」ともいい、新約聖書の記述が由来といわれています。
【例文】
- 部下に無理な要求を続けた結果、反発されてプロジェクトが滞ったのは、まさに自分で蒔いた種だ
- その仕事で結果が出なかったのは、スケジュール管理を怠ったせいだよ。自分で蒔いた種だろう
- 小さなミスを放置したせいで後で大きな問題になったのは、自分で蒔いた種だ
因果応報の意味を正しく把握しよう
因果応報とは、良い行いをすれば幸運が訪れる、悪い行いをすれば災いが降り掛かるというように、行動の善悪に応じた結果が自分に返ってくることを意味する言葉です。ネガティブな意味だけでなく、ポジティブな意味もあらわすことがポイントです。
類似表現としては自業自得や善因善果、身から出た錆などが挙げられます。因果応報の意味を理解し、正しく使えるようにしましょう。
構成/橘 真咲