千葉県四街道市に本社を置く岩渕薬品は、障がい者の就労支援と持続可能な社会の実現を目指し、新たに海ぶどうの陸上養殖事業に取り組むと発表した。
コンテナ内で完結する閉鎖循環式の陸上養殖システムを採用することで、千葉県で「海ぶどう」の養殖が可能に!
日本では、障がい者に就労機会を提供し、社会参画を支援することが重要な課題とされているが、依然として雇用機会が限られているため、能力を発揮できる職場環境の整備が求められている。
2024年4月からは、障がい者への「合理的配慮の提供」が民間企業にも義務化され、企業にはこれまで以上に多様な人材が活躍できる環境づくりが期待されている。
同社は、障がい者の経済的自立と生活の質向上に貢献し、地域社会の発展を支援している。このプロジェクトでは、障がい者が「陸上養殖」という新分野で活躍できる場を提供し、持続可能な社会の一翼を担うことを目指しているという。
このような背景のもと、同社では2019年から農園型の障がい者雇用を推進し、活躍の場を広げる取り組みを続けてきた。現在、障がいのある社員がビニールハウスで水耕栽培による野菜の生産を担当しており、彼らが心を込めて育てた新鮮な野菜は、従業員への福利厚生として社内で配布されている。
しかし、福利厚生としての使用にとどまると本業の経営に依存してしまい、持続可能な運営には課題があった。そこで、生産物を販売して収益化を図る方法や、より高い付加価値を生む新たな事業モデルを模索するなかで、海ぶどうの陸上養殖技術に出会ったという。
今回取り組む海ぶどう養殖は、コンテナ内で完結する閉鎖循環式の陸上養殖システムを採用しており、水温、日照、水質に左右されやすい海ぶどうを安定的に育てるため、コンテナ内の環境を一定に保ち、常に快適な環境下で育成させることが可能。この様な環境で育った海ぶどうは、粒が多く立派な房が密集している。また、一般的に好まれない茎の部分が少ない点も特徴だ。
本来、沖縄のような暖かい海でしか生息できない海ぶどうを、この方法によって千葉県でも養殖することができ、新鮮な海ぶどうをすぐに家庭や飲食店に提供できるようになった。
なお、このコンテナ型陸上養殖においては、障がいのある社員が日々のメンテナンス、収穫、商品の梱包作業などを担当。生産された海ぶどうは、道の駅や地元のスーパー、飲食店などへの販売を予定しているほか、同プロジェクトに賛同した飲食店とのコラボメニューの展開も計画しているという。
さらに、将来的には、海ぶどうの加工品開発や他品種の陸上養殖への挑戦、陸上養殖と農業のハイブリッド型の事業構築など、さらなる事業拡大を視野に入れているとのことだ。
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構成/立原尚子