新たな期が始まる前のこのタイミングにて、今一度「強いチーム(組織)を作るために準備しておくべきこと」について、識学の観点から執筆いただけますと幸いです。
チームビルディングとは
4月に新たな期が始まる会社は、新たにチームビルディングを進めようとお考えもあるのではないでしょうか。
能力の高いメンバーがいるはずなのに力を発揮できていない、チームとしての一体感が無く個人主義になってしまっているなど、過去のチームビルディングでの失敗から悩みを抱える経営者からの相談を受ける機会が増えてきました。
そもそもチームビルディングとは、直訳すると「チームを構築する」という意味になりますが、私は「チームが目標を達成できるような仕組みの構築」と捉える方が良いと思っています。
今回はチームのパフォーマンスを最大化するためのチームビルディングをするための準備についてお伝えしていきます。
チームビルディングの準備(1) 目的とチームの目標設定
チームを構築するからには、何のためにこのチームが存在するのか目的を明確にしなければいけません。「社内全体の時間あたり生産性を向上させることにより、●●年●月●日までの人件費率●%以内かつ顧客離反率●%以内を実現する」などです。
目的はあっても目標が曖昧なままチームビルディングを進めてしまう会社があります。そうならないようにどのような期限でどのような状態になったらこのチームビルディングは成功したと言えるのかを明確にしましょう。また、生産性向上を目指す上で人件費の削減を目標にする場合もありますが、人件費は削減できてもサービスの質が低下して顧客が離反しては成功したとは言えませんので、複数の目標を掛け合わせるかどうかも検討されると良いです。
また、可能であれば目的や目標を設定する上で競合他社の現状や会社の未来にとってなぜこのチームが必要なのかも明文化しておくと良いです。
チームビルディングの準備(2) 組織図と役割・責任
目標や目的が決まったら次はチーム内の組織図を作成しましょう。
組織図はチームビルディングを進める上での骨格であり設計図ともいえます。設計図も無しに安全で快適な建物が建つでしょうか、それは難しいだろうと感じた方が多いのではないでしょうか。まずはチームの責任者が誰かを明確に設定し、チームが期限内に目標を達成するためにはどんなフォーメーションで行くかを考えていきましょう。
スポーツに例えると相手に勝つためにフォーメーションを監督が考えるのと一緒です。目的と目標を期限内に達成するためには、どんな組織図でどんな役割が必要なのか。役割に対してどのような責任を設定するかを決めましょう。それを考えてから誰を配置するかを決めなければいけません。適材適所ではなく適所適材で考える必要があります。
メンバーのやりたい事や向き不向きを優先して決めると、チームにとって必要のない役割が増えたり、必要な役割に人がいないという不具合が起きる可能性があります。
まずは必要な役割を明確にして、経験や能力を踏まえて誰に任せるかを決めるという考え方が必要です。もしかしたらメンバーの望む役割でない場合もあるかもしれませんが、チームの責任者がチームの勝利の為に必要な決断をしたことをメンバーに伝えましょう。ただし、意思決定を伝えた際にメンバーから新たに上がってきた事実情報を踏まえて再検討した結果、チームの勝利の為に変更が必要だとリーダーが決断したのであれば役割を再設定しても構いません。
チームビルディングの準備(3) ルールとコミュニケーション
チームビルディングの際に「みんなで協力して・・・、お互いを信頼して・・・、助け合いながら・・・」という方針を掲げて運営している場合がありますがこれはお勧めできません。チームのメンバーがよほど近い価値観を持ち、協力してという言葉がどんな行動をするべきなのかお互いの認識がズレない状態のチームであると確信を持っている場合は別ですが、チームを構築する時には異なる価値観の人が複数集まってチームが出来る事がほとんどです。
例えば
「Aさん:協力してという方針なのにBさんは自分の仕事が終わったらすぐに帰ってしまいます。私はみんなの手伝いをしてるのに・・」
「Bさん:協力することはできるけど、協力することで責任の所在が曖昧になってしまう。自分の仕事を期限内に終わらせることが本当の意味で協力し合う事だと思うのでAさんは仕事の考え方が甘いと思う・・」
貴方がチームの責任者であれば上記に対してどんな解決策を講じるでしょうか?
方針だけでルールが無かったり曖昧であるがゆえに、チームが上手くいかないという事例をいくつも見てきました。それを個別面談や飲み会で解決しようとして一時的に良くなったように見えても、根本的な解決になっていないのでまた同じようなことが起きてしまったという経験をした方もいるのではないでしょうか。コミュニケーションは大事ですが、何でもコミュニケーションで解決しようとすると効率が悪くなり、根本的な解決から目をそらしているだけになってしまいます。
「○○の場合は協力する」「○○については、いつの期限までに情報共有する(声掛けする)」など、必要なルールを明確に設定しておきましょう。
また、チームの責任者はメンバーの役割・責任に対して期限を設定して定例で目標に対しての結果、次の目標設定と改善策について報告をしてもらう場をルールとしてしっかり設ける事で、チームの目標が達成できるように管理していきましょう。
また、チームビルディングの際に、メンバーのモチベーションを気にしている責任者がいますがそれはお勧めしません。モチベーションは大事ですが責任者がメンバーの見えないモチベーション(気持ち)を読み取る事も困難であり、どうやったらモチベーションを上げる事が出来るかの答えを見つけ出すのも困難だからです。そもそもモチベーションは成長したり何かを成し遂げたときに自然に発生するものであり他人がコントロールすることは出来ません。
チームビルディングの際にはモチベーションを気にするのではなく、メンバーに迷いが生じていないかを情報収集し、目標やルールを明確にしたり、必要な権限を設定することが重要です。
まとめ
チームビルディングの際には、目標と目的を明確にして、それを達成するための組織図と役割・責任を明文化していきましょう。またチームのメンバーが守るべき必要なルールを設定したうえで、チームの責任者はルールの追加・修正・削除をしていきましょう。チームの目標を達成させるために会議のルールを決めるのも有効です。各メンバーの役割・責任に対して進捗状況+改善策をセットで報告できるような場を設定しましょう。
最後にチームとして目標を達成した時にどんな評価が得られるか。チーム内で設定された役割・責任を果たしたときにどのような評価が得られて給与に反映されるかまで決められればベストです。チームビルディングの際には、「一体感」「協力」「主体性」など曖昧な言葉で運営しようとしがちですが、明確で迷わない仕組みによりチームを勝利に導いて、メンバーの評価と成長につながるよう準備を進めていきましょう。
文/株式会社識学 城間 弘二