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ついに全国発売へ!勢いが止まらない「未来のレモンサワー」の知られざる秘密

2025.02.21

昨年6月、首都圏・関信越エリアで限定販売され、大きな話題を呼んだ『未来のレモンサワー』。同年11月に再発売、12月には新たに東海・北陸・近畿エリアでの発売も開始された。

これまでエリア限定で販売されてきた『未来のレモンサワー』だったが、ついに今年9月より全国で発売されることが発表された。3月11日より首都圏・関信越・東海・北陸・近畿エリアでの数量限定で再発売し、6 月24 日に中四国・九州エリアへ、9 月には北海道・東北エリアと沖縄県へ発売エリアへと順次拡大していくという。

ますます勢いづく“新しいチューハイ”は、どのような背景から開発され、認知を拡大していったのか。

今回は、アサヒビール株式会社 ブランドマネージャーの山田佑さんに、同商品の開発経緯や苦労した点、そして中に入った生レモンの秘密についてお話を伺った。

*本稿はVoicyで配信中の音声コンテンツ「DIMEヒット商品総研」から一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

レモンサワー市場の停滞を打破!「生ジョッキ缶」の成功から生まれた、革新的な挑戦

はじめに、山田さんは『未来のレモンサワー』の特徴について、次のように説明する。

「五感をフルに使って楽しむ、新しいレモンサワーです。まず、フルオープンの缶蓋を開けるときに『パカッ』と良い音がして“聴覚”に訴えます。レモンスライスが下からふわっと浮かび上がってくるときの“視覚”、口に運ぶときにレモンスライスの自然な香りを感じる“嗅覚”、実際に飲んだときの“味覚”を楽しめます。レモンは実際に食べることができるので“触覚”も楽しんでいただけます」

“若者の酒離れ”が広がり、酒類の売り上げが芳しくない昨今。チューハイ市場は、右肩上がりで成長を続けていると山田さんは話す。

「チューハイ市場自体は、実は右肩上がりで成長しているんです。特にレモンサワーは、ここ数年ずっとトレンドですね。いろいろな商品が出ており、市場としてはかなり伸びています。とはいえ、やや頭打ち感もあるのが実情でした。甘くないチューハイが消費者に好まれ、無糖サワーの中に多くの商品がひしめいている状態です」

競合ひしめくなか、どのようにして差別化を図るのか。同社は消費者の調査を行いながら模索していったと振り返る。

「定量的なデータはもちろん、特に大事にしているのは、しっかりとお客様の声を聞くことです。さらに、お客様と実際に会いインタビューをして、インサイトの部分を聞き出します。今回のヒアリングから、レモンサワーに対し『変わり映えがしない』と、停滞感があることがわかりました。どうしたらこの人たちをチューハイでワクワクさせられるか、僕らもすごく悩みましたね」

果汁の配合量や、アルコール度数といった従来の差別化ではなく、レモンスライスを入れる「本物入り」の商品を開発するに至った経緯について、山田さんは次のように話す。

「もともとは、2021年に発売したスーパードライの『生ジョッキ缶』が発端です。フルオープンの蓋を開けると泡がモコモコと出てくる商品で、当時はとても話題になりました。お客様に新しい缶ビールの価値を提供でき、市場にもインパクトを与えられたと感じています。『フルオープン缶』は当社にとって重要な資産だったので、これを活用して横展開できないかと考えました」

3年半の時を経て未来のレモンサワーが、チューハイの常識を塗り替える

フルオープン缶を使い、さまざまなフルーツを入れながら数多のパターンを考えたと振り返る山田さん。「レモンサワーで行く」と決めたのは、机上の議論ではなく関係者からの声だったという。

「プロトタイプにレモンスライスを入れたものを開発をして、みんなで飲もうとなったとき、蓋をパカッて開けた瞬間に関係者が『おーっ!』と盛り上がったんです。みんなわくわくして“これは必ずお客様に喜んでもらえる”と確信を持った瞬間でした。その盛り上がりもあって、方向性は社内的にもすぐ通りましたね」

方針はすぐに決まったものの、初の試みということもあり、開発の工程では苦労が多かったと続ける。

「原材料はどこから調達すればいいのか、どうやって加工すればいいのか、賞味期限内に美味しく飲むためにはどう品質保証すればいいのか、そもそもどうやってレモンを入れるのかなど、ゼロベースからのスタートでした。部門横断したプロジェクトチームを結成して、一つひとつ丁寧に課題を解決しながら進めていきましたね」

真摯に課題と向き合った結果、開発に3年半の期間を要することになった『未来のレモンサワー』。なかでも時間がかかったのが、“どうすれば時間が経っても美味しく飲めるか”だった。

「生のレモンを液体に入れると、時間とともに劣化して、美味しくいただけなくなってしまいます。この問題を解決するために、入っているレモンを砂糖でコーティングして乾燥させました。そうすることで、品質保証期間内にしっかりと美味しく、かつ味がじわっと染み出るような設計にできたんです。砂糖でコーティングすることでレモンが硬くなるので、割れるリスクを抑えられたのもポイントですね」

レモンの自然な味わいを楽しみたいニーズに応え、二種類のフレーバーを展開したのもこだわりの一つと話す山田さん。ネーミングにも、想いを込めたと続ける。

「本物が入っているチューハイ、特にレモンスライスが入っているレモンサワーが未来のスタンダードになってほしいという想いを込めました。『未来のレモンサワー』のようなチューハイが普通になることで、お客様の人生も豊かになるだろうと考えたんです。そういった未来が、レモンサワーをきっかけに実現できるといいなと思っています」

首都圏・関信越エリアのRTD市場は前年比130%を記録!顧客の心を掴んだ3つのポイント

商品を市場に投入するにあたり、重要となるのがターゲット設定だ。しかし、『未来のレモンサワー』は、あえて細かなターゲット設定は行わなかったという。

「普段チューハイを好んで飲まれている方はもちろん、まったくチューハイを飲まないビール派の方や、そもそも自ら進んでお酒を買わないお客様にも、お酒の楽しさや、いままでにないワクワクする体験を届けたいと思っていたので、あえて男性・女性や、年齢などの細かいターゲット設定はしていないんです」

レモンスライスの供給の関係上、製造数量の制約がある『未来のレモンサワー』。届けられる人が限られるなかで、まず始めたのは“商品の価値”を知ってもらうことだったと山田さんは話す。

「全国展開するには、まだ供給が追いついてない状態でした。とはいえ、商品の価値を知っていただくには、まず飲んでもらうことが一番だと思っています。そこで、渋谷を拠点に先行イベントを展開しました。まずは商品価値を体験していただくことが、この商品の一丁目一番地だと考えたんです」

イベントでは大きな反響があり、『未来のレモンサワー』が発売された首都圏・関信越エリアのRTD市場は前年比130%を記録。山田さんはヒットの要因についてこう話す。

「一つは、今までにない『本物入り』という点です。 今までのレモンサワー、ひいてはアルコール商品と明確に物として差別化ができました。ゼロからイノベーションを起こして、長い年月をかけて挑戦を続けたことがお客様に評価いただけたのは、とても嬉しいですね」

残り二つの要因について、次のように続ける。

「もう一つは、数量限定だったりエリア限定だったりしたところです。あえて限定にしているわけではありませんが、先行してエリア販売を行うことでお客様の期待感を醸成できたと思っています。最後は、商品価値をお客様にご納得していただけたことです。価格は安価ではありませんが、実際に飲んでみて『価値が見合っている』と感じていただけたからこそ、ヒットに繋がったと思います」

お客様のワクワクに注目せよ!基本に立ち返ることで得られた成長の手応え

『未来のレモンサワー』の開発は、従来とはまったく違うプロジェクトだったと振り返る山田さん。部門を横断し、80人ほどの人たちと協力して作り上げたという。

「大人数でやるメリットは、プロフェッショナルの知恵が結集することです。研究開発やパッケージ作成、製造・原材料調達など、それぞれに長けた人物が社内にはたくさんいます。一方で、多くの人が関わっている分、課題も多かったですね」

スピード感を持って開発するために、複数の課題を抱えながらも走り抜けたと続ける。

「一つひとつ課題を解決しようとすると、かなり時間と労力がかかります。そこで、複数の課題を併走して進めました。何か問題が起きたら、すぐに関係している課題も落とし込んでやる。いわゆる『コンカレントエンジニアリング』を実装したことで、必要以上に時間と労力をかけずに開発できたと思います。上手くいかないことも多かったんですが、お客様が絶対に喜んでくれる確信があったので、全員で『絶対実現するんだ』と明確な目標を持って乗り越えました」

最後に、『未来のレモンサワー』の開発を通して、山田さんご自身とチームでどのような成長があったのか話してくれた。

「商品開発は、『流行っている製品を作ろう』と自社都合の商品が多くなりがちです。ただ、弊社には『お客様のワクワクに注目せよ』という社内方針があります。そこに立ち返り、お客様はどんな商品を心の底で求めていて、どこに心が動くポイントがあるのかを徹底的に突き詰める”基本”を精度高くできるようになったのは、自分にとって成長でした。また、製造や技術のチームメンバーも同じマインドで仕事ができたことは、一体感も生まれ、良い成果だったと思います」

取材・文/久我裕紀

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