最近よく耳にする「アンコンシャス・バイアス」。 無意識の思い込みが、職場や人間関係に悪影響を及ぼす可能性があることをご存知ですか?
この記事では、アンコンシャス・バイアスの具体的な例や、それが引き起こす問題、そして職場における対処法について解説します。
最近耳にするようになった「アンコンシャス・バイアス」とは
「アンコンシャス・バイアス」とは、私たちが知らず知らずのうちに抱いている偏見や思い込みのことを指していて、日本では「無意識の思い込み」という表現をされています。このバイアスは私たちの脳が日常的に膨大な情報を処理していく中で、その情報を効率よく整理するために、過去の経験や今まで見聞きしたことに基づいて「ショートカット」を作り、私たちが瞬時に判断を下す際に影響を与えているものと言われています。
これは誰しもが持っているもので、過去の経験や文化的背景、社会的影響を通じて形成されるものなので、完全に払拭するのはなかなか難しいものでもあります。しかし、これを意識せずに気付かないままでいると、自分や周りの人の可能性を狭めてしまったり、誰かを傷つけてしまったりする場合があります。また、職場においてはハラスメントといった形で現れる可能性もあるわけです。
実は身近なところに潜んでいる「アンコンシャス・バイアス」事例
「アンコンシャス・バイアス」は、職場では見過ごされがちな問題ではありますが、組織の多様性や公平性に対して阻害する原因となることがあります。職場で身近に潜んでいるアンコンシャス・バイアスの事例として以下のものが挙げられます。
1)性別による役割分担の偏見
会議の議事録作成や来客対応などを無意識のうちに女性に任せてしまったり、良かれと思って女性には残業を指示せず、定時での退社を促してしまったりすること。逆に、重い荷物を運ぶのを男性に任せてしまったり、男性だから当たり前だと思って残業を指示してしまったりすること。
2)学歴や出身地への固定観念
「◯◯大学出身だから、これぐらいの仕事はできるでしょう」「地方出身だから都会での仕事は任せない方がいいのではないか」といった無意識の判断がされてしまうこと。
3)年齢によるステレオタイプ
若手社員に対して「経験が浅いから任せられない」、逆に年配社員に対して「新しい技術は覚えられない」と決めつけてしまうこと。
4)ワーキングマザーへの無意識の制約
「子どもがいるから出張や残業は無理だろう」といった、良かれと思った上での無意識の配慮をしてしまうこと。
5)名前や見た目による先入観
履歴書の内容や面接時の名前や外見だけで性格や能力を勝手に思い込んでしまうこと。
6)職種に対する固定観念
IT部門には男性が、そして接客業務には女性が適しているという勝手な思い込みによって特定の性別や属性の人が特定の職種に集中してしまうこと。
以上のような事例はほんの一部になります。また「アンコンシャス・バイアス」は「相手」に対するものだけではありません。「自分自身」に向けられているものもあれば、「モノ」に対するものもあり、日常や職場にもたくさん存在しているのです。みなさんも思い当たるものがあったのではないでしょうか。ぜひ他にも思い当たることがないかどうか考えていただければと思います。
職場にもたらす悪影響
アンコンシャス・バイアスは「相手」に対するものだけではなく「自分自身」に対すものもあるということはお伝えしました。まずその点について考えてみたいと思います。自分自身に対するアンコンシャス・バイアスとしては以下のものがあげられます。
1)自己否定や自己制限
「自分にはこれができない」「自分はこの分野に向いていない」という思い込みや過去の失敗や他人からの評価によって実際には可能な挑戦や成長の機会を避けてしまう。
2)自己概念の低下
自分が成功できる可能性や能力を信じられなくなったり、自分には価値があるのかという疑いの気持ちをもってしまったりすることで、本来発揮できる能力を発揮できなくなってしまう。
3)選択肢の狭まり
自分は男性だから、女性だから、もうこんな年齢だからといった性別、年齢、学歴、職歴などに基づくステレオタイプにより自身のキャリアや学習の選択肢を無意識に制限してしまう。
4)ストレスや不安の増加
「もっと頑張らなければならない」「絶対に失敗してはいけない」という無意識のプレッシャーにより過剰なストレスや自己批判につながってしまう。
5)人間関係への影響
自分自身に対して「人と話すのが苦手」とか、「こんな自分と話をしてくれる人なんていない」といったネガティブな感情によって自信を持てなくなったり、コミュニケーションを円滑に行えなくなってしまう。
これらのように、アンコンシャス・バイアスは自己評価や行動にさまざまな悪影響をおよぼすことがあります。そして結果的に職場への悪影響につながっていくこともあるのです。では、次に職場にもたらす「悪影響」についても見ていきたいと思います。
1)不公平な評価や機会の格差
アンコンシャス・バイアスが評価や昇進に影響を及ぼすと、特定の人が不当な扱いを受ける可能性があります。例えば、同じ成果を上げているにもかかわらず、性別や年齢、背景によって評価が異なるといったことが当てはまります。このようなことが起こると社員のモチベーションや会社に対するエンゲージメントの低下にもつながりますし、それに伴って離職率が上がってしまうことも考えられます。
2)多様性の欠如
無意識の偏見により、例えば女性、外国人、高齢者などの特定の属性を持つ人々に対して採用や昇進の場面で不利に扱ってしまうことがあります。結果的に多様な視点やアイデアが抑制されて組織に取り入れられず、イノベーションが起こりにくい環境が作られてしまいます。また、最近では性的な差別によるハラスメントにもつながってしまう可能性もあります。
3)チーム内の信頼関係の損失
偏見に基づく発言や行動が無意識に行われると、特定の社員が疎外感を感じてしまったり、メンバー同士の信頼や協力関係が崩れてしまったり、結果的にチーム全体のパフォーマンスが低下する可能性もあります。
4)採用活動への悪影響
名前や学歴・経歴だけで候補者の能力を判断してしまうと、本来の能力や素質などで判断をすることが出来なくなってしまい、優秀な人材を採用が出来ず、企業競争力を低下させることにもつながってしまいます。
5)生産性の低下
不公平な扱いや職場環境のストレスが原因で、容易に発言が出来なかったり、発言をしても受け入れてもらえなかったり、結果的に職場の心理的安全性が確保されずに社員が力を発揮できなくなり、会社全体の生産性の低下にもつながります。
6)組織の評判低下
組織における不公平な扱いが明るみに出ると、社内にとどまらず対外的にも企業の評判が損なわれる可能性があります。「この企業はダイバーシティを尊重しない会社だ」とレッテルを貼られてしまったり、優秀な人材の確保もさることながら顧客や投資家からの信頼が失われる原因にもなってしまいます。
これらのようにアンコンシャス・バイアスは意図せずに人間の評価や意思決定に影響を与え、それが職場や人間関係で不公平を生んでしまうことによって企業の成長や経営にも悪影響をおよぼしているものがあるのです。
職場におけるアンコンシャス・バイアスへの対処法
アンコンシャスバイアスは人間であれば誰にでもある自然な心理現象です。そして「無意識」であるがために個人では気づきにくいものでもあります。だからこそ、個人個人で自分がどのような偏見や固定観念を持っている可能性があるのかを意識することが大切な第一歩となります。また、個人で気づけない部分については組織全体で取り組むことが重要となるのです。
職場においてもアンコンシャス・バイアスがあることを理解していれば、「このクライアントはこの商品は求めていないはず」といった無意識の思い込みによって提案が出来ないといったことがなくなるかもしれません。このように日々アンコンシャス・バイアスの存在を意識することで、ビジネスにおいてもプライベートにおいても可能性が広がっていくのではないかと思っています。
文/武田正行
たけだ・まさゆき。1978年東京生まれ。2008年10月に大槻経営労務管理事務所入所。現在、約20000の企業の社会保険手続きや数万の企業の相談顧問を行なう。また、ハラスメント・コンプライアンス外部相談窓口のリーダーとして相談員の業務も行っている。
“昭和な呪い”という名のアンコンシャスバイアス!?3万人の結婚迷い人を導いた婚活コンサルタントが指南する解呪術
3万人の婚活迷い人をサポートしてきた婚活コンサルタント松尾知枝氏の新刊、令和なマインドエクササイズ本『あなたの生きづらさ“昭和な呪い”のせいでした』が発売された。
幼少期、児童養護施設という特別な環境で育ち、そこから独自の視点と強さを培う自己啓蒙法を編みだし、CA、タレントなど数々の夢に挑戦し、自己実現してきた著者。
現在、その経験を活かし、心理学とコーチングを基に、心から望むライフデザインを自己決定できるための婚活支援コンサルタント事業に取り組んでいる。
この本は、著者の婚活コンサル受講生たちが効果を実感し高評価を得た選りすぐりのワークを掲載。典型的な「昭和な呪い」のフレーズも紹介しつつ、私たちの中に根付く古い価値観を見つめ直し、それを解くための具体的なステップを提供し、日々のストレスに悩むビジネスパーソンにも役立つ内容がつまった一冊となっている。今回、著者の松尾氏にお話を伺った。
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職場で家庭でストレスを生み出す“昭和の呪い”って?
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男性が育児休暇を取ろうとすると「男は働くのが当たり前」と批判されたり、「家事は女性がするもの」という考えから家事に協力的な夫はレアでイクメンなる言葉がもてはやされたり、女性が管理職を目指すと、「子育てと両立できるの?」と質問されたり…。最近、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」というワードが注目を集めている。これは、私たちが気づかぬうちに社会的なステレオタイプを取り込み、それが日常の判断や行動に無意識に影響を与える現象だ。
昭和の時代には、性別や年齢、家庭内の役割についての一律の価値観が支配的だった。この価値観は、家族や社会で当然のように受け入れられ、異論を唱えることが少なかった。令和という多様性を重んじる時代になった現在も、こうした偏見が無意識のうちに意思決定に影響を与え続けている。
今まで婚活に悩む迷い人3万人をアドバイスし導いてきた婚活コンサルタントの松尾知枝氏は、こうした古い偏見や固定観念を「昭和の呪い」と表現し、その影響から解放されるための方法を提案する書籍をリリースした。松尾氏によれば、多くの女性が「結婚しなければならない」という強迫観念にとらわれ、自分らしい選択をすることをはばかり、それが婚活の最大の壁になっていると指摘している。
婚活だけじゃない!キャリア・ライフの悩みを解消する松尾知枝流マインドセット
「『女は結婚して子どもを産んで一人前』は今も根強く残る古い価値観信仰の一つ。
未婚女性は周囲から『あなたのためを思って言ってるの』と〞善意〝のアドバイスシャワーを浴びせられ続けます。
『(親や親戚から)いい加減早く結婚しなさい』、『35歳以上なのに、理想が高すぎるんじゃない?』、『高齢出産は、リスクが高くなるから、若ければ若いほうがいいよ』……。
家族や身近な人、あるいはメディアの記事を目にしているうち、みんなと同じじゃない自分はダメなのだと思い悩むようになります。
『結婚していない、出産を経験していないことに、負い目があります。結婚、出産していないと、社会に存在することすら許されてないようで……』と悩む女性の声が絶えません」
そんな方々に寄り添い、接してるうちに、松尾さんは、ある真実に気づいたと言う。
「お客さまの悩みの原因になっているのは異性との駆け引きのテクニックではなく、偏見という名の昭和な呪いにあるということに気づきました。昭和的な考えを背景とする、これらの呪いは、多様性を尊重する現代社会において改善が求められています。
私の婚活講座は、結婚することを目標としたコンサルでありながら、実は昭和な古い価値観から自分を取り戻し、より良い自分らしい人生を選択するためのプロセスでもあったのです」
現代の婚活は単に結婚を目指す活動ではなく、自分自身と向き合い、時代に根付く偏見から解放され、自由な人生を選び取るプロセスでもあると強く語る松尾氏。
彼女のワークは単に婚活のための恋愛テクニック指南だけにおさまらず、キャリアとライフイベントの狭間で直面するストレスから自身を解放し健全な状態にマインドセットしたい誰氏にもとって、とても効果的というわけだ。
現代社会に潜む7つの“昭和な呪い”とは?
松尾知枝氏は、まずは日常生活や職場に今も根強く残る“昭和の呪い”に気づくことこそが、自分らしい生き方を取り戻す鍵であると提案している。
松尾氏は、特に現代社会において問題として取り沙汰されがちな以下のような7つのジャンルに“呪い”を分類している。
• 集団調和を優先し、個性や意見を抑え込む風潮「空気を読めの呪い」
• 性別による固定観念を生み出す「ジェンダーの呪い」
• 過剰な働き方や自己犠牲を美徳とする思考「24時間戦えますか? の呪い」
• 年齢に基づく役割や能力へのステレオタイプ化「年齢の呪い」
• 育児や家事を女性に押し付ける固定観念「ママなんだからの呪い」
• 他人との比較で優劣を競い合う「マウンティングの呪い」
• 家庭内の過干渉やモラハラを助長する価値観「アットホームの呪い」
これらの“呪い”に気づくことが、より自分らしい人生を歩む第一歩であると語る松尾氏。。
次回は、日常的に気づかないうちに、あなたも使ってしまっているかもしれない“昭和の呪い”の代表的なフレーズを紹介する。
また気になった方は、松尾氏のマインドセットワークも掲載されている書籍「あなたの行きづらさ“昭和な呪い”のせいでした」も、是非、読んでみていただきたい。
●著者プロフィール
松尾 知枝(まつおちえ)
婚活コンサルタント、株式会社インプレシャス 代表取締役
10歳から8年間、児童養護施設で暮らす。 つらい幼少期を経て、 自身で考案したメンタルエクササイズにより呪いを解き、 目標達成する面白さに目覚める。 新卒で日本航空に入社。CAとして国内線、国際線に乗務。 2011年より自身の経験と心理学をベースにした婚活支援を行う。 自己肯定感を高め、心から望むライフデザインを描きたい女性から 大きな支持を受ける。情報番組出演や東京都の婚活支援事業、 ゼクシィ縁結びのコラムに監修として携わるなど、活躍の場を広げている。 著書に『3ヶ月でベストパートナーと結婚する方法』(かんき出版)、 『3年以内に成功する男、消える男』(フォレスト出版)、 『1日5分で夢が叶う 日記の魔法』(中経出版)