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石破首相が「令和の日本列島改造」を提唱、元ネタの「日本列島改造論」を説明できる?

2025.01.06

日本列島改造論(にほんれっとうかいぞうろん)は、1972年に当時の日本の首相であった田中角栄が提唱した政策の総称です。

この計画は、地域間の格差を是正し、国土の均衡ある発展を目指すもので、日本の経済・社会の大規模な構造改革を志向していました。田中角栄が著した『日本列島改造論』という書籍がその思想を広く世に知らしめました。高度経済成長期のひずみによって生まれた 過密と過疎 という問題を解消し、日本全国をバランスよく発展させる ことを目指した構想です。

背景

1970年代当時、日本は高度経済成長を続けていましたが、その恩恵は主に都市部(特に東京や大阪など)に集中しており、地方の過疎化や都市部の過密化が進行していました。これらの問題を解決し、地域間の経済的格差を是正することが喫緊の課題でした。

計画の具体的内容

1972年、田中角栄は「日本列島改造論」を提唱し、経済政策と国土開発の方向性を明示しました。この計画の核となるのは、全国に交通インフラを整備し、地方の産業基盤を強化することで、東京や大阪などの大都市圏に過度に集中する人口や経済活動を地方に分散させることです。

交通インフラの整備

田中角栄は、新幹線や高速道路網の拡張を通じて、地方と都市部を高速で結ぶ交通網を整えることを目指しました。例えば、東北新幹線や上越新幹線の計画は、このビジョンの一環として具体化されました。また、地方の港湾や空港も整備され、物流の効率化が図られました。これにより、地方の産業振興を後押しし、経済成長を全国的に分散する狙いがありました。

産業基盤の地方分散

地方の特性に応じた産業クラスターを形成しようとしました。たとえば、農業や観光業を強化するために、地方への企業誘致を促進し、都市からの投資を地方に呼び込む仕組みが提案されました。また、大規模な工業団地を地方に建設することで、都市部の工場の地方移転を推進しました。

地方の生活環境改善

教育施設や医療施設の整備を通じて、地方での生活を向上させることも目標に掲げました。地方に住む人々が都市部と同様の社会サービスを受けられるようにし、地方の住みやすさを向上させて人口流出を抑える狙いがありました。

成果

日本列島改造論の一部は成功を収め、現代日本の発展に大きく寄与しました。

交通網の充実と地方活性化

例えば、上越新幹線(東京と新潟を結ぶ)が開通したことで、首都圏と地方の距離が物理的に縮まり、地方の観光業や物流が活発化しました。また、東名高速道路や名神高速道路の整備は、全国的な物流網の基盤となり、地方経済の成長を促進しました。

産業の地方移転

工場の地方移転が進み、地方に新しい雇用が生まれたことも成果の一つです。特に、新幹線や高速道路の整備により交通アクセスが改善された地方都市(例:静岡や群馬など)は、経済的に恩恵を受けました。

地方の生活水準の向上

これまで不便だった地方の都市に教育施設、病院、公園などが整備されることで、地方の住民が都市部と同等の生活水準を享受できるようになり、地方都市が徐々に自立的に成長する基盤が形成されました。

批判の具体例

日本列島改造計画はその野心的な目標ゆえに、いくつかの深刻な問題も引き起こしました。

地価高騰とバブル経済の助長

日本列島改造論が発表されると、地方の土地への期待が高まり、全国的に地価が急騰しました。この動きは一部の投機を生み、地価バブルの原因の一つとなりました。特に都市部では、投資目的の土地取引が横行し、一般市民にとって住居が手に入れにくい状況が生じました。

環境破壊と無秩序な開発

高速道路や新幹線の建設に伴う山林の伐採、河川の埋め立てなどが行われ、一部では環境破壊が深刻な問題となりました。また、地方における無秩序な開発により、一部の地域では過剰な開発が行われ、生活環境が悪化した例もあります。

格差解消の不徹底

計画の目指した「地域間格差の解消」は、結果的に完全には達成されませんでした。新幹線や高速道路の整備は一部の地方都市に経済的恩恵をもたらしましたが、それ以外の過疎地域では開発が進まず、逆に格差が拡大した地域もあります。

地方依存の構造的問題

多くの地方が中央政府の補助金や公共事業に依存する経済構造が形成されてしまい、地方自治体の財政基盤が弱体化するという問題も浮上しました。

まとめ

日本列島改造論は、地方の発展と格差是正を目指した画期的な政策でしたが、その実施には限界がありました。交通インフラの充実や地方都市の成長促進など一定の成果を上げた一方で、過剰な土地投機や環境破壊、さらには格差解消の不徹底という副作用も生みました。計画の理念自体は現在でも「地方創生」政策などで受け継がれていますが、その実現には現代の課題に即した新たな取り組みが求められています。

文/編集部

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