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「カカオを作りたくない」チョコレートを取り扱う森永製菓がガーナを訪問して知った現実

2024.12.30

「チョコレートってこの世にあっていいのか」と葛藤 それでも「笑顔をつなぐものに変える」と決意

学校の給食の様子/写真提供:森永製菓株式会社

D:実際に生産者とお会いしていかがでしたか。

植竹:今回のガーナ訪問で、実際に児童労働の当事者の子どもと保護者2組にお会いして、1時間以上じっくり対話しました。

村長老会メンバーとの対話/写真提供:森永製菓株式会社

B君という男の子は、生活のために北部から移民してずっとカカオ農園で働いて来ました。その頃はB君の親御さんが「学校の重要性」を理解していなかったので、B君は3年生で学校を辞めました。でもこのプロジェクトが入ったことによって教育の重要性を理解し、少しずつ学校に行くようになりました。実年齢より下の学年の教育を受けていますし、まだまだ経済的に厳しいところがあるので、一部児童労働はしていて、プロジェクトの注意対象になっています。

D:経済的な事情もあるから、いきなり労働をゼロにするというのは難しいのですね。

現地を訪れたことでより実情を知った3人が発信していく

植竹:『1チョコ for 1スマイル』なので、「もう一人の笑顔に会いに」というタイトル通り、「笑顔」に会いに行ったはずなのです。でも実際に児童労働の当事者の子どもたちとその保護者に話を聞いたら、みんな厳しい環境について話されている。

私はチョコレートが大好きで、お菓子が大好きで森永製菓に入り、チョコレートのマーケターとしてチョコレートに誇りを持って働いていました。でも実際に現地に行ったら、子どもたちは「将来は裁判官になりたい」「警察官になりたい」と言う。「なぜなら、それらはプロフェショナルな仕事だから」と。つまり、「カカオ農家はプロフェッショナルな仕事ではない」と思っているのです。さらに保護者も、「子どもたちには引き継がせたくない」「カカオ農家にはなってほしくない」「もっと輝かしい仕事についてほしい」と語っています。そのことがすごくショックで、この訪問の中で一番印象に残っています。

カカオ農家の方との対話/写真提供:森永製菓株式会社

D:カカオ生産者が「カカオを作りたくない」と思う環境は、チョコレートメーカーとして切なく感じますね。

植竹:もう1組対話をしたAさんは、当時11歳の私の長女と同じ年だったので、母親としてもショックでした。「お母さんみたいになりたくない」と言われているようで。「チョコレートってこの世にあっていいものなのか」と絶望的な気持ちになってしまいました。

ガーナのカカオ農園/写真提供:森永製菓株式会社

ただ、元をたどると、チョコレートはすごくおいしくて私もワクワクして、世界中の人も笑顔になっている。本来はチョコレートのパワーは人を笑顔に変えるもの。私たちは課題を解決する方向に動いて、チョコレートを「笑顔をつなぐもの」に変える。それが私の責務だと思いました。「自分の責務は何か」という部分を持ったことが、この旅の一番の決断でした。

渡辺:プロジェクトが入る前は、そもそも「児童労働ってなんなのか」を、知らない保護者もいたのです。自分たちは当たり前に子どもの頃から働いてきたので、「やってはいけないこと」というのをそもそも知らないのです。

D:『1チョコ for 1スマイル』を実施したことで、どれくらい支援ができたのでしょうか。

学校に通う子どもたちの劇/写真提供:森永製菓株式会社

渡辺:23年に現地訪問した時は、支援完了と支援中の両方のエリアに行ってきました。我々の支援地域は2か所です。1か所は、支援前に学校に行っていた子どもが100人でしたが、支援後に200人になりました。もう1か所は60人から180人になりました。支援が終わっているところは、支援地域のコミュニティの全員が学校に行けている状態を作りあげています。

今回ガーナに渡航して、対話して、すごく気づくことが多かったです。きれいごとだけではなく、「カカオ農家の人たちってこういう暮らしをしているんだ」「こういう悩みを持っているんだ」と感じました。歴史背景など、その国に身を浸すことによって感じること、考えることがあると。『1チョコ for 1スマイル』の取り組みはガーナだけでありません。カカオの国、生産国についてもっと理解しないといけないと思います。

「森永エンゼルミュージアム MORIUM(モリウム)」に展示してあるDARSチョコの地球型模型

実際にガーナを訪問し、カカオ生産国の現状を知った渡辺さん、植竹さん、小野さん。3人を筆頭にコーポレートコミュニケーション部がカカオ生産国について情報発信し、会社全体のサステナ活動として『1チョコ for 1スマイル』が認知されている。記事後編では、チョコレートソムリエの資格を持つカカオマニアの小野さんが、日本でカカオ栽培に挑戦した話や、『1チョコ for 1スマイル』の今後の活動について紹介する。

取材・文/コティマム

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