昨今、“ウェルビーイング経営”に取り組む企業が増えている。自社で働く従業員や消費者だけにとどまらず、「自社商品やサービスを生み出すために関わる相手」のウェルビーイングを考えることも、企業の努めと言える。
「ダース」や「小枝」などのお菓子を販売する食品メーカーの森永製菓株式会社では2008年から、チョコレートの原料であるカカオ生産国を支援する『1チョコ for 1スマイル』の取り組みを行っている。同プロジェクトは、カカオ生産国の子どもたちの教育環境の改善や児童労働問題を改善するもの。
今回、森永製菓・コーポレートコミュニケーション部の渡辺啓太さん、植竹麻衣子さん、同社研究所のシニアエキスパートでチョコレートソムリエの資格を持つ小野隆さんに話を伺った。記事前編では、『1チョコ for 1スマイル』の取り組みについて紹介する。
学校に行かずに働いている子どもたちがいるカカオ生産国にチョコレートで笑顔を届ける
森永製菓株式会社の小野隆さん、植竹麻衣子さん、渡辺啓太さん(左から)
DIME WELLBEING(以下、D):『1チョコ for 1スマイル』の取り組みについて教えてください。
渡辺啓太さん(以下、渡辺):『1チョコ for 1スマイル』は、森永製菓が08年から続けている活動です。チョコレートの原料のカカオが作られる赤道近くの国々は、十分な教育環境が整っていない地域が多いです。そのため経済的な自立が難しく、子どもが働かざるを得ないという問題があります。『1チョコ for 1スマイル』は、ガーナなど“カカオの国の未来”を担う子どもたちの教育環境や児童労働を改善するため、森永製菓の売り上げの一部を使って支援する活動です。
D:具体的にどのように支援しているのですか。
渡辺:08年から国際NGOプラン・インターナショナル様と、11年から日本生まれのNGOのACE様に支援パートナーになっていただいています。森永製菓の「カカオを使っている商品」を包括して、両団体に一定額を寄付させていただき、支援パートナー様がその寄付金を具体的にどのように使うかを決定します。
ACE様は「スマイル・ガーナプロジェクト」という活動をガーナでされているので、ガーナに対して支援金を使われています。プラン様は年によって国が違いますが、「カカオを生産している国々」を支援しています。今年はエクアドル、昨年はグアテマラでした。
ACE「スマイル・ガーナプロジェクト」で提供したカバン/写真提供:森永製菓株式会社
支援の内容としては、プラン様は教室の建設や、健康などに関する意識啓発活動、教師向けのトレーニングも行っています。ACE様は「スマイル・ガーナプロジェクト」の支援内容が多岐にわたっています。子どもの就学支援として、分かりやすいものでは文房具やカバンなどの提供や、カカオ農家の技術向上、給食が提供できる仕組みづくり、児童労働が起きないように「子ども保護委員会」というボランティア団体を作って見回りや声掛けをするシステム構築などを行っています。
『1チョコ for 1スマイル』として、08年からガーナ、インドネシア、フィリピン、グアテマラ、エクアドル、カメルーンの6か国を支援してきました。先ほど申し上げた森永製菓からの年間を通して行う寄付に加え、消費者の方にもご協力いただく「特別期間」を設けています。特別期間では、「対象商品1点につき1円を寄付するキャンペーン」を毎年実施しています。