ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載「Wellbeing Beauty by MICHIRU」。
連載第三回目は、化粧品からサプリメント、食品までを幅広く扱う国産オーガニックブランド「アムリターラ」代表の勝田小百合さんにお話を伺っていく。
後編では、オーガニックコスメブランド「アムリターラ」のもう一つの顔、食品部門である「アムリターラフーズ」に焦点を当てる。
アンチエイジングの鬼が率いるコスメブランド「アムリターラ」に聞く、不老なオーガニックの実現度
オーガニックとアンチエイジング。なんだか川の対岸にある価値観のように感じるが、実際はどうなのだろう? ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載...
アムリターラ代表の勝田さんが語る〝ナチュラル・オーガニック〟を扱う責任と覚悟
ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載「Wellbeing Beauty by MICHIRU」。 連載第三回目は、化粧品からサプリメント、...
豊富な商品ラインアップのストーリー一つひとつに話が止まらない、アムリターラ代表の勝田小百合さん(右)と、ビューティーディレクターのMICHIRUさん(左)。
アンチエイジング視点で始まった食の取り扱いの広がりの歴史
酢や味噌、醤油といった発酵調味料から、乾物やお茶、コーヒーまで50種近くの多岐に渡る食品を展開しているアムリターラの食品部門「アムリターラフーズ」。
後編ではアムリターラフーズの立ち上げ、そしていくつかの商品に紐づく忘れ難いエピソードを伺った。食べることと、コスメを使うことがストンとつながる対談に。
MICHIRUさん(以下、MICHIRU):アムリターラの食品部門「アムリターラフーズ」には私もお気に入りで日々いただいているものがいくつもあります。アムリターラフーズはいつ頃からはじめられたのですか?
勝田:今年で10周年になります。自社農園やお米の販売は初期からやっていましたが、フーズ部門として商品を探して揃えていくのは1人では難しくて、人との出会いと時間が必要でした。
MICHIRU:今では外側の美しさにインナービューティーが欠かせないと多くの人が知っています。それでも化粧品会社がここまで食品を充実させているのは珍しいですよね。これはやっぱりアンチエイジングのために必要だと感じたからですか?
勝田:それはもちろん! 私の場合は全てがアンチエイジングの視点から始まっていますから。ただ一番大きなきっかけは、東日本大震災でした。
まだその頃はブログでオーガニックのものをセレクトして紹介していたのですが、オーガニックだからといっても放射能検査についての考え方は生産者さんそれぞれ異なったんです。私は1ベクレルでもどうしようという考えだったので、調査するのにも疲れてしまって。きっと私と同じような意識の人たちはみんな疲れているだろう、だったら安心するフードを提供する必要があると思うようになりました。
パワーを持ったものが失われていく世界を食、そして人からアムリターラフーズが掘り起こす
MICHIRU:アムリターラフーズには発酵調味料だけでなく、個人の生産者さんの生産物や1年に2日しか採れない「幻の2日ひじき」などといった、他にはない商品も多いですよね。どのような食材や商品の探し方をされているのですか?
勝田:これは今、アムリターラで食品開発を担当している亀山という者の力が大きいです。彼と共に直接現地まで足を運んで、関係性を作って、普段外には出していない商品を出していただいたり、もう消えかけていたようなかつての製法を復活させてもらったりして、アムリターラフーズでしか手に入らない製品を実現しています。
たとえば発酵調味料。ご存知だと思うのですが、一般に販売されている調味料は効率や時間を重視して、本来の作り方を変えてしまったり、材料を使用していないものが多くあります。その結果、添加物に頼るばかりでなく、前編でもお話しした微生物が作り出すはずだった栄養素や酵素を摂取できなくなってしまっているんですね。この微生物が作り出すものこそ、アンチエイジングにつながるはずなのに、です。
MICHIRU:では、ここに並んでいる調味料はみんな昔ながらの作り方を?
左から「愛の深いみりん」、「刻を架ける醤油」、対談に登場した「玄米黒酢」、「アムリターラ米味噌」。どれも手間、時間を惜しまず発酵、醸造して作られているもの。
勝田:たとえば玄米黒酢ですが、お米に麹菌がつきやすくするため玄米といっても精米しているものがほとんど。でも「蔵付き麹菌 かめ壺仕込み 玄米黒酢」をお願いしている蔵では、玄米に少し傷をつけることで麹菌を入れる技術を用いて黒酢を作っています。アムリターラで自然栽培で育てた玄米に蔵付きの麹を混ぜ、蔵のかめ壺にやはり長く住んでいる酵母や酢酸菌によって長期発酵熟成したオリジナルの黒酢。この蔵も戦後、昔ながらの製法が失われることに危機感を抱いた方々が立ち上げ、それを今の人たちが受け継いで繋げてきてくれた場所です。
MICHIRU:まろやかでとてもコクがあるお味ですよね。化粧品を作っている会社に、こんな失われつつある食の技術があるなんて誰も思っていないと思います。
勝田:また、とてもいいものだけれど全国には広がっていない食品もまだまだたくさんあって。さっき挙げてくださった「幻の2日ひじき」も、ほんの少ししか採れないものなので、現地や限られたエリアで食べられていたものを、私たちみんなで現地に出向いてお話をして、製品化に繋げられました。こういうものも少なくありません。
ただオーガニックであればなんでも良いわけではないんですよね。土地が持つパワーや古来から受け継がれてきたパワーも含めてお届けしたい。だからそれら失われないようにもしたくて、より根っこのもの……在来のものや古代品種、有機栽培よりは自然栽培であったり、より野生に近いものを選ぶようにしていると話しています。
MICHIRU:すべての商品の作り手さんとのストーリーを聞きたくなってきました!
勝田:もう本当に、全てにドラマがあるので語ったら止まりません。MICHIRUさんのようにおっしゃってくださる方も多いですし、裏側にあるストーリーをお届けしていくことも大切にしています。そうすると自然と良さもわかっていただけると思いますから。
食と技の継承から繋がっていく文化の継承。未来に向けて
勝田:食品だけでなく、コスメやサプリでもそういった伝統文化や環境に対する貢献はできると考えています。特にアムリターラでは化粧品と食品を作っているからこそできることもあります。
MICHIRU:それって?
勝田:たとえば社内で素材である植物のアップサイクルが始まっています。たとえばレモンだとしたら、果汁をジュースにして、皮は蒸留して精油はクレンジング剤に使い、蒸留水はボディミストに使う、というように。
また徳島県を中心とした藍染め文化。藍にはトリンプタスリンという抗ウイルスに強い成分がありかつては戦国武将に重宝されていました。これはニキビのお悩みなど肌にも作用してくれるので、今は石鹸という形で藍の生産と文化の継続に一助になれているかなと思っています。
写真右が、藍を使用した「インディゴ バランシング ソープ」。写真左は、四万十川流域の檜間伐材を蒸留した檜水をベースにした歯磨き「トータル バランス オーガニック トゥースペースと」。檜水を使うのは、森を豊かにするための選択でもある。
MICHIRU:アンチエイジングのためと言いながら、環境や文化的なことまで考えが至っていらっしゃる。
勝田:自分だけが良いものを食べて、良いものを使っていてもダメなんですよね。私たちは環境の中で生きているので。環境問題がセットというのは、もう初めからありました。
それに素材を探し歩くと、いろいろな問題も知ることになります。たとえば自社農園は九州にあるのですが、稲作を任せている方のお話を聞くと森の問題から水の問題を知ることになったりもします。全て自分に返ってくることなので、知り得た問題は無視せず、アムリターラの製品を作る中で何かできることを常に考えていますね。
コスメも食品も作っているから提案できる「流れる美しい循環」をここから
MICHIRU:これからのアムリターラについても伺っていいですか? 本質は変わらず「オーガニックであること」だと思うのですが、その次に見据えていることはありますか。
勝田:オーガニックは普遍的なもので、流行り廃りではないと考えています。私たち人間自体がオーガニックな存在ですから。オーガニックコスメも市民権は得てきたと思いますが、ただ消費されている「モノ」ではなく、みなさんがその裏側を見られるようになるといいなと感じています。作ってくださる方がいること、微生物や植物、動物のことなど。
買い物は一つの投票行動ですよね。そういったストーリーを知ってもらうことで、皆さんが選ぶものが世界を変えていくはず。アムリターラがそれを伝えていく役割を果たして行けたらいいなと感じています。
MICHIRU:循環していますね。食と美容と、人間の体の中も全部。
勝田:流れるから、美しいんです。まだまだ成し遂げていないこともありますし、先ほどお話しした原料のアップサイクルももっと研究を進めて、余すことなく使えるようにしていきたい。変わっていくことが生きることなので、いい循環を生み出していけたらと思っています。
<プロフィール>
勝田小百合(かつた・さゆり)
1968年大阪府生まれ。カイロプラクターとして骨の歪みの矯正や、食事・生活指導も行う代替医療の治療家。30代からエイジレスな生き方の研究を始め、2005年に始めた「アンチエイジングの鬼」はインナービューティーから美容を語る先駆的な目線で超人気ブログとなる。2008年、国産オーガニックコスメ&フーズブランドの草分け「アムリターラ」を創業。代表と商品開発を兼務。『アンチエイジングの鬼』『老けないオーガニック』『FLOWで不老』等著書多数。
※アムリターラにおける「オーガニック」とは、前編で紹介した「化粧品の10の約束」のほか、サプリメント、フードも自社独自に取り決めた「10の約束」と言う厳しい基準をクリアしたものを言う。(詳しくはコチラより)
MICHIRU(みちる)
メイクアップアーティスト・ビューティーディレクター/渡仏、渡米を経て、国内外のファッション誌や広告、ファッションショーやメイクアイテムのディレクション、女優やアーティストのメイクなどを数多く手がける。また体の内側からきれいになれるインナービューティを提唱するなど幅広く活躍中。本連載ではナビゲーターを務める。