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世界はどう動く?2025年の注目すべき地政学的動向TOP10

2025.01.02

EYストラテジー・アンド・コンサルティングにて戦略コンサルティングサービスを提供するEYパルテノンは、地政学が今後1年間で世界の市場にどのような機会と課題をもたらすかについて考察する最新のレポート「2025 Geostrategic Outlook(2025年に予想される地政学的動向トップ10)」を発表した。

ここからは同社発表リリースをもとに、その概要をお伝えしていく。

2025年に世界的な潮流を形作る3つの主要テーマを特定

2024年は、「世界的な選挙イヤー」により、政治的および政策的な不確実性が目立つ1年となった。EYでは、2025年に世界的な潮流を形作る3つの主要テーマを特定した。

第一に、選挙後の政治指導者は選挙戦から統治へと焦点を移し、これにより世界中の政策や規制が変化する可能性がある。

第二に、各国政府が経済上の優位性・競争力および経済主権を確保するために保護的な政策を強化する可能性が高まり、特に、デジタル技術と気候技術が注目されることが予測される。

第三に、地政学的競争が激化する中で、各国が独自の外交政策やビジネスルールを作るため、クロスボーダービジネス活動と両立し得ない基準やシステムなどが制定され、グローバル経済をさらに複雑化させる。

地政学的情勢はグローバリゼーションの方向を変えることになり、企業の原料や製品の調達先、投資先や売却先が限定される可能性がある。

3つの主要テーマと2025年地政学的動向トップ10

■各国リーダーの軸足は選挙から統治へ

<1. ポピュリズム政策の影響>
ポピュリズムの影響から、保護主義の強化、移民の制限などが懸念され、グリーン政策には圧力がかかるだろう。CEOは、社内外のセンシティブな政治的課題に対処するためのコミュニケーション戦略を策定し、地政学的動向から生じ得る事業上のリスクやレピュテーションリスクの軽減が必要になる。

<2. 課税に関する難題>
各国の新政府は、債務負担残高を減らすために、企業への法人増税、資産への課税、高所得世帯への増税をはじめとする代替戦略を模索するとみられる。企業はステークホルダーと協力して、潜在的な税制改正の影響を明確化しつつ、政府が効率的な税制政策を形成するのを支援することが望ましい。

<3. 人口動態からみえる分断>
人口の高齢者層と若年層、そして移民層とが相互に及ぼし合う影響が、国内ならびに世界的な政治的な力学をつくり変えている方向性に一層拍車をかけるとみられる。経営者は移民の経済的な正当性を政府に訴え、人材の獲得と維持に資する柔軟な労働移動の枠組みの設立を支援することが重要だ。

■各国における経済上の競争と経済主権

<4. デリスキング(リスク低減)と依存関係>
各国政府は経済安全保障上の措置を加速させていくとみられるが、その結果として、企業や国境にまたがるサプライヤー関係の複雑な供給網が生じる。経営者は、新規市場の多様化を進める際には透明性を優先事項として、企業の本国にとっての地政学的ライバルとの接触を先んじて最小化すべきと考えられる。

<5. デジタル主権>
デジタル技術の戦略的重要性の高まりから、各国はデジタル空間を政府のコントロール下に置くための政策や規制の施行を、さらに加速するだろう。経営者は、人工知能(AI)アルゴリズムや半導体、ネットワークインフラに関連する産業政策により生じ得る投資機会について評価・検討が求められる。

<6. 気候政策と内在する競合課題>
気候政策は、経済、地政学、価格という潜在的に相容れない3つの競合的な力の拮抗によって動くものと考えられる。経営者は、矛盾する各国の気候規制がクロスボーダー事業の相互運用性や長期的なサステナビリティ戦略にどのように影響を与えるか精査が必要だ。

■地政学的競争の激化

<7. 新たな局面にある地政学的エネルギー情勢>
各国の政策により、地政学的エネルギー情勢の拮抗は引き続き影響を受けながら変化するが、その影響によりグローバルなエネルギー移行の速度については不確実性をもたらす。企業は、同時進行的な各国のエネルギー移行が企業の戦略やコンプライアンスにどのように影響を与えるかについて評価すべきと考えられる。また投資決定の機会には、再生可能エネルギーの利用可能性と魅力度を考慮する必要がある。

<8. 新興国市場の統合>
グローバルサウスによる新興国市場の地域経済統合ならびに多国間機関における改革への2つの圧力が、グローバルな事業運営環境をより複雑なものにしている。経営者は、新興国市場のうちどれが最大の機会をもたらすかについて調査し、どのシナリオを用いれば適切な市場参入あるいは撤退の決定ができるかについて考察しておくべきである。

<9. 戦争と紛争>
現在進行中の戦争・紛争が継続する中にあって、国や集団内外における緊張のエスカレーションは、現実世界とサイバースペースの双方で新たな戦争・紛争を引き起こす可能性がある。経営者は、将来の潜在的紛争シナリオの事態に向けたレジリエンス強化が必要だ。事業のフットプリント(足跡)の変化や事業運営の変更内容の同定は、レジリエンス強化に寄与するもので、早急に実施することが推奨される。

<10. 宇宙政治と宇宙経済>
技術能力と宇宙資源の所有権主張のために多くの国・地域が競争をし烈化するにつれて、多極化する宇宙競争は新たな域に達すると考えられる。企業は、新しいスキルセットを育成し、事業運営全体のレジリエンスを構築することが非常に重要だ。そのためには、まず研究開発計画と投資を再考し、将来に向けたサイバーおよびデータのレジリエンスを開発する必要がある。

2025年に予想される地政学的動向トップ10がセクターに及ぼすと考えられる影響は以下のとおり。

■消費財・ヘルスケア

各国政府が気候変動や人口動態、デジタル変革に対応する中での政策立案・政策変更は、消費財とヘルスケア分野にわたって企業に影響を及ぼす。また税制改正も企業の財務状態や成長見通しに影響を与えると考えられる。経営者は、政策の変化が消費者の嗜好に対しどのように影響するかを評価して、結果を長期戦略に反映させることが推奨される。

■金融サービス

地政学的な競争は金融サービス機関のグローバルなフットプリント、企業戦略、変革アジェンダにリスクをもたらす。また、規制環境がますます複雑化する傾向は、今後続く可能性が高い。経営者は、事業運営する各地域における規制順守状況とコンプライアンス、中でもAI分野について念入りに確認することが重要だ。

■パブリックセクター(政府・公共サービス)

課税に関する難題は、不動産企業や建設会社への資金の流動性に大きく影響を及ぼすと考えられる。脱炭素化や持続可能なケアエコノミー(介護、福祉や看護)の確立など、戦略的変革のコストをどのように調達するかは、多くの政府にとって切実な問題となる。

■製造業・エネルギー

各国政府は、引き続き、炭化水素、金属、グリーンテクノロジーなどを戦略的な製品として、産業政策の対象とするものと考えられる。経営者は、新たな局面にある地政学的エネルギー情勢と気候政策による変革が、産業全体の市場需要やビジネスモデルにいかに影響を及ぼすかについて、考慮することが望ましい。

■プライベートエクイティ

プライベートエクイティによる地政学的情勢へのエクスポージャーのほとんどは、ポートフォリオ企業のレベルで生じる。人口動態の分断は、資金調達プロセスと資本源を変え得るものであると同時に、デリスキングと依存関係は投資機会に影響を及ぼす。ファンドマネージャーは、資本を投下する際には、これらの変革の潮流を考慮することが推奨される。

■テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム

デジタル主権政策は、国境を越えた新しい基準や規制を課す半面、セクター全体の企業に新しい投資機会をもたらす。経営者は積極的に、進化しつつある地政学的展望と自社の事業運営とを同調させることが重要だ。また、業界基準が制定・改定される際に、経営者が意見を提供することが推奨される。

EYSC EYパルテノン パートナー 小林 暢子氏のコメント

地政学的リスクの高まりを受け、日本企業は対応策を強化しています。EYの調べによると、上場企業の年次有価証券報告書における地政学的リスクや関連用語への言及は、過去10年間で10倍と急増しています。

米国を含めいくつもの既存政権が苦戦した2024年選挙スーパーサイクルを経て、世界の地政学的な力学は新しい転換点を迎えています。

ビジネスへの影響は大きなものになるでしょう。私たちは、企業がこれらの課題に対処し、持続可能な成長を達成するための戦略を提案し支援します。

関連情報
https://www.ey.com/ja_jp

構成/清水眞希

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