夏でも取れる「夏いちご」の栽培で農業復興
ReFruits以外にも、農業を復興させるために取り組む企業がある。いちご農家の約90%が1年に1作で冬のいちごを栽培する中、株式会社ネクサスファームおおくまは、夏に収穫できる「夏いちご」の栽培に取り組んでいる。
同社は福島の農作物に厳しい目が向けられる中、風評被害を払拭したいとの思いで設立。また産業がなくなり、雇用も失っていった町の活気を取り戻すべく、積極的に採用を行い、移住者を増やす取り組みも行っている。
面積約4.8ヘクタール、約15万株のいちご栽培農場では、ハイテクなビニールハウスが出迎える。24時間、コンピューターによっていちごにとって最適な環境を維持。スタッフと機械が協働することでいちご栽培が一年を通じて行われている。夏に収穫できる夏いちごは、お菓子やケーキ、ホテルなど、業務用として生産しているそうだ。
特記すべきは、同社が安心・安全のいちごを届けるために4年間に渡って行ってきた、施設内すべての放射性物質測定検査だ。出荷予定のいちごは、まず自社で全量を検査。その後、国や県の出荷基準検査を受け、さらに第三者機関による検査を受ける。過去、すべての検査において合格基準に達し、現在においても安心ないちごを生産している。
さらに「GLOBALG.A.P.(グローバルギャップ)」という「GOOD(適正な)、AGRICULTURAL(農業の)、PRACTICES(実践)」を行っていることを証明する国際基準の認証へも受け、安全であることを消費者へ証明し続けた。その結果、近隣住民からは「農業を始めやすかった」「家庭菜園でも安心して栽培できる」との声も届いたという。
大熊町はこれまでも、想像を超える熱意と勢いで復興活動を行ってきた。しかし、まだまだ挑戦は始まったばかり。先行する企業をお手本に、全国から数多くの企業が参入することで、本格的な復興につながるのではないか。
取材・文/石原亜香利