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キーワードは〝楽してキレイ〟累計出荷数1300万本を突破した「トイレマジックリン こすらずスッキリ泡パック」が売れた理由

2025.01.15

2023年10月、花王株式会社からトイレ掃除の常識を覆す商品『トイレマジックリン こすらずスッキリ泡パック』が発売された。発売から12か月で累計出荷数1300万本を出荷し、目標対比250%を達成。もともとヒット商品だった『トイレマジックリン』があるなかで、どのように差別化を図りヒットに至ったのか。

今回は、花王株式会社より商品開発担当の三嶌裕志さん、マーケティング担当の佐々木貴悠さんに、商品開発の背景や苦労した点、ヒットの要因についてお話を伺った。

*本稿はVoicyで配信中の音声コンテンツ「DIMEヒット商品総研」から一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

生活者のリアルなニーズから生まれた「こすらない」という新発想

はじめに、花王株式会社 ホームケア商品の開発担当の三嶌さんは『トイレマジックリンこすらずスッキリ泡パック』の特徴について、次のように説明する。

「トイレの便器内にスプレーすると、モコモコの泡でぐるっとパックができます。5分放置して流すだけで使える、便器内専用の洗剤ですね。汚れを落とすだけではなく、除菌やウイルス除去、黒ずみや黄ばみの予防、消臭機能もあります。こすり洗いをしなくても便器内をキレイ(※)にできる“新しいトイレ掃除”を提案しました」(三嶌さん)

※こびりついた汚れは落とせない

便器をパックするアイデアは、“一般の消費者のニーズから生まれたもの”と話す三嶌さん。生活者のお宅を訪問し、リアルなトイレ掃除の様子を観察したという。

「お客様を見ていると、特に汚れてもない便器を毎日のようにこすって洗っているのがわかりました。理由を聞くと『ブラシでこする=トイレ掃除』と考えている人が多いように思えたんです。もっと洗剤の力だけで落とせるものがあってもいいんじゃないかと考えたんです」(三嶌さん)

商品設計をしていくにあたり、特にこだわったのが“泡感”だったと三嶌さんは振り返る。

「泡感といっても、かさ高なのか、持続力なのか、白さなのか、いろいろと要素があります。そういった要素を、一つひとつ設計していきました。特に追求したのはかさ高。モコモコとした、こんもり大きな泡を作ることでした。ただ、かさ高を作ると泡自体が大きくなってしまうので、含まれる液量は少なくなるんです。洗浄力が出にくくなってしまわないよう、洗浄力を持つ泡の大きさを計算して設計しました」(三嶌さん)

“新しいトイレ掃除”の形を作るために導き出した「液体」と「トリガー」の最適解

“モコモコ泡”を実現するため、液体とトリガーを新しく設計した『トイレマジックリンこすらずスッキリ泡パック』。開発にあたり、何度も試作を重ねたと三嶌さんは振り返る。

「液体とトリガー、どちらもゼロから開発したので、組み合わせで泡感も全部違ってくるんです。液もトリガーも、たくさんのパターンがあります。どの組み合わせが最適かを見つけていくのが大変でしたね」(三嶌さん)

既存製品との差別化を図るために、細かなこだわりも詰め込んだという。

「一つは香りの設計ですね。今までのトイレ用洗剤は、ミントのような香りが定番でした。本商品は『サボン&シトラス』や『ホワイトフローラル』のような、今までトイレ用洗剤にはなかった香りを提案しています。もう一つは、デザインです。透明感を持たせ、淡い色のパッケージにしています」(三嶌さん)

佐々木さんは、“新しいトイレ掃除習慣”を消費者に提案するために、ネーミングにもこだわったと話す。

「『なんか楽しそう』『自分もやってみたい』と思っていただけるような名前にしたいと考えました。あとは、どういうふうに商品を使うのか、名前だけでわかるといいなと。ブラシで一生懸命こすって掃除をしている方が多い中で、“こすらずに汚れを落とすことができる”と名前を聞いただけでイメージできるようなネーミングを検討しました。案はかなり出たんですが、『泡パック』がわかりやすくて印象的だったので、スッと決まりましたね」(佐々木さん)

「億劫なトイレ掃除を楽に」、インサイトを捉えた戦略で目標対比250%を達成

マーケティングを展開していくにあたり、ターゲット層を「トイレ掃除は億劫だと思いながら毎日掃除をしている人」に絞ったと佐々木さんは話す。

「トイレ掃除が好きだっていう方は、ほとんどいないと思うんです。なぜ嫌いなのか考えた時、こすって掃除しなきゃいけなかったり、家族みんなで協力して掃除をする習慣が作れていなかったりするのかなと考えたんです。嫌いな家事の筆頭に挙げられるトイレ掃除の在り方を変えていきたいと、ターゲットを決定しました」(佐々木さん)

ターゲットに向けて同商品を届けるために、宣伝の仕方にもこだわったと続ける。

「CMを中心に、動画配信や店頭の広告制作物といったコミュニケーションを通して『やってみたい』と思っていただけるよう工夫しました。トイレの便器を泡で満たすという、見たことのないようなビジュアルを打ち出しました。あとは、こすらずにキレイにできると証明するために、実験形式で見せたり、泡が汚れを吸着して落としていく様子を描いたりして、納得感を持って手に取っていただけるよう設計しました」(佐々木さん)

こうして発売に至った『トイレマジックリンこすらずスッキリ泡パック』は、発売から12か月で累計出荷数1300万本を出荷。もともと計画していた数量の250%にも至ったという。

「『忙しい平日のトイレ掃除の救世主です』『簡単なのでみんながトイレ掃除を積極的に手伝ってくれるようになりました』と、嬉しい声をたくさんいただきました。憂鬱に感じられたトイレ掃除が少し楽しく、楽にできるようになってきたのかなと感じています」(佐々木さん)

ヒットの背景について、三嶌さんと佐々木さんはそれぞれ次のように分析する。

「生活者がトイレ掃除に何を求めているのか、根本的なところをきちんとつかんで、商品として具現化できたのがよかったかなと。最大の特徴である“泡”を設計通り実現できたのも、大きかったと思います」(三嶌さん)

「まず、ネーミングのわかりやすさが、お客様に受け入れられたかなと感じています。トイレ空間に置いてあっても恥ずかしくないような、おしゃれなパッケージも評価いただけたと思っています。また、流通企業様から、大きな反響をいただけたのも大きかったですね。発売時には、大々的に店頭に置いていただきました。お客様が手に取れるタッチポイントを作れたことが、売り上げアップに効いたように感じています」(佐々木さん)

「楽してキレイ」が時代のキーワード。経験者が語る、売れる商品の共通点

これまでも多くのヒット商品を担当してきた、三嶌さんと佐々木さん。売れる商品の“共通点”を教えてもらった。

「商品開発をしていると、途中でデザインも出来上がってきます。そこで、元々考えていたコンセプトとデザインが一致してきた時は、手ごたえを感じますね。『これが作りたかったものだ』みたいなものが見えた瞬間は、売れると思っています」(三嶌さん)

「共働きの方たちが増えている中で、“楽”という視点はすごく大切だと思います。私が担当している商品に『トイレハイター トイレそうじこれだけ』や『強力カビハイター 排水溝そうじこれだけ』があります。時間をおいて流すだけでキレイになることをウリにしている商品なんですが、そちらも大きな反響をいただいています。楽で負担を減らせる点が共通していることからも、重要なキーワードだと思っています」(佐々木さん)

最後に、今回の経験を通して感じたことや、今後の展望について、それぞれ話してくれた。

「良いものを作れた実感はあったんですが、実際に商品が売れて、社内から『いいね』と声が上がってきたことがとても嬉しかったですね。その嬉しい気持ちが、成長に繋がっていると思います」(三嶌さん)

「お客様からの反響が大きい商品で、嬉しい声がたくさん届いています。メンバーのモチベーションに繋がる部分ですので、これからもそういった商品をどんどん提案していきたいと思っています」(佐々木さん)

取材/DIME編集部 文/久我裕紀

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