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「これ、やる意味あります?」企業法務の弁護士に聞く部下による上司いじめの実態と予防策

2024.12.27

「パワハラ防止法」が施行されて久しいが、根絶にはほど遠いようだ。

最近の厚生労働省の調査でも「過去3年間にパワハラ関連の相談があった」と回答した企業は約64%と、むしろ増加している。くわえて、カスハラなども増え、法律による抑止には限界があることが浮き彫りになっている。

上司に向かって「これ、やる意味あります?」

特に近年、顕在化しているのが「部下から上司へのハラスメント」。例えば、以下のような発言を、上役にぶつける部下が目立っているそうだ。

「これ、やる意味あります? 私じゃないといけないのですか?」
「自分ができていないことを、どうして他人に要求するんですか?」
「こんなことも知らなくて、よく毎日仕事ができていますね。指示するだけで給料をもらえるなんて、ラクな仕事でいいなぁ」

これなどは、氷山の一角。同僚が見ている前で過去の失敗をあげつらう、横領をしているといった嘘の噂を立てられるなど、枚挙に暇がない。

こうした逆パワハラともいうべき行為を「上司いじめ」と呼ぶのは、弁護士の國安耕太氏。先般上梓した著書『上司いじめ――企業法務弁護士が教える上司のためのハラスメント対応法』(あさ出版)では、上司が「自殺に追い込まれるような痛ましいケース」もあると指摘。もはや無視できない社会問題だとしている。

どういった部下が上司いじめをするのか、上司としてどんな予防策をとれるのかなど、國安氏にうかがった。

年下上司・年上部下の増加も一因に

──ご著書を読んで、上司いじめに及ぶ部下は、Z世代の若手かなと思ったのですが……。

「たしかに今は、年上の人を立てるという意識は、下の世代にいくほど希薄になっています。それゆえ、若手からの上司いじめは多い傾向です。

ですが実態は、必ずしも若い人だけではありません。最近は、年下の上司に年上の部下も増え、年かさの部下が、自分より若い上司をいじめる例もあります。役職は下でも経験も能力もあると自負し、嫌がらせで上司の指示を聞かないのが多々起きていますね。

私が見聞きした例だと、飲食店の新任店長が、パートさんたちから上司いじめを受けていました。パートさんたちは長年勤めており、自分たちのほうが仕事の進め方はわかっていると考えて、店長を無視していました。

なかには、相手をわざと怒らせようとしている事例もありましたね。それで上司が怒ると、部下は被害者ぶるのです」

誤った権利意識が高い人の増加が拍車をかける

──上司いじめが増えた背景には、ほかに何があると思いますか?

「上司いじめが起きるのは、上で述べた社内階層のフラット化や、好不況でいびつな採用が起こす世代間の隔絶が大きいですが、別の要因もあります。

ひとつには、間違った意味で権利意識が高い人が増えています。お店や学校でのモンスタークレーマーは、その代表格です。こういう人たちは、自分が気に入らないから相手が悪いという思考パターンを持っています。それが会社での上司いじめにも出てきています。上司からは、それなりの理由があって注意されているのを、目の敵にされていると思い込んだりするのですね」

まずは自分の上長と相談する

──自分が上司で、そういう部下に直面した場合、すぐに行うべきこと何でしょうか?

「まずは、ご自身の上長と相談することです。もしかしたら、自分の思い違いであるとか、過敏になっている可能性もあります。そこは自己判断を避け、相談してみるのです。

そのうえで、上長がそれを問題だと捉えたときには、人事やコンプライアンスの部署に行って調査を依頼する流れです。

こういう話をすると、労働基準監督署に相談するのはどうかと聞かれることがあります。基本的にここは、組織に対して何かをする役所であって、個人レベルの対応はしていないので注意してください」

譴責や減給といった処罰もあり得る

──明らかな上司いじめで、居酒屋で部下を叱りつけるでは収まらないレベルの場合、どんな対処法があるのでしょうか?

「ケースバイケースですが、担当部署の調査結果に応じて処罰をするのが基本です。処罰というのは、軽いものだと譴責、それから減給や一週間程度の出勤停止というやや重いもの、一番重い場合は懲戒解雇となります。

あるいは、大きな会社であれば、部署を異動させて関係を離すのが穏当な手段です。小さい会社だと難しいかもしれませんから、まずは部下を指導して、それでうまくいくかどうかですね。その過程で、自発的に辞めてしまう部下もいますが……。

実は、心の底では辞めたい感情があって、トラブルを起こしているパターンもあります。辞めるきっかけを暗に求めているのかもしれませんね。」

上司いじめが起きないようにするには?

──そもそも上司いじめの発生を、未然に防ぐ手立てはあるでしょうか?

「日頃の指導・教育も大事ですが、採用の時点がとても重要です。採用を決める前に、人となりを見抜くのです。中途採用であれば、前職をどんなかたちで辞めたのか、どのぐらいの間隔で転職をしてきたのかなどを調べることです。ただ完璧に調べるのは難しいでしょうし、新卒者の採用だとなおさらです。

なので、最初に問題を起こしたときに、なあなあにするのではなく、きちんと対処し、必要であれば処罰をする姿勢が大事です。会社は、そうした行為を許さないところだと、肝に銘じてもらうようにするのです」

國安耕太氏 プロフィール

ノースブルー総合法律事務所、代表弁護士。早稲田大学法学部卒業。中央大学法科大学院修了。弁護士ファームへ勤務ののち、現在の法律事務所を開設。 業務内容は企業法務や知的財産法務など多岐にわたり、大手企業から中小企業まで多くの顧問先を持つ。
著書に『おひとりさまの終活「死後事務委任」』(あさ出版)、『上司いじめ――企業法務弁護士が教える上司のためのハラスメント対応法』(あさ出版)がある。
公式サイト:https://north-blue-law.com/

取材・文/鈴木拓也

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