東京ディズニーリゾートなどを運営するオリエンタルランドが、2025年3月期上半期を2割近い営業減益で折り返しました。
入場料などの値上げによって1人当たりの売上高は増加したものの、入園者数は計画よりも100万人下回ったため。今期は通期で1割の増収、3%程度の営業増益を計画していますが、計画は据え置きました。
下半期の巻返しに期待がかかります。
3200億円で「ファンタジースプリングス」を新設
オリエンタルランドは前期(2024年3月期)において、1人当たりの売上高が前年比5.7%増えたことに加え、インバウンド効果も加わって来園者数が24.5%増加。売上高は6184億円で、3割もの増収となっていました。
期初予想は5439億円。計画を700億円以上上回って着地をしたのです。この期の実績はコロナ禍を迎える前2019年3月期の5256億円を大幅に超えるものであり、オリエンタルランドの完全復活を印象づけるものでした。
今期は更に1割増収の6847億円を計画しています。
※決算短信より筆者作成
オリエンタルランドが強気の姿勢を見せていた背景にあったのが、新アトラクション「ファンタジースプリングス」のオープン。人気コンテンツの「アナと雪の⼥王」などをテーマとした新エリアで、2024年6月6日に開業しました。オリエンタルランドはこの施設に3200億円を投じています。
値上げ疲れの象徴的な存在に…
オリエンタルランドは、2017年以降の東京ディズニーリゾートを第4ステージと位置づけており、大規模開発・拡張によるさらなる進化を掲げていました。2019年7月の「ソアリン:ファンタスティック・フライト」に180億円、2022年4月の「東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテル」に315億円を投じるなど、テーマパークの魅力を創出するために大型投資を継続しています。
しかし、「ファンタジースプリングス」は3000億円を超える桁違いの大型プロジェクト。パーク一体型のホテルも併設するもので、強い吸引力を持った施設でした。オリエンタルランドは新たなアトラクションとホテルが加わったことにより、年間750億円の押し上げ効果を見込んでいました。8割がテーマパーク、2割がホテルという見立てです。
東京ディズニーリゾートはコロナ禍以降、度重なる値上げを実施していました。2020年4月に7500円から8200円、2021年3月に上限で8700円、2021年10月には同じく上限が9400円となりました。そして、2023年10月に上限額を1万900円まで引き上げます。
オリエンタルランドは値上げの理由として、繁忙期と閑散期の差を抑え、入場者数の平準化させることなどを挙げていました。
特に新アトラクションを導入するタイミングでもあったため、上限額を引き上げて客数の分散を図ることは、結果として顧客満足度を上げることにもつながるでしょう。
ディズニーファン7割が入場料8000円以下が妥当と判断
オリエンタルランドの2025年3月期上半期の売上高は前年同期間比4.5%増の2972億円。このうち、テーマパーク事業の売上高は同2.1%増の2387億円に留まりました。入園者数は2.4%減の1220万人。オリエンタルランドは猛暑を来園者数減少の要因として挙げていますが、猛烈な暑さに見舞われたのは2023年も同じ。値上げがネガティブに作用していることも一因となっているでしょう。
うれぴあ総研はワンデーパスポートの金額に関する調査をディズニーファンに対して行っています(「【ディズニー】今のチケット価格、どう思う?ディズニーファンの意見は【アンケート結果】」)。それによると、「あなたが行きたいチケット価格はいくらですか?」との質問で、8000円以下と回答したのは7割。9001円~1万円は5%、1万1円~1万1000円はわずか3%でした。
父親と母親、中学生の子供、小学生の子供4年で東京ディズニーリゾートに足を運ぶと、チケット代は3万5000円を超えます。ディズニーファンであっても、多くの人は現在の価格水準が割高であると感じているでしょう。
ましてやファンではない一般的な家庭であれば、別のテーマパークやレジャー施設が選択肢に入るかもしれません。
オリエンタルランドは2025年3月期上半期の営業利益が前年同期間比18.0%減の631億円でした。営業減益の主要因が入園者数の減少で、当初の計画よりも100万人下回っています。
しかし、売上高・営業利益ともに通期の計画は改めていません。テーマパーク事業とホテル事業で下半期は増収を達成。コスト削減を進める予定です。
クルーズ船に3300億円を投じる計画
東京ディズニーリゾートは期間限定の「カレッジパスポート」を販売しています。大学生や専門学校生などを対象に、ワンデーパスポートの価格を7000円から9000円に抑えるというもの。価格を集客フックとした期間限定チケットの販売に力を入れているのです。
オリエンタルランドは2025年3月期の入園者数を2900万人と予想していましたが、これを2800万人に引き下げました。修正しても進捗率は43.6%であり、期間限定チケットの売れ行き状況には注視していることでしょう。
オリエンタルランドは2025年3月期の決算説明会で次期経営計画を発表する予定。一番の目玉は2028年度のクルーズ事業でしょう。
総客室数1250室、乗客店員4000人というクルーズ船の建造費を含む総投資額は3300億円。船上でディズニーが展開する世界観を体験でき、食事やプール、レクリエーションなどがすべて一体型となった非日常空間を創出します。
すでにアメリカで5隻が運行中。更に3隻が増え、シンガポールでの就航も予定されています。
オリエンタルランドはファンを魅了する仕掛けづくりに余念がありません。そのためには巨額の投資が必要。そして、そのサービスを提供する最も重要な要素が価格です。足元で、その難しい価格調整を行っているように見えます。
©Disney
文/不破聡