最近、ビジネスパーソンの間で話題のキーワードである「数理最適化」。すでに課題を解決し、コスト削減や業務効率化が進んでいる。数理最適化に少しでも親しんでおくと、今後役に立つだろう。
今回は、数理最適化について初心者向けに解説しながら、生活やビジネスに活かす方法を有識者の解説のもと、紹介する。また、後半では数理最適化によって工場の大幅な業務効率化の成果を挙げた菓子メーカーの事例を紹介する。
数理最適化とは
数理最適化とは、簡単にいえば、数学的手法で最適な解を導き出すことをいう。
一般的に、ビジネスにおいて直面している課題に対して、最も成果を出すための着地点を見つけるための手法である。
現実の問題を数式(数理モデル)として定義し、制約条件を満たしつつ、コストの最小化や利益が最大化されるような変数の値を求める。
例えば、工場の生産性を最も高めるにはどのようなアプローチと施策が正解であるのか、荷物を最短時間かつ最短ルートで運ぶにはどうすればいいかなどを導き出すことができる。
従来の、勘や経験に頼ることのない現状分析を行い、最適解が得られるのが特長だ。
数理最適化を日々の「献立づくり」に活かすアイデア
数理最適化は、数学的手法であり、むずかしいイメージがあるかもしれない。そこで日常生活に取り入れる方法を紹介しよう。
数理最適化ソリューションである「Gurobi Optimizer」を手がけるGurobi Optimization, LLCの日本拠点であり、コンサルティングなどを提供する株式会社オクトーバー・スカイのシニアコンサルタントである乾伸雄氏に、数理最適化を生活に役立てる例を挙げてもらった。
【取材協力】
乾 伸雄 (いぬい のぶお)氏
株式会社オクトーバー・スカイ 最適化コンサルティング部 シニアコンサルタント
1987年 東京農工大学大学院数理情報工学専攻修士課程を修了。2012年 総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻博士課程を修了、博士(情報学)を取得。その後、三菱電機株式会社中央研究所にてエキスパートシステムの研究、東京農工大学工学部助手として人工知能の研究、特任研究員として国立情報学研究所に従事。2012年より株式会社オクトーバー・スカイにて技術コンサルタントとして、数理計画法を用いたシステム開発に携わっている。同社は2025年2月6日、国内外での「Gurobi Optimizer」活用事例などを発表するセミナーイベント「Gurobi Days 2025」をハイブリッドにて開催予定。
「Gurobi Days 2025」
株式会社オクトーバー・スカイ
●献立づくり
「多忙な人は、食生活への配慮がおろそかになりがちです。数理最適化によって改善しましょう。食材の在庫や価格や販売店、過去の献立、レシピなどを入力情報として、必要栄養量を満たす条件の下で、購入する食材費・購入時間の節約、調理時間の短縮、飽きない献立などを達成します。個人に特化した材料の量も出力できるので、健康的な食生活を送ることができるでしょう」
●適用方法
「例えば、共働きの家庭で『今週の夕食を、予算2万円以内で、調理時間は1食30分以内、かつ必要な栄養素をすべて満たす』という条件で考えてみましょう。
まず、冷蔵庫の在庫は『豚肉300g、玉ねぎ2個』、近隣スーパーの特売情報として『鶏むね肉がセール中』、家族の好みとして『我が子は魚が苦手』などのデータを入力します。さらに、『先週カレーを作ったから今週は避けたい』といった条件も加味できます。このように具体的な制約の中で、栄養バランスが良く、無駄なく材料を使い切れる、かつ家族が喜ぶ献立を、数理最適化によって効率的に導き出すことができます。
出力される情報には、買い物リスト(追加で購入が必要なもの)、その週の日別献立、1食当たりの1人分の分量まで含まれるので、健康的な食生活の実現に役立ちます」
献立も複雑な条件が絡んでおり、確かに数学的に考えるとその難解もすんなり解けそうだ。