現状のアパレル店舗スタッフの課題と人材育成における解決策
ところで、アパレル業界の店舗スタッフに関しては、現在、どのようなことが課題となっているのか。
サービス業を中心に販売力向上や接客接遇マナーなどの社員研修を行う株式会社Truthの代表取締役で代表講師の笹西真理氏は、次のように話す。
【取材協力】
笹西 真理氏
株式会社トゥルース代表取締役
一般社団法人日本マナーOJTインストラクター協会会長(創設者)
1974年生まれ。同志社大学卒業後、株式会社日本航空にて客室乗務員として従事。外資系~国内系と5年半のCA生活を経て、広告系コンサルティング会社へ転職。飛込み営業を一からスタートし、2年でグループ表彰、全国400拠点のトップ営業となる。その後、広告だけでは「売上アップを維持できない」と独自のメソッドで現場教育をスタート。2005年、独立し株式会社トゥルースを起業。研修講師となる。2010年、一般社団法人日本マナーOJTインストラクター協会を立ち上げ、現在約400名の講師を束ね、年間4000件を超す人材育成支援を行う。現在はモビリティ事業中心に15年来の支援先を多く持つ講師、コンサルタントである。
「現状、アパレル企業は深刻な人手不足に悩まれています。シフト勤務はもちろん、週末出勤や低賃金などを背景とし、スタッフが離職してしまうのではないかという不安から、SVでさえも店舗スタッフに対し『ハッキリと指導ができない』という状況に陥っています。
また、店舗運営の適正人員を戦略的に徐々に減らしていることに対し、現場からは苦情が出ているなど、経営視点と店舗運営視点の相違に悩まれることも多いようです」(笹西氏、以下同)
●短期的・中長期的双方からアプローチ
笹西氏は、研修事業においてどのような対策を提案しているのか。
「短期的に対処すべきことと、中長期的に対策すべきことを見極めることが重要ととらえ、双方をご提案しています。
短期的にはすぐできる『指導法(ティーチング)』『チームビルディング』などのスキルを研修などでお伝えします。店長やSVクラスのメンバーが適正にスタッフ指導できるようにすることで、安心して働けるように導きます。
また社員が少なく、パート・アルバイトスタッフで運営する店舗も多く、社員が年齢が若く経験が浅いことも多々あるため、1on1面談等の機会をご提案しています。双方にとっての『心理的安全性』の高い状態をつくるのにも効果的です。
中長期的な対策としては、スタッフを適正に評価できるような制度の見直し、結果を出したときの処遇改善などを行い、働きがいを引き出すように伴走します」
●アパレル店舗のスタッフが目指すべき方向性
今後、しばらく続くと見られているアパレル不況。これから店舗スタッフ自身や運営側が目指すべき方向性とは? 笹西氏は次の3つを挙げる。
1.個々人の働く「価値」を高める
「働く理由がそれぞれに違う時代ですから、それぞれに対応した仕組みを構築するのが望ましいと考えます。具体的な例として、作業は誰でもできるよう、パート・アルバイトの方がパッと見てわかるマニュアルや動画などでフォローするなど。社員は顧客応対やSNSマーケティングといったコア業務を中心とし、個々の生産性向上に努めることが必要かと思います」
2.店長(SV)の1on1面談スキルを上げる
「日常においてビジネスコミュニケーションのみに陥るのを避けるため、定期的なスタッフ面談の機会を設けること。面談スキルを高めること。メンバーのサポートを的確に行うことで、離職率軽減や採用・教育コストの軽減につながると考えられます」
3.核となるメンバーは「目標共有」を徹底する
「チームの核となるメンバーである店長、サブ、パートリーダーなどには店舗目標や組織ビジョンを共有することで、一つの目標に向かうことが重要だと考えます」
コックスのV字回復の成功談を知ると、アパレル業界の再生は決してむずかしいものではないように感じる。店舗スタッフのモチベーションややりがいが上がる環境を整え、運営側もスキルを上げる。地道に行っていくことで、明るい未来が拓けるのかもしれない。
取材・文/石原亜香利
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