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AI時代のリスキリングに取り入れたい「学際的スキル」とは何か

2025.01.07

生成AIの急速な進化によって、自動化され消失すると言われている業務が多くあります。加速する少子高齢化によって、人手不足から生成AIを業務に取り入れる企業も増えています。このままでは自分の仕事はAIにとってかわられるのでは? そんな不安への答えのひとつと言われているのが「リスキリング」。

日本初のリスキリングに特化した非営利団体を設立した後藤宗明さんは、リスキリングとは失業なき成長産業への労働移動、すなわち新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、新しい業務や職業に就くことだと言います。
とはいえ、成長産業への労働移動は簡単なことではありません。働き手として必要とされるために何をいつ、どのように進めるべきなのか。将来の選択肢を増やすために、どう変わればよいのでしょう。

そこで、今回は後藤さんの著書『中高年リスキリング これからも必要とされる働き方を手にいれる』から、これからのAI時代に求められる「学際的スキル」についてご紹介。学際的スキルとは“2つ以上の異なる分野の知識を統合し、応用する技術”のことで、AIが苦手とする分野です。リスキリングによって新たな専門分野を得ることで「学際的スキル」を鍛えることもできます。

人間の労働の価値を高める

画像はイメージ

第1回でお伝えした通り、「定年4・0」の時代の前提には、AIの進化があります。これから訪れるのは、AIと一緒に働く時代です。その事実をふまえ、リスキリングに取り組む際に、ぜひ取り入れていただきたいのが「学際的スキル」という考え方です。

(1)AI時代に人間の雇用を維持するには

「学際的」とは、英語の「interdisciplinary」という言葉が元になっていて、「複数の異なる専門分野にまたがる、分野の垣根を越えた」という意味です。ビジネスの世界における「学際的スキル(interdisciplinary skills)」を一言でまとめると、次のようになります。

• 学際的スキルとは、「複雑な問題を解決し、新たな洞察を生み出し、イノベーションを起こすために、2つ以上の異なる分野の知識を統合し、応用する技術のこと」

当然のことながら、この学際的スキルは、短期的に培われるものではありません。自身がこれまで所属してきた組織の業種、職種などを通じて得てきた知識、経験、スキルなどをベースに、リスキリングを通じて新しいスキルを足していく、場合によっては掛け合わせていくことが必要になってくるということです。

AIは一つの分野を深化させていくことは得意ですが、複数の分野の知識を結びつけて現時点で存在していない考え方や知識を作り出すのは不得意です。人間ならできる独自に考えついたり、応用したりといったことができるレベルには、現時点で到達していません。

だからこそ、AIが提供する価値とは異なる価値を人間が提供していこうと考えたときに、この「学際的スキル」が重要となってきます。AIによって、事務作業を中心とした役割はどんどん自動化されていきます。私たちは、事務作業として自動化できない領域、すなわち、未だ解決に至っていない社会課題そのものを明確化する、新たな解決策を模索し構築するといった仕事を担っていく必要があります。

私たち人間は、「問いを立てる力」を強化する必要があり、未解決の課題を解決していくために複数の視点や経験から培われるスキルを持つことがより一層重要になっていくということです。

(2)リスキリングによって「学際的スキル」を鍛える

画像はイメージ

ここからは、具体例として、私がリスキリングに取り組む中で、結果的に「学際的スキル」が鍛えられることになった過程をご説明していきます。

2013年、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授らが発表した論文「The Future of Employment」で、米国の総雇用者の47%の仕事が自動化の影響によって消失する可能性が高いという予測が発表されました。当時話題になっていたその論文の存在を私が知ったのは、2014年に米国出張したときで、大変衝撃を受けました。「社会課題を解決するために自分は仕事をするんだ」という職業観を持っていたので、「これからテクノロジーの進歩とともに人類が直面する最大の社会課題は、人間の労働が代替され、雇用が消失する未来なんだ」と考えるようになったのです。

そうした現象を英語では「technological unemployment(技術的失業)」と呼ぶということを知り、海外出張の度に国際会議などで会う有識者の方々に、どうやったら技術的失業は防げるのか、という質問をしていきました。しかし、すぐにわかりやすい解決策が提示されるわけもなく、雇用を減らしていく側の自動化技術の論理やビジネスがわかっていないと、この技術的失業を未然に防げないと思い、AIの分野で仕事ができるようになりたいと強く思うようになりました。ところが私は、AI関連のスキルを持ち合わせておらず、自分が掲げた目的に近づいていっているとは思えない日々が続きました。

そして、2016年に参加したテクノロジー分野の国際会議で、どうやら「reskilling(リスキリング)」がその解決策になるようだ、という話を耳にするようになりました。と同時に、40代だった自分が行っていたAI分野への転職というチャンスをつかむためのスキル習得のプロセスそのものが、どうやら「リスキリング」の実践らしいということにも気づいたのです。

本当に数少ないチャンスを活かすことができ、AIスタートアップの仕事に就くことができたのは、2019年、47歳のときのこと。それからは、AIにできること、AIが苦手なことについての理解が深まり、技術的失業が起きるリアリティを日々感じるようになっていきました。日々の業務と並行して、海外におけるリスキリングの成功事例を調査したり、実際に仕事としてサービスを提供している人たちへインタビューをしたり、という個人的な活動を開始しました。

そんなときに、新型コロナウイルス感染症が全世界的に広まり、デジタル分野を活用した非対面型のビジネスがそれまで以上に注目されるようになり、デジタルスキル習得の必要性が一層高まりました。そこで、日本でリスキリングを広める活動を本格的に開始したのです。

過去を振り返ってみると、20代後半から30代にかけて、「人材育成分野」のスキルを、仕事を通じて得てきました。そして、30代後半から40代にかけては、「(非営利分野における)社会課題解決分野」のスキルを身につけていました。そして、本当に苦しかった40代ですが、この時期にキャリアチェンジして「デジタル分野」のスキルを身につけました。

私は決して、30代の頃に、「よし、リスキリングを広めるキャリアを構築しよう」と計画的に仕事をしてきたわけではありません。時間はかかりましたが、結果的に、人材育成分野・社会課題解決分野・デジタル分野という3つの領域の知識・経験・スキルの結晶が、「リスキリング」という、まさに学際的なアプローチが求められるテーマとの出会いにつながりました。

出典:一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ

☆ ☆ ☆

中高年リスキリング これからも必要とされる働き方を手にいれる
(朝日新聞出版)990円

著者・後藤 宗明

<著者>
文・後藤宗明
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。SkyHive Technologies 日本代表。
2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。2022年、AIを利用してスキル可視化を行うリスキリングプラットフォームSkyHive Technologiesの日本代表に就任。石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、リクルートワークス研究所 客員研究員を歴任。いばらきリスキリング戦略アドバイザー。政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書に『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング 」』。
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ

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